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  • DXA(骨密度・体組成測定)で得られる頭部の組成から、MRIで測る脳の体積を推定する/Predicting MRI-derived total brain volume from DXA-derived head composition in middle-aged and older adults: WASEDA'S Health Study

DXA(骨密度・体組成測定)で得られる頭部の組成から、MRIで測る脳の体積を推定する/Predicting MRI-derived total brain volume from DXA-derived head composition in middle-aged and older adults: WASEDA’S Health Study

DXA(骨密度・体組成測定)で得られる頭部の組成から、MRIで測る脳の体積を推定する/Predicting MRI-derived total brain volume from DXA-derived head composition in middle-aged and older adults: WASEDA’S Health Study
Posted
Thu, 30 Jul 2026

概要/Abstract

脳の体積(脳容積)は、加齢に伴う脳の健康状態を映す重要な指標ですが、その測定には脳MRIが必要で、大規模な調査や繰り返しの測定には不向きです。本研究では、健康診断などで広く用いられているDXA(骨密度・体組成測定)から得られる頭部の組成を用いて、MRIで測定した脳容積を推定できるかを検討しました。40歳以上の314名を対象とした結果、頭部の組成から脳容積を実用的な精度で推定できることが示されました。

Total brain volume (TBV) is an important marker of brain health with aging, but its measurement requires resource-intensive MRI. We examined whether DXA-derived head composition can estimate MRI-derived TBV in 314 middle-aged and older adults, and found that it provides a practical approximation with good calibration.

これまでの研究で分かっていたこと/Research Background

MRIで測定される脳容積は、脳の構造的な健康状態を示す指標として広く用いられており、加齢とともに減少することが数多くの研究で示されてきました。脳容積が小さいことは、認知機能の低下とも関連することが報告されています。
しかし、脳MRIの撮影には大きな装置と時間、そして専門的な解析が必要であり、多人数を対象とする大規模な調査や、同じ人を繰り返し測定する調査では実施が難しいという課題がありました。そのため、MRIに代わって脳の大きさを簡便に見積もる方法が求められてきました。これまでは頭囲(頭のまわりの長さ)などの体の外側から測る指標が代わりの目安として使われてきましたが、これらは頭蓋骨の大きさを反映するにとどまり、組織そのものの量を捉えることはできませんでした。
一方、DXA※1は体組成(脂肪や除脂肪組織の量)を測る装置として広く普及しており、被ばく量が少なく短時間で測定できる利点があります。腹部の脂肪量などについては、DXAがMRIの代わりに使えることがすでに検証されていました。しかし、DXAで得られる「頭部の組成」と「MRIで測る脳容積」との関係を、推定(予測)の問題として直接検討した研究はありませんでした。

今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと/Findings

本研究では、WASEDA’S Health Study※2に参加した40歳以上の314名を対象に、全身DXAから頭部の関心領域(ROI)を手動で設定し、そこから得られる「頭部の除脂肪+脂肪量」または「頭部の脂肪量」を用いて、MRIで測定した脳容積(TBV)を推定する予測モデルを作成しました。年齢・性別・BMI(体格指数)も考慮して分析しています。
その結果、頭部の組成が多いほど脳容積が大きいという関係が確認され、年齢・性別・BMIを考慮しても頑健に成り立ちました。作成したモデルは、実測値の約6割の変動を説明でき(決定係数R²=0.62〜0.63)、推定値と実測値のずれも小さく、全体としてよく一致していました。これにより、DXAから脳容積を実用的な精度で推定できることが示されました。ただし、脳容積が特に大きい人・小さい人ではずれがやや大きくなる傾向もみられました。

そのために新しく開発した手法/Methods developed

全身DXA画像に対して、左右の頬骨の内側を結ぶ線を基準に「頭部の関心領域(ROI)」を手動で設定し、その領域の除脂肪量と脂肪量を取り出すという独自の手順を用いました。この設定方法は、2名の測定者が別々に行っても結果がよく一致することを確認しています。
脳容積はMRI(3テスラ)で撮影したT1強調画像から、灰白質と白質の量の合計として算出しました。そのうえで、DXAの頭部組成から脳容積を推定する多変量の回帰モデルを構築し、1,000回のブートストラップ法※3を用いて、モデルが新しいデータでも通用するか(過度に良く見えていないか)を内部的に検証しました。さらに、推定値の偏りをBland–Altman分析※4で評価しました。

研究の波及効果や社会的影響/Research implications to the society

全身DXAは健康診断や体力測定の場で広く行われています。今回の成果は、DXAを撮影した際に、追加の負担なく同じ画像から脳の大きさに関わる指標を見積もれる可能性を示しました。MRIが使えない環境や、多人数・繰り返しの調査においても、脳の健康状態を大まかに把握する手がかりとして活用できると期待されます。
特に、脳の健康と生活習慣・運動・加齢との関係を大規模に調べたい疫学研究において、DXAを脳MRIの実用的な代替手段として使える可能性があり、健康寿命の延伸に向けた研究の裾野を広げることにつながると考えられます。

今後の課題/Future issues

本研究は、早稲田大学の校友を中心とした集団を対象としているため、より幅広い集団にそのまま当てはまるかどうかは今後の検証が必要です。また、大きな神経疾患を持つ方は含まれていないため、患者さんなどへの応用可能性はまだ分かっていません。
さらに、DXAの頭部ROIには脳以外の組織(頭皮や頭蓋骨など)も含まれるため、あくまで「実用的な代替指標」であって、脳を直接測っているわけではない点に注意が必要です。今後は、別の装置や解析ソフト、異なる集団を用いて、今回の推定式が同じように使えるかを外部で検証していく必要があります。

研究者のコメント/Researcher’s Comment

脳の健康を大規模に、そして繰り返し捉えることは、これまで簡単ではありませんでした。本研究は、比較的短時間で体組成を計測できるDXAという検査から、脳の大きさに関わる情報を引き出せる可能性を示したものです。WASEDA’S Health Study の貴重なデータがあってこそ実現できた成果であり、ご協力いただいた校友の皆さまに深く感謝いたします。今後の健康づくり研究に少しでも役立てば幸いです。

用語解説/Terminology

※1 DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)
微弱なX線を用いて、骨密度や体組成(脂肪量・除脂肪量)を測定する装置です。被ばく量が少なく、短時間で全身を測定できるため、健康診断や体力測定などで広く使われています。
※2 WASEDA’S Health Study(ワセダ ヘルス スタディ)
早稲田大学が校友会と連携し、卒業生とその配偶者(40歳以上)を対象に、運動・食生活・体力・健康状態などを長期間にわたり調査している大規模な健康づくり研究プロジェクトです。
※3 ブートストラップ法
手元のデータから繰り返し標本を取り直して分析することで、作成したモデルの信頼性や、新しいデータへの当てはまりの良さを統計的に見積もる手法です。
※4 Bland–Altman分析
2つの測定方法(ここではMRIによる実測値と、DXAによる推定値)の一致度を評価する統計手法で、両者の差の大きさや偏りの傾向を確認します。

論文情報/Journal Information

雑誌名/Journal:BMC Medical Imaging(2026; 26:313)
論文名/Title:Predicting MRI-derived total brain volume from DXA-derived head composition in middle-aged and older adults: WASEDA’S Health Study
執筆者名・所属機関名/Authors and Affiliated Organisation:
Toshiharu Tsutsui, Suguru Torii, Kumpei Tanisawa, Toru Takahashi, Kaori Usui, Nobuhiro Nakamura, Taishi Midorikawa, Kento Nakagawa, Reiji Ohkuma, Hiroaki Kumano, Kaori Ishii, Katsuhiko Suzuki, Shizuo Sakamoto, Mitsuru Higuchi, Koichiro Oka
(早稲田大学 スポーツ科学学術院 ほか)
Publishment Date(Local Time):Published online 06 May 2026(Accepted 2 April 2026)
Publishment Date(Japan Time):2026年5月6日
URL:https://doi.org/10.1186/s12880-026-02341-z
DOI:10.1186/s12880-026-02341-z

研究助成/Research Grant

日本学術振興会 科学研究費助成事業(JSPS科研費)
研究課題名・課題番号/Research Subject:
・JP23K20200 「中高年のこころの習慣と脳のコホート研究-精神的健康の予測と改善を目指して」
(基盤研究(B)、2024–2025年度)
・JP24K02832 「エピジェネティック・ドリフトに対する運動のリジュベネーション効果の検証」
(基盤研究(B)、2024–2027年度)
研究代表者名・所属機関名/Research Representative and Affiliated Organisation:
・JP23K20200:熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院 教授)
・JP24K02832:樋口 満(早稲田大学 スポーツ科学学術院 名誉教授)