研究代表者
内田 直
UCHIDA Sunao
スポーツ科学部教授
本プロジェクトの概要と目的
スポーツを行うことは身体能力や健康の増進だけでなく、心理社会面においても様々な利点があり、生涯スポーツが推奨されている。しかしながら、スポーツ技能を修得する能力=スポーツスキルの獲得能力には発達や老化に伴って各年代によって大きな違いがある。そこで各年代の対象者に対して同じトレーニングプログラムを適応することは効果的とはいえず、身体的あるいは心理的な問題を生ずる可能性すらある。本研究では、脳科学的な観点から各年代におけるスポーツスキル獲得(学習)に用いられる脳機能を医学、心理学、工学と多方面から明らかにする。さらにその結果を踏まえて各年代(=ライフステージ別)の効果的なトレーニング法を考案ことで、各年代の人間がスポーツを通じて交流し、新たな共生システムを創出することに貢献することを最終的な目的とする。
スポーツトレーニングの研究はこれまで経験論的、且つ主に身体的な視点からおこなわれてきた。一方で、身体の活動のコントロール、特にスポーツスキルの獲得(学習)には脳の機能的な変化が重要な要因である。また脳機能と身体機能(体格、筋力など)は必ずしも並行して発達、老化をするものではない.そこでスポーツトレーニングを考える上でも、その特質を把握することは不可欠であると考えられる。しかし、脳科学の方面からのトレーニング法へのアプローチは過去には殆ど例が無い。たとえば、ある同一のスポーツスキル習得に用いられる脳の解剖学的部位が年齢によって異なるという結果が得られれば、それにあわせたトレーニング法が必要になる。本研究の成果はこれまでの身体的観点からのトレーニング理論と相補的に働き、各年代にふさわしいより効果的なトレーニングについての科学的な裏づけを与えるものと期待される。
スポーツ科学に脳科学を導入する試みは、まだ始まったばかりであり、また本研究のように医学、心理学、工学的な面から研究を行い、応用までを視野に入れた学際的なアプローチは初めての試みであり、多くの成果が得られるよう努力したい。
プロジェクトのサブテーマ
- 基礎的な運動制御の解析
- 筋力トレーニング時の脳活動の測定。
- スポーツに用いられる視聴覚情報の選択とそのモデル化。
- 運動学習過程の解析
- 運動学習による脳のエラー検出機構の変化についての測定方法の確立。
- 手足の協調運動学習の筋電図による評価方法の確立。
- 競技スポーツにおけるスキル学習の解析
- スポーツゲーム遂行に伴う快不快とその脳波周波数成分の変化について測定を確立。
- スポーツ場面視覚刺激による脳の活性化部位をfMRIを用いて検出。
プロジェクト期間
2004年4月~2007年3月