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社会的営みの中に成長がある

カナダの大学院に留学していた頃、私は毎日のように研究室にこもり、研究に没頭していた。そんな私の下へ、よく顔を出してくれる日本人大学院生Aさんがいた。Aさんは言語学を専攻し、英語やフランス語、ドイツ語、ロシア語など複数の言語を自在に操る人物で、留学先の大学では日本語を教えていた。

Aさんは「毎日数人と対話することを心掛けている」と話していた。私たちは世間話だけでなく、言語学や言語習得について語り合った。その対話は、一人で論文や専門書を読んでいるだけでは得られない気付きをもたらし、研究の新たな発想や視点を与えてくれた。実際、私の博士論文のテーマも、Aさんとの対話を重ねる中で少しずつ形になっていった。

その後、日本の大学で教員として働く中で、心理学者ヴィゴツキーの「社会文化理論」に出合った。この理論は、人間の発達は他者との相互作用や文化的活動を通して促されると考えるものである。振り返ると、カナダでのAさんとの対話を通した学びは、まさにこの理論を実感させる経験だった。大学生活や社会生活では、一人では解決できない課題に直面することも少なくないが、人との対話や協働の中で、新たな理解や成長の機会が生まれる。

私は現在、第2外国語を担当しているが、授業では「いかに私が話しすぎないか」を常に意識している。教室もまた一つの社会である。学生同士が関わり合い、支え合いながら未知の言語に挑戦する中で、一人では到達できない学びと成長を経験してほしいと願っている。

(M)

第1192回

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