Research Institute for Letters, Arts and Sciences早稲田大学 総合人文科学研究センター

News

国際シンポジウム「東アジアの文学研究を問う —中国文学研究の再検討と再構築—」(2017/7/21)開催のお知らせ

国際シンポジウム

「東アジアの文学研究を問う

—中国文学研究の再検討と再構築—」

 

プログラム

13:00開会
13:00-13:30開会の挨拶・趣旨説明(千野拓政)
13:30-14:30王暁明さん講演
     「分かれ道にある文学」(歧路口的文学)
14:30-14:45ティーブレイク
14:45-15:45 王宏志さん講演
     「いかにして文学を「論じる」か?———翻訳研究の文化的転換から——」
     (如何“評論”文學?————從翻譯研究的文化轉向談起)
15:45-16:45王風さん講演
     「エクリチュール・近代テクスト・新文学」(书写形式 • 现代文本 • 新文学)
16:45-17:00ティーブレイク
17:00-18:40パネルディスカッション(司会:千野拓政)
(すべての発言について、全員に対して中国語・日本語間の通訳を行う)
18:40-18:45閉幕の辞(千野拓政)

 

講演者紹介

王暁明氏:1955年生まれ。上海大学文化研究系教授。文化研究の第一人者。
近作に《1990年代以来上海市青年的“居家生活” 》がある。
王宏志氏:1956年生まれ。香港中文大学翻訳系教授。翻訳研究の第一人者。
左聯研究、魯迅研究、香港研究でも有名。
王 風氏:1966年生まれ。北京大駐文系学教授。近代文学研究の第一人者。琴学研究でも有名。

 

要旨

19世紀に近代市民社会が生まれて以来、「文学」は神聖な使命を担うようになった。「真善美」を表現し、読者に「真実感」を提供し、人々を「啓蒙」することを通じて、文学はこの百年以上、変わることなく大きな役割を果たし続けてきた。そして翻訳を通じて、わたしたちは世界の文学を享受し、文学の働きも世界を覆うものとなった。

しかし、20世紀末以来、わたしたちはその文学の働きの後退に直面している。とりわけ21世紀以降のニューメディアの登場と普及、それにともなうサブカルチャーの流行、文学の領域の多様化、そして世界や社会の激動、若者の価値観や社会との関わりの変化などによって、文学は大きな曲がり角に直面していると言ってよいだろう。

例えば、ニューメディアの発達と広がりによって、ネット文学・ケータイ文学・ゲームなど紙媒体によらない作品が次々に出現している。サブカルチャーの流行は,テクストの読み方の変化をもたらしている。少なからぬ若い読者が、ストーリーや、作家の思想や、文体のみならず、キャラクターを中心に鑑賞するようになるとともに、同人活動に参加して、作品を鑑賞すると同時に、二次創作・コスプレ・弾幕・アフレコなどを通じて自らも創作し、表現する若者も数多く現れている。しかも、それは一つの国や社会だけでなく、国境を越えて世界に広がる共通の現象となっている。

こうした変化は、読者が文学に求めるものが変化していることを物語っている。これまでの読者が作品を通じて人間・社会・歴史の真実に触れることを期待してきたとすれば、現在の読者は作品を通じた仲間とのコミュニケーションを重視する。村上春樹の世界的な流行も、読者が文学に求めるものの変化と無関係ではない。東アジアの村上春樹の愛読者の多くは、作品から「真実」をくみ取ることより、作品に描かれた「孤独感」や「虚無感」に共鳴し、作品から「癒やし」や「救い」を感じるのだと語っている。読者たちは確実に変化しつつあるのだ。その変化に無意識のうちに適合したことが、村上春樹の世界的な流行を支えているのかもしれない。

こうした転換の背後には、世界の激変と、それにともなう若者の価値観・世界観・人生観の変化が横たわっている。彼らが自分や世界の未来に抱いている不安や絶望は期待や希望を凌駕し、彼らが感じる世界との乖離はますます大きくなっているように見受けられる。イギリスのEU離脱、トランプ大統領の当選、世界各地で起こる自爆などのテロ事件、イスラム国の台頭、移民・難民の排斥やヘイトスピーチの流行……。そうした事件が先に見た若者の不安をより強固にしている。

文学が表現してきた「真善美」、文学が開示してきた世界の姿、文学が本来もっていた「啓蒙」作用は、現在の読者にとって、その働きが失われつつあるのかもしれない。そのような時代に、文学はどこに向かい、何をなし得るのだろう。そして、文学研究はいかにすれば可能であり得るのだろう。長年、中国で文学研究に携わってきた第一人者をお招きし、講演と討論を通じて東アジアにおける文学研究の再構築の可能性を探ってみたい。

 

お問い合わせ先

早稻田大学文学学術院・千野拓政研究室

03-5286-3597 [email protected]

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/flas/rilas/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる