Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田出身の起業家たち2 With/Post コロナ どう働く?(前編)

「危機の『機』は機会の『機』だ」 コロナがもたらした変化のタイミングをサポート

三浦崇宏 The Breakthrough Company GO(株式会社GO)代表取締役、PR/Creative Director

新型コロナウイルス感染症との戦いは、1年以上にわたり続いています。その間にオンライン授業やリモートワークが普及し、対面で人と会う機会が減るなど、学び方や働き方、生活様式は大きく変わりました。コロナが収束しても、これらが完全にコロナ前に戻ることはないでしょう。

そのため、人も企業も変化の流れの中でたたずむのではなく、変化に対応していかなければいけません。とはいえ「頭では分かっているが、どうしたらいいのか分からない」、それが本音ではないでしょうか。

実際、早稲田大学の卒業生(校友)である三浦崇宏さんが立ち上げた、新たな発想で広告やマーケティング、さらには事業開発までを手掛けるThe Breakthrough Company GO(以下、GO)には、コロナ禍以降、変化や革新のための施策について企業からの相談が相次いでいるそうです。

2017年の創業以来、企業の“変化”をサポートし、さまざまなプロジェクトで注目を集めてきたGOを率いる三浦さんは、この時代をどう捉えているのでしょうか。これからの学生に求められることやクリエイターを目指す学生へのアドバイスと併せて伺いました。

profile

The Breakthrough Company GO(株式会社GO)代表取締役 PR/Creative Director

三浦 崇宏(みうら・たかひろ)

1983年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2007年に博報堂に入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を担当した後、2017年1月に独立しGOを設立。「表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事」が信条。これまでに日本PR大賞、Campaign ASIA Young Achiever of the Year、グッドデザイン賞、カンヌライオンズクリエイティビティフェスティバル ゴールド、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS イノベーション部門グランプリ/総務大臣賞などを受賞。著書に『言語化力(言葉にできれば人生は変わる)』(SBクリエイティブ)『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』(文藝春秋)などがある。

コロナ禍で「この先どうしたらいいのか分からない」人・企業が増えた 今こそ“変化”のタイミング

GOといえば、JINSのコンタクトレンズ「JINS 1DAY」のテレビCM、朝日新聞「#広告しようぜ」の新聞広告など話題になったプロジェクトを多数手掛けられており、目にしたことがある学生は多いと思います。また2020年には教育プログラム「THE CREATIVE ACADEMY」を立ち上げて、クリエイティブ・ディレクターの養成事業も始められました。一般的な広告・PRの会社とは少し違う事業展開を目指しているということですが、その内容について簡単に教えていただけますか。

JINSのコンタクトレンズ「JINS 1DAY」のテレビCM
朝日新聞「#広告しようぜ」の新聞広告
教育プログラム「THE CREATIVE ACADEMY」

GOは「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットする」をミッションに、人口減少やサステナビリティなど、変化が求められているタイミングで企業や社会の「変わる」をサポートしています。

具体的に何をしているかというと、一般的な広告・PR会社は広告や宣伝だけ担うところを、GOでは新規事業を一緒に創るところから関わり、成長の指針を考えたり、話題になるプロモーションをしたりと、クライアントと“ワンチーム”になって進めていきます。特に「ニュースになるプロモーション」「企業成長に貢献するブランディング」「企業価値を高める新規事業開発」の三つが柱です。

コロナ禍はまさに変化のタイミングですが、事業にはどのような影響がありましたか?

1回目の緊急事態宣言が出された2020年の4-5月ごろは仕事が減りましたね。ただ社会全体の運動量が落ちるそのタイミングで、思考の運動量を落とさないことを意識しました。例えば、ブログで今後の社会の変化について考えたことを発表したり、GOが普段一緒に仕事をすることが少ない自治体や飲食・小売りなどの企業にアイデアとノウハウを無償で提供する「プロブレ(プロによるブレスト)」という活動をしたりしました。

結果的に昨年は仕事がすごく増えました。僕たちの仕事は広告や宣伝を超えて「これから先どうしたらいいのか分からない」という相談に応えることです。ですので相談が増えたということは「どうしたらいいのか分からない人・企業が増えた」ということだと思います。

中小企業からの相談が多いのでしょうか?

GOはスタートアップ企業を中心にサポートするつもりで立ち上げましたが、2020年末は規模の大きい、伝統的な企業からの相談が急増しました。コロナ禍のタイミングで大企業を含めて多くの企業が「変わりたい」と思っているのではないでしょうか。

企業は今、DX(デジタルトランスフォーメーション)やサステナビリティ、ダイバーシティなど、さまざまな変化への取り組みを求められています。危機の「機」って機会の「機」でもありますよね。もともと変化を考えていた中でコロナが広がり、この危機を「変われるタイミングだ」と捉えたことが顕著に現れたんだと思います。

コロナ禍で働き方も価値観も変化する。これからの時代、人との違いを面白がれる人材は強い

社名の「GO」をかたどった机など、細部にまで遊び心のあるオフィス

三浦さんはコロナの影響で今後、社会にどのような変化があると思いますか?

いろいろあるのですが、ビジネスでいうと日本ではコロナ前から人口減少が続いていて、営業効率重視でお客さんを増やすというビジネスモデルは難しくなってきていました。これからは一人のお客さんの幸福度をどのように高められるのかという「量から質へ」の変化は間違いなく起こるでしょうね。

人間関係でいうと、コロナ禍で人と会いにくくなったことで「人間同士のつながり」の価値が相対的に高まると思います。例えば、僕が好きな格闘技のイベントはオンラインで安く見られるようになった一方で、会場で見る場合は、観客数の制限などによりチケットの価格が上がりました。価格面に限らず、これからも対面で関わることの価値は上がっていくと思います。

仕事と私生活では、僕は「8:6の時代」と呼んでいるのですが、「給料はこれまでの8割でいいので、仕事量は6割にしたい」という意識が高まると思います。コロナ禍で家にいる時間が増え、「なんで今まであくせく働いていたんだろう」「家にいるって豊かな時間なんだ」と多くの人が気付きましたからね。

あとは「ヒエラルキーからコミュニティへ」ですね。昔は大企業に入ったらそこで出世していけば幸せになれたかもしれませんが、今は人材の流動性が高まっていて、組織もどんどん変化しています。一つの会社で出世するのではなく、大企業で働きながらスタートアップ企業でも働く、地域のお祭りで頼りにされる、社会人サークルのリーダーをするなど、いくつものコミュニティに属してその中で信頼関係を築くことの社会的価値が高くなると思います。大きなピラミッド一つではなく、小さなピラミッドを増やすというイメージですね。

インタビューが行われた会議スペース。まるでプロレスのリングのような造り

ルールがどんどん変わっていく今の時代、これから社会に出ていく学生にはどんな資質が求められるのでしょうか?

すごく基本的なことですが、一番大事なのは「相手を好きになる」ことだと思います。「人に好かれる人がいい」と一般的に言われますが、それってすごく難しいですよね。それに人に好かれようとするってなんか気持ち悪いですし(笑)。

自分が相手のことを好きじゃないのに相手が自分を好きになることは、恋愛以外ではあまりないと思います。だからまず自分から人を好きになることが大事です。自分が「この人面白いな、話していて気持ちいいな」と思えば、相手も大体そう思ってくれています。

相手が自分の苦手なタイプだった場合はどうすればいいですか?

もちろん気が合う人ばかりじゃありませんよね。そういう時は「なるほど、そういう風に考えるのか」と考え方の違いを面白がるのがいいかもしれません

もともといた博報堂時代の上司は僕と考え方が全く違っていて、何を話しても意見が食い違いました。でも、その人は僕のことを真剣に考えてくれていました。だから博報堂を辞める時も、何か新しいことを始める時も、だいたい彼に相談したのですが、その度に「もうちょっとこの会社で頑張った方がいい」とか「そのプロジェクトはやめた方がいい」とか、僕の考えと真逆のことを言うんですよね。そこで僕はアドバイスとは逆を行きました(笑)。

GOで学生インターンを採用する時も、僕と違う人生を生きてきた、僕の知らないことを知っている人を選んでいます。インターン生に「これどう思う?」って率直な意見を聞くこともありますが、たとえそれが僕と違う意見であっても面白いと思えるのであれば尊重します。人との違いを面白がれる人はこれからの時代、強く生きていけると思いますよ。

オフィスの入り口は観葉植物がたくさんあり、とても心地いい空間

クリエイターを目指すのであれば、まず人間らしい経験を積もう

先ほど、「8:6の時代」という話がありましたが、クリエイターというと24時間仕事のイメージがあります。実際三浦さんはどうですか?

僕の場合は仕事が一番の趣味ですが、友達と食事をする、旅行に行く、取材を受けるといったことも大事にしています。それが仕事のアイデアになることも多いんですよね。

人生を全て仕事に費やすって、それくらい好きになれることがあるという意味ではすごく豊かな生き方だと思います。でもその仕事の価値を高めるためには、逆に仕事以外で家族を大事にしたり社会の中で意味のある生き方をしたりして、自分自身を豊かにすることも重要だと思います。僕は24時間仕事のことを考えた方がいいと思いますが、それは仕事以外のことをするという意味でもありますね。

早稲田大学の学生の中には、広告業界、クリエイターを目指す学生もいます。アドバイスはありますか。

よく就活生に「広告業界に行きたいんですが、広告の勉強をした方がいいですか?」と聞かれるのですが、僕は「広告についてしか知らない人は、広告のことを何も知らない」と思っています。

もちろん、過去にどういう広告があったか知っていることは大事です。ただ、今の時代の人々の気持ちを動かすためには、人間の感情の“当たり前”とも言える部分に詳しくなければいけません。例えば「恋をしている人は消費行動にどういう変化があるのか」「会社で嫌なことがあった人は何をすれば喜ぶのか」といったことが分からなければ、本当にいいものは創れないと思います。

だからいいクリエイターになりたいのであれば、まず人間に詳しくなってほしい。そのためには恋をするとか運動をするとか遊ぶとか、人間らしい経験を積むことが大事です。結果的にそれがいい仕事につながりますよ。

The Breakthrough Company GOとは?
博報堂出身の三浦崇宏と電通出身の福本龍馬が2017年に設立。「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットする」をミッションに掲げ、クリエイティビティを軸にプロモーションの枠を超えて、企業の新規事業立ち上げやサービス開発から広告までクライアントとワンチームになってプロデュースする。ケンドリック・ラマーの国会議事堂駅前「黒塗り広告」、「WEARABLE ONE OK ROCK」、「新聞広告の日 朝日新聞社×左ききのエレン Powered by JINS」など話題になった広告やイベントを多数手掛ける。近年はスタートアップ投資事業やクリエイティブディレクターの養成にも取り組んでいる。

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