研究代表者
店田 廣文
TANADA Hirofumi
人間科学部教授
本プロジェクトの概要と目的
本研究はバイオデータであるテストステロン及びコルチゾールと地域中高齢者のQOL、健康及び生活習慣との関係性を明らかにすることを目的とする。
従来の社会科学領域からの地域調査では、対象者の主観的満足感や主観的健康感及び生活実態を訊ねることにより、対象者のQOLを測定し生活構造の理論化を重ねてきた。本プロジェクト研究代表者(店田廣文)は人総研「高齢者の生活の質」プロジェクト・コアメンバーとして社会学的視点から実証研究を進めてきている。
一方で医学・生物学的分野においては、男性ホルモンであるテストステロンは筋肉増大、体毛の発育促進、性欲や精子の形成などの性ホルモンとしての身体機能への作用だけではなく、認知機能や精神活動に影響を与えていることが知られており、抑うつ尺度等を含めたアンケート調査を併用した研究調査が行われてきた。
しかしながら、社会生活の中にテストステロンを位置づけ、QOLや生活状況との関連を総合的に検討しているものは少ない。最近の欧米における社会学者グループが実施する大規模調査ではバイオデータが含められることもあるが、現在では血圧、血糖値等の初歩的データにとどまっている。
本研究では、これをさらに進めて本研究代表者がこれまで取り纏めてきた「高齢者の生活の質」プロジェクトの成果を照合しつつ、テストステロンと中高齢者の社会生活の相互作用を実証的に検討する。
最近の研究では、テストステロンは健康長寿、行動心理、QOLとの相関が解明されつつあり、また女性においても重要な働きを持つことが明らかとなっている。本研究計画で組織されている研究グループではテストステロンと社会生活に関するパイロット研究のデータを有しており、テストステロンとQOL、社会生活との関係について有効的かつ効率的な研究調査が可能である。本研究では唾液によりテストステロン及びコルチゾールの抽出を行い、対象者の負担はほとんどない。コルチゾールはテストステロンと関係が深く、ストレス等によりテストステロンが減少するとともにコルチゾールが分泌されることが知られている。
現在日本で実施されている、社会科学領域での中高齢者を対象とした大規模パネル調査(縦断研究)等においても、バイオデータの導入が検討されつつあり、本研究は同分野に基礎的データを提供するとともに、先駆的研究としての意義があると考える。
研究構成員
- 店田 廣文(早稲田大学人間科学学術院教授)
- 小島 宏(早稲田大学社会科学総合学術院教授)
- 堀江 重郎(帝京大学医学部教授)
- 村田 久(早稲田大学人間科学学術院客員講師)
- 鶴若 麻理(聖路加看護大学助教)
- 石川 基樹(早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員)
- 岡井 宏文(早稲田大学多民族他世代社会研究所招聘研究員)
プロジェクト期間
2010年4月~2013年3月