Graduate School of Human Sciences早稲田大学 大学院人間科学研究科

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研究科について

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研究科長挨拶

多様さを活かす人間科学研究の環境を

早稲田大学大学院人間科学研究科長 巖淵 守

人間科学研究科は、学生と教員他の構成員はもとより、全ての関係者が存分に研究に打ち込める機会に溢れた環境を提供することを目指しています。「人間科学」という共通のテーマの下、私達が向き合う課題は多様です。それぞれが取り組む専門分野によって、同じ状況を前にしても、見える景色は異なり得ます。多くの人に注目される内容ばかりに集中するのではなく、まだ誰も注意を向けていない課題に気づき、科学的アプローチとともにそうした課題に真摯に向き合うことによってのみ開かれる新たな景色があると考えます。

人間を理解するには様々な視点が必要となります。本研究科に設けられた研究領域の1つである保健福祉を例にとれば、そこでのサービスを受ける人をどのように支援者が捉えるかの視点には、観察者、対話者、共感者という複数の視点が必要と言われます。同じ場にあってもそれらの視点が捉える景色は異なりますし、いずれも大切な視点です。さらに、こうした複数の視点を持ってそれぞれの人を理解するといっても、その理解にも様々な階層があることを、人間科学は教えてくれます。

近年、生成AIをはじめとする技術が大きく進歩しています。人の脳を模したAIのニューラルネットワークモデルは、未だ場面は限られるとはいえ、人間の能力をはるかに凌ぐ性能を私達に示してくれます。

一方で、生理学的には全く問題の無い神経網があっても、経験を通して学ぶ機会が与えられなければ、周りの世界を知覚できないことを示した研究結果がよく知られています。このことから、膨大な計算量をこなすAIのニューラルネットワークモデルを用意しても、同様に、私達の世界を広範に理解することは難しいことが予想されます。

変化に富む現代社会において、また、そこで多様な暮らしを営む人々の理解は容易ではなく、またそうした社会における問題の解決はますます困難になってきているようにも感じられますが、これら人間に関わる問題解決に向けた取り組みの中心にいる存在も、やはりまた人であるべきではないかと思います。

AIの研究への応用が大いに期待される一方で、その回答からは、結果の「正しさ」や「良さ」の捉え方が規格化されてしまうことへの懸念も覚えます。人間科学が議論する必ずしも1つに絞られるばかりではないそれぞれの「正しさ」や「良さ」も互いに認めあえる環境が、豊かさを育む一助となると考えます。効率化を優先してものごとを過度に単純化してしまえば、まだ誰にも気づかれておらず、AIのモデルには含まれていない世界の新たな一面を垣間見る挑戦の機会を逸してしまうことにもなりかねません。

人が自ら取り組み続けることでしか得られない景色を、それぞれの分野で目指すことを大切にしながら、研究活動を応援できれば、特に学生の皆さん対しては、誰もが自身の意思で選択し、議論を行い、豊かな経験を得ることができる環境を用意して迎えられればと願っています。

(2024年12月25日)

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