本学では、新記念会堂(仮称)の建設工事のため合同卒業式ができない約3年間、卒業式において総長、校友会代表幹事および来賓の祝辞をお贈りすることが難しくなることから、2016年3月16日に岩波書店から発行された『大隈重信演説談話集』を全卒業生に配付することとしました。
建学者・大隈重信の政治・外交・教育の理念や世界に対する見識を大隈の演説・談話から学び、今後の社会人としての活躍に役立てていただきたいと考えています。なおこの取り組みは、早稲田大学校友会の全面的な協力により実現されました。
人生を語る・学問を語る
大隈ほど青年に期待を寄せ、青年に対して語りかけた政治家はいない。『青年訓話』(丸山舎書籍部、一九一一年)の編者菊池暁汀は、大隈伯はいかなる青年とも快く会って論議し、一たび青年問題に関して口を開けば、談論風発、その所論は実に的確であり、天下の青年は挙って耳目を欹て、これを傾聴する、と書いている。「一 青年に寄せて──生き方の指針」には、大隈が自らの生き方ともかかわらせながら、青年たちに何を語ったかを取り上げた。その際、「青年」という語で大隈の念頭にあったのは男性である。これに対し「二 女性へのメッセージ」では、女性のあり方について大隈が何を語ったのかを取り上げた。大隈の女性に対する期待や、女性の能力と力を重視する社会に関するプランをうかがい知ることができる。(14-15頁、人生を語る・学問を語るより抜粋)
愈々敗るれば益々奮闘努力を続行する
我輩は何時でも、人にできないようなことを自分で一つ遣ってみたいという希望を持っている。そのために今日までにも大分失敗したこともあるけれども、失敗したからとて断じて事を廃する様な意気地のない振舞をしたことはない。何時でもいよいよ失敗すればいよいよ奮闘努力を続行する。而してこういう場合に更に新しい元気を得るには、どうかして我輩の一生を最も有益に送りたいという希望のあるためである。(26-27頁、青年の元気で奮闘する我輩の一日より抜粋)
この世界は諸君青年達の世界である
健全なる精神をもち、健康なる体軀を有する青年であって、それで成功が出来ないということがあるものか。世の中には往々泣き言を述べる青年達がある。彼等はちょうど誰かがその前途を圧えているために自分が成功出来ないように言っているが、それは誤った考えである。ことさらに敵意でも持っていない限りどこに他人の成功を妨げるものがあろう。この世界は決してある少数の人の世界ではないのである。即ちお互いそれ自身の世界である。しかも今日既に成功している人々よりは、むしろこれから為すところあらんとしつつある諸君青年達の世界ではないか。(28-29頁、青年の天下より抜粋)
婦人に対する実業思想の必要
この時に当って日本婦人は、いやしくも自分の品性を軽んじてはならない。何所までも自分は日本婦人であるという自重心を持っていてもらいたい。この精神があって初めて今日の時勢に伴う十分なる実業的思想を発達させて知識を増進し、然して我が邦婦人の特色を発揮させて行く事が出来る。(78-79頁、婦人に対する実業思想の急務より抜粋)
卒業生に配付する『大隈重信演説談話集』は、装丁を卒業記念用に改めており、ご卒業の記念として長くお手元にとどめていただけるものと考えています。また、同書は現在一般書店にて取り扱いをしています。ご興味のある方は、是非書店にてお求めください。