研究代表者
村上 公子
MURAKAMI Kimiko
人間科学部教授
本プロジェクトの概要と目的
「危機の時代」、「…の危機」、「危機管理」などなど、「危機」という言葉は人間を脅かす、あるおどろおどろしいもの、という雰囲気を伴って、しかし、実に頻繁に用いられている。
我々は一体、何を指して「危機」と呼ぶのであろうか。そして「危機」に対して我々はどのように対処し、反応するのであろうか。言うまでもなく「危機」といっても様々な場面で用いられる可能性があり、簡単にまとめることは難しい。
しかし、逆から見れば、生きている人間はすなわち、社会の、あるいは世界、地球に身を置く存在として、その様々な側面、諸相における「危機」を(場合によっては同時に)体験し、生きるのである。レヴェルが違い、性質が異なるとはいえ、それを人間が「危機」と名付けているからには、そこには何かしら共通の要因があると考えられる。

本プロジェクトでは「危機と人間」をテーマに据え、研究員各々の専門研究分野において問題となる「危機」と、それに対する人間の反応や行動を改めて考察するところから始め、重層的、多層的な人間にとっての「危機」と、その「危機」が人間にいかなる意味を持つかを探りたい。
具体的には、マクロな社会学的立場、具体的かつ広範な社会学的フィールド調査に則った立場、考古学的な実証的調査研究による立場、発達心理学的研究の立場、そして、かなり限定的な歴史的事例研究からの立場がまず提供されることになる。
これら、各研究員の専門領域からの報告をすりあわせ、加えて、それ以外の領域の研究者からの発言もいただくことを考えている。それにより、「危機」概念がどのように用いられているかが明確になり、多少とも、多層的、多重的有機的存在である人間にとっての「危機」とは何か、そして人間は「危機」にどのように反応するのかが少しでも明らかになれば、人間科学という研究領域における研究として、全く意味のないことでもあるまいと考えるからである。
プロジェクト期間
2004年4月~2007年3月