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疲れても「止まる力を保つ鍵」: 繰り返される減速動作で低下する減速パフォーマンスと伸張性最大筋力の関係

疲れても「止まる力を保つ鍵」: 繰り返される減速動作で低下する減速パフォーマンスと伸張性最大筋力の関係
Posted
Wed, 27 May 2026

概要

チームスポーツでは相手から逃げる、あるいは追いかける場面にて、素早く止まれる能力が重要です。本研究では、減速動作を繰り返し行うことで減速パフォーマンスが低下しましたが、筋肉が引き伸ばされながら収縮する伸張性収縮※1の最大筋力が高いほど、その低下が抑えられることが明らかになりました。

これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

サッカーやバスケットボールなどのチームスポーツでは、相手から逃げる・追うために、ダッシュだけでなく「減速して止まる」「減速して方向を変える」能力が重要です。一方で、試合の終盤には減速能力が低下しやすいことが知られています。減速動作では、筋肉が伸ばされながら力を発揮する伸張性収縮※1が繰り返し起こるため、疲労や筋損傷の蓄積がパフォーマンス低下に関わる可能性が指摘されています。しかし、疲労下で減速動作がどの局面でどのように変化するのか、また個人の筋力がその変化にどう関係するのかは十分に整理されていませんでした。

今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

本研究では、「走ってから素早く止まる」という動作を50回繰り返したときに、減速のパフォーマンスがどのように変化するのかを調べました。分析では、減速局面を前半と後半に分けて評価しました。その結果、繰り返される減速課題の後では、最高速度から半分の速度まで減速するまでの時間が長くなり、単位時間あたりにどれだけ速度を低下させることが出来ているかを表す指標も減速局面前半においてのみ低下することが分かりました。つまり、疲労が蓄積すると、減速動作の最初のブレーキが遅くなり、弱くなることが示されました。

さらに、筋肉が伸ばされながら力を発揮する伸張性収縮※1の最大筋力が高いアスリートほど、この減速パフォーマンスの低下が小さいことが明らかになりました。一方で、筋肉が縮みながら力を発揮する短縮性収縮※2の最大筋力と減速パフォーマンスの低下との間には、明確な関係はみられませんでした。

また、減速課題の前後にはジャンプ能力の測定も行いました。その結果、スクワットジャンプ※3中の推進パワーの変化量と、減速動作前半のパフォーマンスの変化量の間に有意な関連がみられました。この結果は、伸張性筋力が高いアスリートほど、筋機能の低下を抑え、減速動作のパフォーマンス低下を小さくできる可能性を示しています。

そのために新しく開発した手法

本研究の特徴は、減速局面を「前半/後半」に分けて、疲労による低下がどこで起きるかをより細かく見た点です。具体的には、10m走の後に最大努力で減速する課題を50回繰り返し、速度がピークに達した直後から停止するまでを減速局面としました。そのうち、速度がピークの50%になるまでを前半(Early)、それ以降を後半(Late)として、減速パフォーマンスを表す指標を局面ごとに算出しました。また、筋力については、スクワットを「上げる局面」と「降ろす局面」に分け、降ろす局面のみに絞った最大筋力、すなわち伸張性最大筋力を評価しました。

 

研究の波及効果や社会的影響

本研究は、疲労下での「止まる力」を保つために、伸張性最大筋力が重要であることを示唆します。減速の前半でのブレーキ低下は、方向転換の質の低下や、後半局面への負担増加につながる可能性があります。したがって、競技力向上だけでなく、傷害予防の観点からも、降ろす局面を重視した筋力トレーニング(例:伸張性局面を重視したスクワットなど)を活用しながら、伸張性最大筋力を高めることの重要性が示唆されます。

今後の課題

本研究は相関関係を示した研究であり、伸張性最大筋力を高めることで減速パフォーマンスを維持する能力が必ず向上するかどうかは、介入研究で検証する必要があります。また対象は男性の大学生アスリートであり、女性や他の年代・競技レベルでも同様かは今後の課題です。さらに、本研究では筋損傷(例:血液指標など)を直接測定していないため、疲労低下のメカニズムをより明確にする追加研究が必要です。

研究者のコメント

『走る』動作に比べて目立ちにくい『減速』動作ですが、勝敗や安全性に直結する重要な能力であり、試合を通してその能力を維持できることも重要です。本研究では、繰り返される減速動作の中で特に低下するのが「前半のブレーキ」であること、そしてそれを支える重要な要因が伸張性最大筋力であることを示しました。これらの知見は、特にチームスポーツの現場におけるトレーニング設計に対して、新たな科学的根拠を提供するものだと考えています。

用語解説

※1 伸張性収縮
筋肉が引き伸ばされながら収縮する収縮様式。減速動作や着地動作において重要になる。

※2 短縮性収縮
筋肉が短くなりながら力を発揮する収縮様式。ジャンプや加速動作など、身体を前方や上方へ動かす動作において重要となる。

※3 スクワットジャンプ
しゃがんだ姿勢から反動動作を用いずに垂直方向へ跳び上がるジャンプ動作。主に下肢筋群の短縮性収縮による瞬発的な力発揮能力を評価するために用いられる。

論文情報

雑誌名:International Journal of Sports Physiology and Performance

論文名:Higher eccentric strength mitigates deceleration performance decline during repeated deceleration tasks

執筆者名・所属機関名:
Kaito Nakata1, Aaron Uthoff2, and Kuniaki Hirayama2,3

1 Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, Saitama, Japan

2 Sports Performance Research Institute New Zealand, Auckland University of Technology, Auckland, New Zealand

3 Faculty of Sport Sciences, Waseda University, Saitama, Japan

Publishment Date(Local Time):To be announced (TBD)

Publishment Date(Japan Time):To be announced (TBD)

(オンライン掲載の場合/For online publication)

URLTo be announced (TBD)

DOI10.1123/ijspp.2025-0242

研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)

研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)(JP21K11427)

研究課題名:スプリント走の局面に応じたトレーニング方法の構築

研究代表者名・所属機関名:平山 邦明・早稲田大学スポーツ科学学術院

 

平山 邦明
研究者詳細 – 平山 邦明