Mathematics and Physics Unit “Multiscale Analysis, Modelling and Simulation”, Top Global University Project早稲田大学 数物系科学拠点

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留学レポート:ピサ大学(イタリア)

物理学及応用物理学専攻 博士課程の草場竜之介さんが、2024年4月から2024年6月まで、Cotutelleプログラムの一環でピサ大学に留学しました。Vladimir Georgiev教授の指導の下で消散型波動方程式やそれに関連する熱方程式の研究に取り組みました。

1. 滞在場所

イタリア・ピサ、ピサ大学

2. 滞在期間

2024年4月から2024年6月

3. 主なホスト教授

Vladimir Georgiev教授 (ピサ大学).

4. 研究活動・学習成果について

 私は修士課程在籍時から消散型波動方程式に興味があり、関連する問題の研究に取り組んできました。消散型波動方程式は全く異なる性質を持つ双曲型方程式(波動方程式)と放物型方程式(熱方程式)の中間的な性質を持つことが知られており、消散型波動方程式の解析はこれら相異なる二種類の方程式の間に潜む階層構造の解明に繋がると期待されています。受入教員のGeorgiev教授は波動方程式やシュレディンガー方程式の研究で世界を牽引する数学者の一人であり、近年は消散型波動方程式に関する研究も行っています。
 さて、単独の非線形消散型波動方程式に対する解の挙動は、初期値や非線形項の符号に応じて大きく変化することが知られています。このような現象は他の単独方程式にも見ることができ、解の性質を詳細に解析した先行研究が数多く存在します。同様の現象は単独方程式の一般化・精密化である連立系にも起きると期待できますが、単独方程式と比較して先行研究は殆どありません。今回の滞在では、消散型波動方程式の連立系に応用するための準備として、初期値と非線形項の符号が熱方程式の連立系に対する解の挙動に与える影響の解明を目指す共同研究をGeorgiev教授と開始しました。まだ具体的な成果を得ることはできていませんが、研究の基礎となる知識の整理、命題の証明を行いました。
 上記の共同研究とは別に、移流拡散方程式に対する時間大域解の漸近展開に関する研究を行いました。移流拡散方程式は流体の運動を記述する数理モデルの一つであり、その解の挙動は空間次元と非線形項の冪の指数に依存して大きく変化することが知られています。この研究では、解の減衰度に注目した積分区間の分割による直接評価と漸近形の構造に注目した詳細な解析によって、先行研究の結果を改良することに成功しました。得られた結果は論文としてまとめ、現在査読付きの国際学術誌に投稿中です。
 R. Kusaba, Higher order asymptotic expansions for the convection-diffusion equation in the Fujita-subcritical case, submitted.
小澤教授やGeorgiev教授には論文の添削をしていただき、頂いたコメントを基に論文を推敲しました。また、6月12日から6月13日の期間にブルガリアのソフィア工科大学で開催された「Workshop on Math Physics Equations」で研究発表する機会を頂き、本研究で得られた成果を発表しました。
 R. Kusaba, Asymptotic expansions of global solutions to the convection-diffusion equation: Fujita-subcritical case, Workshop on Math Physics Equations, Technical University of Sofia, June 13, 2024.
このような貴重な機会を与えてくださったGeorgiev先生を始めとする主催者の先生方に改めてお礼申し上げます。

ピサ大学数学科

5. 海外での経験について

 イタリアのピサは比較的小さな街で、歴史あふれる街並みでした。宿泊先からピサ大学への通学路にはピサの斜塔があり、その周りはいつも観光客で賑わっていました。ピサの街を囲む城壁の外側には大型の食料品店があり、また観光地であるためか英語でやり取りできるお店も多く、何一つ不自由なく生活できる環境でした。食料品店には、トスカーナ州名産のキャンティ・ワインを始めとする数多くの種類のワインが売られていました。食事は主にピザやパスタを食べていましたが、どれもおいしかったです。

城壁の上から見たピサのドゥオモ広場

6. 今後の進路等への影響、今後の目標等

 今後もGeorgiev教授との共同研究や解の長時間的漸近挙動に関する研究を継続し、消散型波動方程式の解析を通じた双曲型方程式と放物型方程式の間に潜む階層構造の解明に努めてまいります。特に、今年の9月末から来年の3月中旬まで再びピサ大学に留学するので、その期間中にも具体的な研究成果が得られるように精進します。また、より多くの研究者と交流し、自身の研究に関する知識の幅と視野を広げていきたいです。

7. 最後に

 Cotutelleプログラムに参加し、イタリアのピサ大学に留学する機会を与えてくださった小澤教授とGeorgiev教授に深くお礼申し上げます。特に、Georgiev教授には研究のことだけでなく、滞在中の事務手続きなど様々な点で懇切丁寧に手助けしていただきました。重ねて感謝申し上げます。また、渡航の旅費援助をしていただいた早稲田大学SGU数物系科学拠点や、渡航準備の際に手厚くサポートをしてくださった事務員の石崎由香利様や皆川陽子様にお礼申し上げます。

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