Waseda Weekly早稲田ウィークリー

海外文学初めての一冊

2021年10月1日、小説家で翻訳家の村上春樹さん(1975年第一文学部卒)から寄贈・寄託された資料やレコードなどを収蔵し、国際文学、翻訳文学に関する世界の交流拠点となることを目指す早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)(以下、国際文学館)がオープンしました。これを記念して『早稲田ウィークリー』では、早大生の皆さんから「海外文学 初めての一冊」として、おすすめの作品を募集。たくさんの投稿が集まりました。ご応募いただいた皆さん、ありがとうございました。

今回は集まった現役早大生のレビューに加えて、早稲田出身の著名な方々の特別寄稿も紹介。さらに国際文学館の顧問を務めるロバート キャンベル先生(早稲田大学特命教授)のインタビューと併せて、海外文学の魅力をたっぷりお楽しみください。

気の向くままに旅ができる 海外文学の楽しみ方

早稲田大学特命教授 ロバート キャンベル

国際文学館顧問を務めるロバート キャンベル先生は、米国出身の日本文学研究者であり、異国の文学に人生を捧げている一人です。自身の文学体験や原文と訳文の違いなど、海外文学の楽しみ方について、存分に語っていただきました。

“カッコつけ”の海外文学が、不要な時代になった

海外文学というと、どうしても“難しい”という印象を抱いてしまう人もいるかもしれません。なぜでしょうか?

それはおそらく、少し前の時代まで、「海外文学を読むことがカッコいい」という風潮があったからでしょう。そのステータスのために読み始めた人は良かったものの、そうでない人には「ハードルが高い」という意識が根付いてしまい、それが広がっていった。

しかし現在は、カルチャーを自由に楽しめる時代になったと思います。若い世代は、インターネットで情報を見つけながら、時代やジャンルに関係なく、好きなものを摂取していてすごいと思います。海外文学も他のカルチャーと同じで、古典でも現代文学でも、自分が面白いと思ったものが“いい作品”なんです。なので、無理やり原文で読んだりしようとせず、まずは訳文で気軽に触れてみてください。そして、もし気に入った作品や作家がいたら、どんどん追求し、頭の中で想像を膨らませていく。するといつの間にか楽しめるようになっているでしょう。もしかしたら、あなたの人生を変えてしまう一冊に出会えるかもしれませんよ。

お小遣いで買った海外文学から、研究者になるまで

ロバート キャンベル先生は、どのように海外文学にのめり込んでいったのでしょうか?

私が海外文学と出会ったのは、14歳のときにフランスへ旅をしたときのこと。お小遣いでフランス語の小説を購入し、フローベールやバルザックの壮大な物語に没頭していました。高校に入ってからは一転して、カミュやサルトルなどを読みあさり、個人の心理をミニマムな視点で捉え、「自分と世の中の不条理をどのように埋めるのか」を考えることにはまります。

現在専門にしている日本文学に出会ったのは、大学で日本美術を学んだときでした。絵画への理解を深めるために、日本語を学び始め、そこから日本文学の魅力に引き寄せられていったんです。日本に初めて留学した頃、三島由紀夫に熱中していたのですが、真夏に喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら、『禁色』の文庫本を読みふけったことがありました。東京の喫茶店は何時間いても、店主が冷たい眼差しを向けないことに大驚き。アイスコーヒーの水滴を拭きながら、時間を忘れて読書をした、幸せな体験だったことを覚えています。そんなこんなで、気が向くままに文学作品を読み続け、もはや私にとって日本文学は “海外文学”ではなくなっています。

“翻訳大国”日本は、海外文学を楽しむ最高の環境

海外文学の初心者は、どのようなところから楽しめばいいのでしょうか?

最初は訳文で楽しむといいでしょう。私は翻訳の仕事もするので分かりますが、日本には優れた翻訳者が多く、レベルが高いので、それを味わわないのはもったいない。先人が苦労をして翻訳したものをわざわざ遠のけるのは、火や車を自分で発明しようとするのと同じことです。私も言語を習得していないアジアや中南米の国々の文学は訳文で読みますし、日本文学をあえて英訳で読んだりもします。翻訳にはいろいろな文化や工程、翻訳者の事情のようなものがたくさん詰まっていて、それを楽しむこともできるんです。翻訳自体を原作とは独立した作品として楽しむことができれば、読書体験がもっと魅力的になります。

登場人物と同期し、言葉を盗む楽しさ

原文で海外文学に触れることの楽しさも教えてください。

原文の場合は、作品の源泉に近いところで水をくむような魅力があるので、第二外国語など、自分が勉強している言語の文学作品を読むのもいいでしょう。私はフランス語と日本語が読めるのですが、原文で読むときは、辞書を引きながらじっくりと読み進めるのが好き。仏英辞典ではなく仏仏辞典を使って微妙なニュアンスを調べたり、類語辞典で他の言い回しを調べてみたりもします。そして、学んだ意味やニュアンス、面白い表現を、頁の余白に書き込んだり、線を引いたりして、“すてきな言葉”の語彙ごい集を作るんです。つまり、いろいろな人の声を盗むんですね。すると自分が使う言葉も豊かになっていきます。

私にとっての文学の一番の楽しみは、作中の人物とシンクロするような感覚に陥るのを体験すること。本を閉じた後に、その人物の言い方や感性が、しばらく心の中で鳴り響いているんです。それを散歩や料理をしながら、思い返したり解釈したりする。こんなぜいたくな時間は、他にありません。ぜひ皆さんも、そんな魅力ある作品に出会ってください。

デイヴィッド・コパフィールド
写真は中野 好夫 訳
新潮社 新潮文庫(全4巻)

ロバート キャンベル先生おすすめの
「海外文学 初めての一冊」

デイヴィッド・コパフィールド
チャールズ・ディケンズ 著

子どもにも親しまれているディケンズの代表作

生まれる前に父を失った主人公・デイヴィッドは、母の再婚相手である継父による厳しい教育と過酷な労働環境で育ちます。苦しい生活から逃げ出すために、デイヴィッドは大伯母のもとへと旅に出ることに。その後も幾度も苦難に見舞われながら、徐々に成長していく物語です。搾取に近い児童労働の描写は、子どもの私には恐怖でしかありませんでした。しかし一方で、アドベンチャー要素が多く含まれていて、ワクワクしながら読めるんです。ラストに向かって因果応報の世界が展開されていく、魅力的な長編小説になっています。

『デイヴィッド・コパフィールド』は、作者・ディケンズの自叙伝的な要素が大きい作品。一人称で、幼少期からの記憶をつづっていくように描かれています。アイルランド移民にルーツを持つ家系、優しくしてくれた親戚、各地を転々と旅した幼少期の体験など、私の人生と重なる部分もあり、さまざまなタイプの大人がいる世界観に、共感したのを覚えています。ディケンズは日本でいうと芥川龍之介のように、子どもでも親しみやすい作家。とても分かりやすいので、海外文学の初心者にもおすすめです。

ロバート キャンベルRobert Campbell

日本文学研究者。早稲田大学特命教授。早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)顧問。国文学研究資料館前館長。近世・近代日本文学が専門で、特に19世紀(江戸後期~明治前半)の漢文学、それにつながる文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せる。テレビでMCやニュース・コメンテーターなどを務める一方、新聞雑誌連載、書評、ラジオ番組企画・出演など、さまざまなメディアで活躍。主な編著作に『日本古典と感染症』(編)(角川ソフィア文庫)、『井上陽水英訳詩集』(講談社)、『東京百年物語』(岩波文庫)。

早稲田出身の方々おすすめの「海外文学 初めての一冊」

この企画に賛同していただいた、早稲田出身の著名な方々からの特別寄稿を紹介します。いずれも「普段は文学になじみのない学生の皆さんにこそ、ぜひ!」という名作ばかり。思わず読みたくなってしまう、珠玉のレビューをお楽しみください。

フィフティ・ピープル
提供:新潮社

朝井 リョウ(作家)

フィフティ・ピープル
チョン・セラン 著 斎藤 真理子 訳 亜紀書房

読みやすさと海外文学ならではの味わい

私は主に二つの理由から海外文学が苦手でした。一つは翻訳された文章がしっくりこないこと、もう一つは自分から遠すぎる話に感じられ、いまいち食指が動かないこと。同様の苦手意識を持つ方も多いと思うので、この観点から一冊、韓国文学をおすすめしたいと思います。

まず韓国語は、日本語と同じく主語(Subject)、目的語(Object)、動詞(Verb)の語順のSOV型言語です。そのため、英語に代表される主語、動詞、目的語のSVO型言語に比べて、翻訳文が非常に読みやすいのです。海外文学の一歩目としてSVO型言語の作品を選ぶと、その時点で(私のように)苦手意識が刷り込まれてしまう可能性があります。その点で、韓国文学を始めとするSOV型言語の文学は入り口として適しています。

また、今回挙げた『フィフティ・ピープル』は50人の語り手による掌編集、つまり、あらゆる背景を持つ老若男女が語り手となっています。その中にはあなたのような人も、あなたの隣人のような人もあなたが苦手とするような人もいます。ひとつの国を、線というより多数の点で描写している本作は、文化や環境が違っても心の形は似ていると思える瞬間や改めて違いを認識する瞬間、日本に住んでいると名前くらいしか知らないニュースがその国の人々の精神に大きく影響していることを知る瞬間など、様々な発見に満ちています。読みやすさと海外文学ならではの味わいを両立させている本作は、潜在的な海外文学への苦手意識を溶解してくれる一手となり得るはずです。

作家。2012 年早稲田大学文化構想学部卒業。在学中の2009 年『桐島、部活やめるってよ』(集英社)で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013 年『何者』(新潮社)で直木三十五賞受賞。最新作は『正欲』(新潮社)。

悪童日記
提供:新潮社

恩田 陸(作家)

悪童日記
アゴタ・クリストフ 著 堀 茂樹 訳 早川書房 ハヤカワepi文庫

時代の空気を感じ取り、読み取る面白さ

海外文学を読む理由はいろいろだ。「世界にはいろいろな国、いろいろな人、いろいろな考え方がある」という多様性を感じるため、とか、「それでも皆、同じ人間である」という共通性を確認するため、とか。ところが、この『悪童日記』はタイトル通り子供の日記という体裁をとっており、非常に簡潔な文章で全く心理描写がないため、その両方をある意味、拒絶している。しかし、感情移入をさせないからこそ、私たちが「海外文学を読む理由」のひとつを提示してくれているように思う。なぜこの小説が著者の母語のハンガリー語でなくフランス語で書かれたのか。登場人物の謎めいた行動の意味。そして、衝撃的なラスト。そう、海外文学を読むことは、著者の背景たる歴史と文化を読むことでもあるのだ。日本の小説でも、発表されて20年も経つと、時代背景が分からないと理解できなかったりするが、それでもその時代の空気を読み取ることは可能だ。同じ「空気を読む」のなら、日本の古い小説や海外の小説の中の、時代の空気を感じ取り、読み取る面白さのほうを断然お薦めする。

作家。1987年早稲田大学教育学部卒業。1992年、小説『六番目の小夜子』(新潮社)でデビュー。2017年『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)で第156回直木三十五賞および第14回本屋大賞を受賞。

ガラスの街
撮影:朝岡英輔

古川 日出男(作家)

ガラスの街
ポール・オースター 著 柴田 元幸 訳 新潮社 新潮文庫

あなたは二重の迷路にまるだろう

このレビューに目を落としているあなたには名前があり、また、あなたには母語となる言語がある。大半の人は、それは日本語であるはずだ。この『ガラスの街』という小説の作者には名前があり、その作者には母語がある。作者は、ポール・オースターといい、オースターの母語は English で、この小説はもともと英語で書かれた。この2点だけを押さえて、あとは1ページ目から読めばいい。この本を読むのは簡単だ。なぜならばここには娯楽小説のスリルがあるから。この本を読むのは、しかし、純粋な知のスリルを味わうことでもある。たとえば読者のあなたは、小説の内側にあなた自身の名前が出てきたらどれほどギョッとするか? というようなシミュレーションを、作者自身がしている小説があって、それが現実を侵蝕しはじめたら、いったい何が起きるか? この『ガラスの街』は探偵小説の体裁をしている。が、すでに挙げたような壮絶な「試み」がある。それを「企み」と呼んでもよい。そして、最後に「あなたには母語となる言語がある」という点だけれども、あなたはきっと、小説というのは言語でもって書かれているのだ、という決定的な事実に、たぶん、この『ガラスの街』を読むだけで出会える。しかもあなたは、そうした事実を、本来は English で書かれた小説の日本語訳(柴田元幸による)でつかめる。あなたは二重の迷路にまるだろう。つまり、こうも言い直せる。「あんた、これ読むと、迷宮におちるぜ」

作家。早稲田大学第一文学部出身。1998年、長篇小説『13』(幻冬舎)でデビュー。2002年『アラビアの夜の種族』(角川書店)で日本推理作家協会賞と日本SF大賞を、2006年『LOVE』(祥伝社)で三島由紀夫賞を受賞。

スタインベック短編集

森 絵都(作家)

スタインベック短編集
ジョン・スタインベック 著 大久保 康雄 訳 新潮社 新潮文庫

読み手を作品世界に引き込む名手

初めて海外文学に触れるなら、短編小説を試してみるのもいいかもしれない。長編小説は長い。もしもあなたが自分に合わない一冊を選んでしまった場合――そして早々に見切りをつけるタイミングを逸してしまった場合、それ相応の忍耐を求められることになる。短編ならば短時間でケリをつけ、すぐに次へ進める。リスクが低いのだ。

短編小説の書き手で私が最も好きなのはトーベ・ヤンソンだが、最初の一冊としてはスタインベックをお薦めしたい。短い枚数の中で読み手を作品世界へ引き込むことにいて、スタインベックほどの名手はそういない。

ためしに『スタインベック短編集』(新潮文庫)に収録されている「朝めし」という掌編を一読してみてほしい。山で一人の男性が老人と若者に出会い、朝食を共にする。ただそれだけの話なので5分で読み終わる。なのに余韻が終わらない。そこで出会った風景が、あたかも肉眼で見たかのように、読み手の記憶に残る。小さな炎のように灯り続ける。それは、作者が主人公の胸に刻んだ何かを等しく読み手の胸にも刻みこんだ証だ。神様くらいの描写力がなければ出来ない技である。

人種や女性の描き方には時代が投影されているし、シビアな話も多い。作者の筆致はどこまでも冷徹だ。にも関わらず、この作品集には登場人物のすべてを包みこむ大地のような温かさが通底している。頁のそこここから立ちのぼる土の匂いのせいかもしれない。

作家。2004年早稲田大学第二文学部卒業。1990年『リズム』(角川文庫)でデビュー。1999年『カラフル』(理論社)で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』(講談社)で小学館児童出版文化賞を受賞。

さあ、気ちがいになりなさい

浅井 茉莉子(編集者)

さあ、気ちがいになりなさい
フレドリック・ブラウン 著 星 新一 訳 早川書房 ハヤカワ文庫SF

甘美な誘いに、乗らずにはいられない

正気を保って生きていられるのは、たまに読むべき小説に出会うからだ。

奇抜な発想とその技巧でショートショートの名手と言われる作者の短編十二篇を、ショートショートの神様・星新一が訳している本書。

惑星に不時着した男がもう一人の不時着者に出会い、事実を知ってしまう「みどりの星へ」、侵略者によって電気が使えなくなる世界を描いた「電獣ヴァヴェリ」、十八万年かけて四千回の人生を繰り返してきた男の手記「不死鳥への手紙」など、様々なifの世界に引き込まれる。

表題作は事故で記憶を失った男が、精神病院に潜入取材するために「自分はナポレオン」であると装う。ただ、男は本当に自分をナポレオンだと思っていた。められたのではと疑う男が、自身の正気を証明するためにもがく――のかと思いきや、「人間とはなにか」の真実に直面させられるのが、著者の一筋縄ではいかないところ。

タイトルが、読書への甘やかな誘惑の言葉に聞こえ、身を任せたくなる。
「知ったらおまえは気がくるうだろう。それでも知りたいか」 答えは、言うまでもない。

株式会社文藝春秋編集者。2007年早稲田大学第一文学部卒業。『週刊文春』記者を経て、現在は単行本の編集を手掛ける。芥川賞を受賞した『火花』『コンビニ人間』を担当した。

ナイン・ストーリーズ

辻山 良雄(書店主)

ナイン・ストーリーズ
J.D.サリンジャー 著 野崎 孝 訳 新潮社 新潮文庫

読後の余韻が楽しい九つの話

早稲田の学生時代、まいにち暇を見つけては高田馬場の芳林堂書店(当時はいまより広かった)までいって、飽きもせず本棚を眺めていた。読みつくせないほどの本があることが、圧倒されるというよりは「まだこれだけある」とうれしくて、特に新潮文庫の海外文学の棚は、「ア」から順番に、かたっぱしから貪るようにして目で追いかけていった。

「名前や地名に聞き覚えがない」「思想的な内容が多くてとっつきにくい」「主人公の行動原理がわからない」。一見“ガイブン”を敬遠するこれらのことは、海外文学を読む際、もっとも楽しみな理由にも数えられる。だってわからないことを読むから楽しいのではないですか? その見知らぬものから頭を殴られる感じは、SNSなどでは決して手に入らない。

『ナイン・ストーリーズ』を開くと、のっけから「バナナフィッシュにうってつけの日」という短篇が登場する。なぜ主人公が自殺するのか、そもそもバナナフィッシュって何だ。その当時はどれだけ読んでも、手の届かない箇所が残ったが、作品との距離感が文学や芸術に対するあこがれを生んだ。若いころそうした文学と出合うことは、その人にとってかけがえのない財産となるだろう。

『ナイン・ストーリーズ』に収められた九つの話は、それぞれに技巧が施され、洒落ており、読後しばらくその感触を確かめたくなるような余韻がある。ぜひ読んで、こんな世界があったのかと驚いてほしい。

東京・荻窪の書店「Title」店主。1997年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手書店リブロに入社。独立後は16年に新刊書店「Title」を開業。近著に『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』(幻冬舎)。

人間の土地

三浦 崇宏(クリエイティブディレクター)

人間の土地
サン=テグジュペリ 著 堀口 大學 訳 新潮社 新潮文庫

大地が、万卷の書より多くを教える

マーケティングの仕事をするとき、「性善説で企画し、性悪説で実行する」という考え方を大事にしている。人間は良いものだ。そしてもっと良くなろうとしているはずだ。どんなに裏切られてもその前提に立つと決めている。人間の本質がズルいもの、邪悪なものだとしたら、自己の利益のためにしか人は動かなくなるだろう。だが実際はそんなことはない。人間関係、感情、仁義、面白いとか素敵とか、何よりも自分が正しいと感じたことを人は選ぶ。そしてその選択が正しかったと信じられる経験が、誰の記憶にも確かにあるだろう。損得を超えた自分の美学や信念によって重要な選択をした経験は、人生を豊かにする資産であり武器になる。だからこそ、企画の出発点は性善説でなくてはいけないのだ。

ただし、人間は間違える。体調を崩すこともあればミスもする。目先の利益を取ってしまうこともあるだろう。だからこそ、企画を実現する際にあたっては、計画が着実に実行されるように細心の注意を払う。人の弱さ、愚かさ、ちょっとした時に顔をのぞかせる悪から目を背けてはいけない。

そんなことを学んだのがこの本だ。郵便飛行機のパイロットだった作者がサハラ砂漠に不時着し、極限の状況で砂漠をさまよい、孤独と疲労に耐えながらなんとか生還するまでの間に、人生や人間について思考した記録だ。どれだけ過酷な状況でも、著者は前を向いて、自分自身と人類の未来についての思索をやめない。しんどかっただろう、弱音を吐きたくもなっただろう、それでも彼は生きて世界を恨むことなく、こうつぶやくのだ。

「ぼくら人間について、大地が、万卷の書より多くを教える。」

皮肉なことに、この一冊の書が、生きること、そして思考すること、すなわち人間そのものについて、驚くほど多くのことを教えてくれる。20代のうちに、人間の一番美しいところ、強いところを記憶に焼き付けておくために、この本を後輩たちにすすめたい。

The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector。2007 年早稲田大学第一文学部を卒業後、同年に博報堂入社。2017 年1 月に独立し、広告・PR・マーケティングを手掛けるGO を設立。著書に『言語化力 』(SBクリエイティブ)など。

三体

和氣 正幸(本屋ライター)

三体
劉 慈欣 著 大森 望 ほか 訳 早川書房

初めての一冊に、間違いのないこの長編SFを

ひと口に海外文学と言っても色々あるが僕がよく読むのはSFだ。タイムトラベルや宇宙もの、異次元ものなど想像力の宝庫であるSFは、いまや何が起きてもおかしくない日常を生きるのに大切な示唆を与えてくれる。それに信じられないほどスケールの大きい物は読んでいるだけで面白い。

その中でも「初めての一冊」として僕が推したいのは『三体』シリーズだ。まず長いのが良い。初めての一冊として単行本5冊の本書は重すぎると思うかもしれないが、それだけの長大な物語だからこそ宇宙規模の想像力を楽しめるというものである。それにとても読みやすい。SF初心者でも分かりやすいように順を追って物語世界に導いてくれる。VRゲームを軸にこれから始まる宇宙的事件の大前提をドラマチックに描き、並行してミステリーと恋愛要素も取り入れ、無理なく自然に三体世界の空気感を刷り込んでくれる。そうしておいての急展開。SF的なぶっ飛んだ想像力がどこまでもどこまでも(この宇宙の外までも!)広がっていくのだ。3巻のクライマックスなどはこんなことを文字で表現できるのかと驚愕きょうがくしたくらいである。

読み始めればきっと時間が経つのも忘れ、気が付けば読み終わっているはずだ。しかも、本書が読めれば他の作品も「これくらいなら読めるかも」と気軽に手に取れるようになっているという効果も期待できる。初めての一冊だからこそ、間違いのない一冊を。お気に召したら僥倖ぎょうこうだ。

本屋ライター。2009 年早稲田大学第一文学部卒業。東京・下北沢にある本屋のアンテナショップ「BOOKSHOP TRAVELLER」店主も務める。著書に『東京わざわざ行きたい街の本屋さん』(ジービー)、『日本の小さな本屋さん』(エクスナレッジ)など。

現役早大生の皆さんおすすめの『海外文学 初めての一冊』

たくさんのご応募、ありがとうございました! 海外文学を愛する熱い思いが伝わるレビューは必読です。

マチルダは小さな大天才
ロアルド・ダール 著
宮下 嶺夫 訳 評論社

ロアルド・ダール作品は小さい頃に読んだ人も多いのではないでしょうか。小さな大天才マチルダが悪い大人たちを懲らしめていく爽快感が物語を通して吹き抜けています。しかし同時に、子どもの時期を過ぎたからこそ分かる物語のいびつさにもしびれます。一冊で2度おいしい児童文学の魅力が存分につまった作品です。(文化構想学部1年 安部 はる香)

花束を抱く女
莫 言 著
藤井 省三 訳 JICC出版局(宝島社)

人民解放軍海軍中尉の王四は、結婚式のために故郷へ帰ろうとしていた。道すがら、奇妙な美女と出会う。彼女は庚申薔薇の花束を抱き、高級な身なりをしているが、言葉を発さずにこにこと微笑むばかりで、口からは腐草の如き悪臭が漂うのであった。彼女に付きまとわれた王四は破滅を迎える。王四の激動する心境、美女の不気味さ、リアリティにあふれつつも時に幻想的色合いを帯びる風景などを巧みに描き、読者を魅了する莫言の秀作。(文化構想学部1年 石渡 光)

幻のアフリカ
ミシェル・レリス 著
岡谷公二ほか 訳 平凡社 平凡社ライブラリー

1931年、フランス。国家的なプロジェクトだったアフリカ調査団に記録係として著者も参加する。科学的・客観的な記録を取るはずの彼は、その使命に疑問を抱き、次第に公的な記録となる文書を自身の内面や想像を映し出すテクストとして書き始める。そのとき「記録」や「日記」や「小説」といった区分を問うことに意味はない。境界は揺さぶられてしまった。制度を超えた言葉たちの広がりに呆然(ぼうぜん)とするしかできないのである。(法学部4年 植田 将暉)

レ・ミゼラブル
ヴィクトル・ユーゴー 著
豊島 与志雄 訳 岩波書店 岩波文庫

レ・ミゼラブルというとミュージカルや映画が有名だが、私がおすすめしたいのはこの原作である。話とは一見関係のなさそうなワーテルローの戦い・七月革命・六月暴動・パリの下水道事情などが事細かに述べられており、当時の社会情勢や世俗を知ることができる。そんな19世紀パリで主人公ジャン・ヴァルジャンを中心に繰り広げられる物語を通じて、善悪や愛、希望などを深く考えさせられる物語である。(大学院先進理工学研究科 修士課程2年 植原 俊太郎)

高慢と偏見
ジェイン・オースティン 著
阿部 知二 訳 河出書房新社 河出文庫

高校時代、課題図書で海外文学があったが、「昔に書かれ、堅くて意味の分からない作品」が多かった。そう思っていた。そんな私にとって衝撃の一冊が『高慢と偏見』だった。相手のことを「どうせこんな人でしょ」「私には無理」と思い込んでいたのに、徐々に引かれあっていく恋模様は現代にも通じるし、読者の胸もキュンとする。「なんだ、恋なんて昔も今も変わらないじゃん!!」と、私の海外文学への偏見も変えてくれた。(政治経済学部2年 大島 千乃)

不思議の国のアリス
ルイス・キャロル 著
河合 祥一郎 訳 KADOKAWA 角川文庫

日本では明治に『愛ちゃんの夢物語』というタイトルで翻訳されて以来さまざまな翻訳が試みられてきた作品です。早稲田の図書館では、さまざまな時代に翻訳されたアリスと出合うことができ、その多様性に魅せられてしまいました。中でもしゃれや語呂合わせをどう訳すかに翻訳者の個性が出て非常に楽しく、読み比べをして楽しんでいます。翻訳の奥深さ・醍醐味(だいごみ)を味わえる作品です!(法学部3年 小川 祐佳)

『ナイン・ストーリーズ』より
「エズミに捧ぐ-愛と汚辱のうちに」
J.D.サリンジャー 著
野崎 孝 訳 新潮社 新潮文庫

戦争により神経衰弱になった青年は教会で美しい声の少女・エズミと出会い、私のために小説を書いてほしいというお願いを受けます。これは、その少女に捧げられた物語です。戦争によって負った深い傷が少女の純粋な心に触れることで癒され、やがて快い眠気を覚える最後の場面での青年の言葉が非常に印象的です。切なさの中に暖かな希望が感じられるサリンジャーの傑作をぜひ野崎訳で読んでみてはいかがでしょうか。(教育学部2年 カーン 貴生良)

人間の土地
サン=テグジュペリ 著
堀口 大學 訳 新潮社 新潮文庫

「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる」――熱い言葉、壮大な人間賛歌。それがサン=テグジュペリの魅力だ。職業飛行家であり、生涯空を飛び続けた彼が、砂の海や氷の大地に抵抗する飛行士たちの姿を圧倒的な筆致で描く。読みやすくはない。岩盤につるはしを打ち込んで、黄金を掘り出すような読書体験になる。しかし、発掘される黄金は正真正銘。ぜひご一読を。(文化構想学部1年 烏山 愛唯)

モモ
ミヒャエル・エンデ 著
大島 かおり 訳 岩波書店 岩波少年文庫

僕たちはモモと違って普通の人間なので、灰色の男たちから時間を盗まれたことに気付きません。だからこれから社会に出て、「仕事で時間がない」とか、「今忙しいから後にして」とか、きっとそんな風な文句を言いつつも、それを当たり前のこととして生きていくのだと思います。そう生きてきました。でも『モモ』を読めば、もう僕たちはモモの友達です。あの円形劇場に行けば、きっと上手くいく。そう思います。(文学部3年 河原田 捷)

トーマス・ベルンハルト 著
池田 信雄 訳 河出書房新社

物語中、画家・シュトラウホにじわりじわりと巻き取られすべり落ちていく研修医のように、私自身も本の中の言葉たちをただ眺めているつもりが、気付いたらずるずると、凍てついた暗い谷へと引きずりこまれていってしまう。行ったことも、これから行くこともないだろうけれど、寒い風の吹きすさぶオーストリアの田舎村の情景が頭から離れない。とてつもなく疲弊するけれど、いや、疲弊するほどに、たまらなく引きつけられた。(文化構想学部5年 葛綿 晴奈)

君がそこにいるように
トム・レオポルド 著
岸本 佐知子 訳 白水社 白水Uブックス

売れない役者サンディ。かつての彼女が自殺した責任を感じ、その真相を探ります。繊細でありながら軽快で、ユーモアあふれるサンディの人柄や生き方に憧れました。日々悩むことやつらいことはありますが、サンディのような生き方を知ると少し気が楽になるはずです。そしてなんといっても、切なくて胸に残るラストは必読です。(政治経済学部2年 小池 春都)

Brave New World(すばらしい新世界)
Aldous Huxley(オルダス・ハックスリ-) 著
松村 達雄 訳 講談社 講談社文庫

Aldous Huxley’s Brave New World is a warning toward people of the 21st century. By denying art, science, and religion, the World State was able to create a utopia. However, the story takes an unexpected turn when Linda and John arrive from the outside world. Although Brave New World concluded as a book, we will never know if this was a simple warning or an irreproachable guide to A.F. 632.(文化構想学部1年 小林 未來)

華氏451度(Fahrenheit 451)
レイ・ブラッドベリ 著
伊藤 典夫 訳 早川書房 ハヤカワ文庫SF

このディストピア小説は読書が禁止され、消防士が書物の捜索と焼却を任務とする社会を描いています。消防士の主人公の正義のジレンマを通じて、作者は文化遺産の保存の重要性と、思想管理体制が市民の創造力にもたらす影響を述べています。初めて読んだ私は、歴史上の哲学者や科学者のお陰で人類の知識がいかに発展してきたかに驚嘆し、これらの巨匠の肩に立つことによってのみ人類は共によりよい世界が構築できると理解しました。(大学院政治学研究科 修士課程1年 柴 思原)

長いお別れ
レイモンド・チャンドラー 著
清水 俊二 訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫

本作はいわゆるハードボイルド小説の金字塔です。鋭く切り揃えられた冷たい文章や芝居掛かった言葉選びといったハードボイルドの醍醐味(だいごみ)を味わうことができます。また、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウの皮肉っぽく小気味いい感性や孤独に貫き続ける生き様に惚(ほ)れた人は多いはず。マーロウと共に事件を追えばきっと震える「名言」を見つけることができるでしょう。そしてぜひハードボイルドな自分を見つけ出してみてください。(文学部3年 鈴木 海都)

自負と偏見
ジェーン・オースティン 著
中野 好夫 訳 新潮社 新潮文庫

200年前の古典的名作で、主人公はイギリスの良家の子女...などと言われると敷居が高いと感じてしまうだろう。しかしその高尚そうな世界観については冒頭一文目で説明がつき、登場人物はみな俗っぽく現代の我々にも分かりやすい。生き方を変えるような劇的な作品だとは言い切れないが、作品の高名さや厳めしさに気おされず読んでみると意外に読みやすい、という読書体験は海外文学の入門段階として適切ではないだろうか。(法学部3年 谷口 百花)

※訳本なし
Normal People
Sally Rooney 著
Faber & Faber

他人のように振る舞って、他人のように考えて、他人のようにありふれた人になったら、幸せになるのか。ただ、愛されたいだけだ――。規定された階級の隔たりのもとに、「人々」という世界のなかで、自分らしく生きたくても愛を求めずにはいられない。だからさまよってしまう。アイルランドの作家・Sally Rooney氏が紡いだ『Normal People』は、こうした群れのなかに孤独にいきる私たちの心に響き合う。(大学院法学研究科 博士後期課程2年 陳 韋佑)

高慢と偏見
ジェーン・オースティン 著
富田 彬 訳 岩波書店 岩波文庫

中学3年生のとき初めて読んで衝撃を受けた。派手な事件が起こるわけでもないのに、ページをめくる手が止まらないのだ。オースティンの鋭い観察眼と精緻な描写により、訪れたことのないイギリスの片田舎の風景や、登場人物のやりとりが、ありありと目に浮かぶ。そしてなにより、主人公エリザベスの、持ち前の聡明さと行動力で、人生を切り開く姿に心が踊った。原文で読んでも、複数の翻訳を読み比べても、何度でもおいしい作品だ。(文学部5年 豊田 里咲)

グレート・ギャツビー
フィツジェラルド 著
野崎 孝 訳 新潮社 新潮文庫

主人公のギャツビーはハリボテの城に住む王様のような人である。富を得てロールスロイスを乗り回しても、彼の唯一の本心である愛するデイズィへの思いは叶(かな)わない。遠くから彼女の部屋の緑の光を見ているだけ。彼のことを心底哀れな人間だと思った。しかしその感情は、自分を自分で偽っている僕に湧いた感情だったのかもしれない。目を背けたい事実を見させられた気分。ギャツビーが見ていた緑の光が、いつまでも眩(まぶ)しくてつらい。(政治経済学部1年 内藤 虎之介)

穴 HOLES
ルイス・サッカー 著
幸田 敦子 訳 講談社 講談社文庫

灼熱(しゃくねつ)の太陽の下、少年たちは穴を掘る。それは自らの罪を償うため、そしてある秘密の目的のため。全米図書賞児童文学部門、ニューベリー賞受賞、映画化もされた珠玉の青春物語。私がこの本に出合ったのは受験生だった夏休み。次第に明かされる少年たちの運命、穴を掘る本当の目的、そしてはかない友情、どれも心動かされました。単調だった受験勉強に刺激を与えてくれた思い出の一冊です。(法学部2年 中野 沙彩)

アレフ
ホルヘ・ルイス・ボルヘス 著
鼓 直 訳 岩波書店 岩波文庫

この本はラテンアメリカ幻想文学の筆頭である、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集である。表題作『アレフ』は彼の短編の中では長めの作品だが、全く冗長ではない。知人女性を亡くした語り手が彼女のいとこと交流し、アレフという存在について知り、それを見る。アレフという概念の何たるか、それが静謐(せいひつ)で知的な文章とともに詳(つまび)らかにされていく。本短編に限らず、ボルヘスの言葉は読み手に快い難解さをもたらす。(大学院文学研究科 修士課程1年 西角 美咲)

蠅の王
ウィリアム・ゴールディング 著
黒原 敏行 訳 早川書房 ハヤカワepi文庫

この作品はアメリカの図書館では未成年者への貸し出しが禁止されることも多い。その理由は、人間の負の側面があまりにも緻密に描写されているからだろう。私も危うくこの作品によって精神を蝕(むしば)まれるところだった。無人島において、人間が反道徳的な行動に走るまでの過程がグロテスクなほどリアルに描かれている。著者の人間への深い洞察に感嘆した。下手な心理学の本を読むよりもよっぽど人間の心について勉強できる作品である。(教育学部3年 馬場 善弘)

特別料理
スタンリイ・エリン 著
田中 融二 訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫

『奇妙な味』と評されるこの短編は、省略も優れた表現になることを教えてくれました。味は絶品でもどこか怪しく、常連だけ調理場を見学できる噂がある店が舞台です。ふと宮沢賢治の『注文の多い料理店』を連想しました。猟師が山猫に食べられそうになる話で省いた描写と巧みな語りで読者を引き込む異色の童話です。『特別料理』も敢えて書かない表現が生む漠然とした不穏さが魅力です。しゃれた省略を味わう楽しさを知りました。(大学院人間科学研究科 博士後期課程1年 蓑田 正俊)

14歳、ぼくらの疾走: マイクとチック
ヴォルフガング・ヘルンドルフ 著
木本 栄 訳 小峰書店 [email protected]

地味な中学生マイクと不良の転校生チックがラダ(車)をぶっ飛ばし旅をする、ドイツ現代ヤングアダルト文学の代表作。しかし児童文学と侮れない。マイクの心のぐじゅぐじゅ加減がなんとも魅力的。クラスでの孤立、アル中の母、無謀な片思い、悶々(もんもん)とする彼のむずがゆくも愛らしい姿が丁寧に描写されている。翻訳も作品にふさわしい茶目っ気があり、読みやすい。今より少しでも息のしやすい場所へ、そう願う全ての人々に響く名作。(文学部4年 森野 紗英)

レベッカ
ダフネ・デュ・モーリア 著
茅野 美ど里 訳 新潮社 新潮文庫

昨夜、またマンダレーに行った夢をみた」という、不思議な一文から始まる小説です。平凡な女の子と年上の男性のラブロマンスかと思いきや、もう亡くなっているはずの「レベッカ」という人物が作品中常に影を落としており、背筋が凍るような怖さがあります。サスペンス要素もありますがホラー小説ではないので、それらが苦手な方にもおすすめです。思ってもみなかった結末に驚くので、ぜひネタバレなしで読んでいただきたいです!(文化構想学部1年 山本 ひかり)

ショウコの微笑
チェ・ウニョン 著
牧野美加 ほか 訳 CUON 新しい韓国の文学

言語、場所、時間??越えられない隔たりがあるからこそ、互いに心を許せる関係性がある。留学生としてソユの家を訪れたショウコをきっかけに、家族は笑顔を取り戻し、ショウコが去った後も、彼女への思いを通してつながり続けます。それぞれの痛みを抱え大人になった2人が拒絶されることを恐れながら、それでも隔たりを乗り越えようとする勇気は、隔たりがあるからこそ存在していた関係性を壊す恐怖と背中合わせにあります。(文化構想学部4年 米倉 伸哉)

三体
劉 慈欣 著
大森 望 ほか 訳 早川書房

アジア圏の作品として初のヒューゴー賞を受賞した長編小説。宇宙の向こうから三つの太陽を持つ異星に誕生した三体文明が地球文明を目指しています。この時、地球上各国の科学者、政治家、一般人はどう対応するのか。相手の心が読める三体人に対して、臨機応変な地球人はどう戦うのか。この作品は著者が自分なりの答えを出して、読者に野性と人間性のバランスを吟味させます。(大学院商学研究科 修士課程2年 李 春江)

多彩な海外文学を冒険できる新施設 早稲田大学国際文学館 (村上春樹ライブラリー)

国際文学館(村上春樹ライブラリー)

2021年10月1日に開館した、早稲田キャンパスの新たな施設。小説家・村上春樹氏が寄託・寄贈した資料やレコードなどを公開する。他にも、ギャラリーラウンジ、展示室、スタジオ、カフェ、オーディオルームも設置され、定期的にイベントも開催される。


「国際文学館は、国内外のあらゆる書物に触れられ、音楽を聴いたり、他者とのコミュニケーションを楽しんだりもできる、あらゆる条件が揃った自由な空間です。“国際” という大層な名前がついていますが、実はとてもカジュアルな場所。気軽にふらっと立ち寄るだけでも、必ず何か新しい世界に出会えるはずなので、ぜひ遊びに来てくださいね」(ロバート キャンベル先生)

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