Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田出身の起業家たち2 With/Post コロナ どう働く?(後編)

コロナで苦しんだ時代の学生じゃない。新しい時代の1期生なんだ

三浦崇宏 The Breakthrough Company GO(株式会社GO)代表取締役、PR/Creative Director

「どうして今なんだ」「自分たちはついていない」。新型コロナウイルス感染症の影響で大学の授業やサークル、就職活動はこれまでと大きく変わりました。この時期に大学生でいることを不運だと感じている学生も多いのではないでしょうか。

ところが、既存の広告・PRの枠を超えて企業の成長をサポートしてきたThe Breakthrough Company GO(以下、GO)の三浦崇宏代表は「今の学生は新しい時代の1期生で、チャンスも多い」と言います。

前編ではGOの取り組みや「違いを楽しむ」という三浦さんの考え方などを伺いました。後編では、三浦さんの早稲田大学での学生生活を振り返りながら、コロナ禍で悩む学生に時代の変化をポジティブに捉えるポイントを教えていただきました。

profile

The Breakthrough Company GO(株式会社GO)代表取締役 PR/Creative Director

三浦 崇宏(みうら・たかひろ)

1983年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2007年に博報堂に入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を担当した後、2017年1月に独立しGOを設立。「表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事」が信条。これまでに日本PR大賞、Campaign ASIA Young Achiever of the Year、グッドデザイン賞、カンヌライオンズクリエイティビティフェスティバル ゴールド、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS イノベーション部門グランプリ/総務大臣賞などを受賞。著書に『言語化力(言葉にできれば人生は変わる)』(SBクリエイティブ)『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』(文藝春秋)などがある。

イベント企画で学生ながら年収500万円。世の中に影響を与える仕事を求め広告代理店に就職

三浦さんは早稲田大学でどのような学生生活を過ごされたのですか?

残念ながら何の授業を受けたのかは全く覚えていないんです…。4年生のとき、いわゆる「フル単(フル単位)」じゃなければ卒業できなかったことは確かです(笑)。

もともと小説家になりたいと思って第一文学部に入ったので、入学後は小説を書いていました。でも才能がないと気付きました。小説が好きなので、自分で自分の作品を読んで分かっちゃうんですよ。もっと頑張ればどうにかなったかもしれませんが、書いていて楽しくなかった、それが致命的でした。

一方で、当時自ら立ち上げたイベントサークルでの活動はすごく楽しかった。それで「自分は一人で何かを作るよりも、みんなで作る方が好きなんだ」と分かったんです。これは貴重な発見でしたね。

ご自身で立ち上げたサークルでは、具体的にはどんな活動をしていたのですか?

イベントを企画してチケットの販売までしていました。六本木のクラブで2,000人規模のパーティーをプロデュースしたこともありましたね。それが結構うまくいったので、企業から「人材採用イベントのプロデュースをしてほしい」と声が掛かることもありました。

僕はサークルの代表を務めていたのですが、当時月40万円くらい稼いでいて年収は500万円くらいありましたね。他に塾講師もやっていました。

学生で年収500万とは…。そこまで稼いでいると、企業に就職するという選択肢はなかったのではないですか?

大学3年生になると周囲で就活の話が出てきたのですが、サークルの仲間はみんな起業を選択していました。ただ、僕は迷いました。「このまま東京でイベントの会社をやって年収1,000万円を得られれば、ハッピーなのか? 自分はそれをやりたかったのか?」って。

もともと小説家になりたいと思ったのも「表現で世の中を変えたい」と思ったからでした。そこに立ち返り、小説以外で世の中に影響を与えられる仕事という観点で考えたときに、たどり着いたのがテレビ局と広告代理店だったんです。それぞれの業界でインターンを経験した結果、将来独立することを考えると広告代理店の方が学べることが多いと思い、博報堂に入社しました。

卒業制作で本を出版。スーツを着て、彼女を「秘書」と呼んでいたあの頃

他にはどのような活動をされたのですか?

就職活動が終わってからは、卒業制作として『学問以外のススメ』(辰巳出版)という本を制作し、出版しました。今ではブロガーとして有名なはあちゅうさんをはじめ、僕の周りの学生は何をしていたのか、インタビューをしてまとめたもので、5〜6人で制作しましたが、文章は8割くらい僕が書いています。

本の中に当時の写真も掲載されています。見ての通り、今はどんな打ち合わせでもカジュアルな格好ですが、大学時代は真逆でスーツを着ていました。大人との関わりがあるように見られたかったんですよね。その上、当時付き合っていた彼女を「秘書」と呼んだりして。今思うと本当に恥ずかしい…。

卒業制作で作った貴重な本。当時のスーツ姿の三浦さん(左)の写真も掲載されている

これは必読ですね! 大学時代を振り返って「もっとこうしておけばよかった」という点はありますか?

そりゃあ「ちゃんと授業を受けておけばよかった」「貯金しておけばよかった」とかいくらでもありますよ。よく「人生は2周目からが面白い」と言いますがその通りで、1周では分からないことも多いんですよね。今の自分だからこそ、教養が大事だと分かるんです。とは言いつつ、実際に今大学生に戻ったとしても、結局は同じように過ごすと思います(笑)。

それに、大学時代に今でもつながる友達と出会えたことは、本当によかったと思っています。GO共同代表の福本龍馬も大学の友達ですし、他にも社内に大学の頃からの友達が3〜4人いますからね。

今の学生は「新しい時代の1期生」。失敗はいくらでもすればいい

ただコロナ禍の現在は、三浦さんの学生時代とは全然違う状況になりました。「どうして今コロナなんだ」「ついていない」と悲観的になる学生も多いと聞きます。

確かにコロナでいろんなことが変わりました。まだまだこれからも変わっていくでしょう。今までのような授業、サークル、就活ができず、学生は自分たちのことを「苦しい時代の学生」と思っているかもしれません。でも僕はそれは違うと思います。彼らは「新しい時代の1期生」なんですよ。

1期生って新しいことばかりだから失敗しても怒られにくいし、その後の世代よりも先に生まれていてルールも分かるので、すごく有利なんです。

例えば、普通は会議に遅刻したら怒られますよね。でもオンラインの会議だと、機器の調整に手間取るケースもあり、そういった場合は遅刻しても怒られにくい。失敗する権利をもらっているんですよ。これってすごいチャンスじゃないですか? だからたくさん挑戦してたくさん失敗して、たくさん成長すればいいと思います。

「1期生だからむしろ有利」というのはとてもすてきな考え方ですね。前向きになれそうです。

それともう一つ、僕はコロナ禍の今を「自分自身と向き合う機会」にしてほしいと思っています。

これまでみんな、人と会うことやTwitter、LINEなどのSNSに時間を奪われて、なかなか自分と向き合う時間を持てずにいました。だから「私はこういう人間なんだ」と思い込んで、何か違和感があっても「これを好きなはずだ」「やりたかったはずだ」と自分をだましてしまいがちだった。例えば1カ月前にやりたかったことでも、実際にやってみたら面白くなかったり嫌だったりすることもありますよね。でも「1カ月前はやりたかったから」という理由でその気持ちを我慢してしまう。過去の自分や未来の自分、他人や社会を言い訳にして自分をだましてしまうんです。

今回、コロナ禍で人と会う時間が減ったことで、自分と向き合う時間が増えたはずです。この機会に「これって自分は楽しいのかな? 好きなのかな? 面白いのかな?」と、自分に取材する感覚で確かめてみるといいと思います。

超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』、『言語化力(言葉にできれば人生は変わる)』など多数の著書がある三浦さんですが、最後に、学生が読んでおくべきお勧めの本を3冊教えてください。

1冊目は哲学者である國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)です。人間は暇で退屈だったから進化したんだという話ですが、暇で退屈な大学生活を意味のある時間に変えるためにお勧めの本です。2冊目は村上龍さんの『69 sixty nine』(集英社)。どんなルールでも盲点を突けるという話ですが、ルールがどんどん変わる今の時代にこの思考は身に付けておいた方がいいと思います。最後は僕が書いた『人脈なんてクソだ。変化の時代の生存戦略』(ダイヤモンド社)です。これもルールが変わるタイミングでの思考法の話なので、今の時期に読んでほしいですね。

オフィス内に置いてある三浦さんの著書。タイトルにも三浦さんらしいインパクトのある言葉が並ぶ

僕たちはついついインターネットを見てしまいがちですが、ビジネス本やネット記事は耐用期間が短いものが多くて、特にネット記事は翌日くらいに消えてしまうものもあります。そういうものは社会人になってから、仕事ですぐに答えが必要な時などに読めばいいんです。僕は読書が好きで中高生の頃は週5〜6冊読んでいたのですが、それが結果的に今の仕事や生活に生きています。だから早稲田の学生にはたくさん読書をして、10年とか20年とか残る知識を身に付けていってほしいと思います。

The Breakthrough Company GOとは?
博報堂出身の三浦崇宏と電通出身の福本龍馬が2017年に設立。「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットする」をミッションに掲げ、クリエイティビティを軸にプロモーションの枠を超えて、企業の新規事業立ち上げやサービス開発から広告までクライアントとワンチームになってプロデュースする。ケンドリック・ラマーの国会議事堂駅前「黒塗り広告」、「WEARABLE ONE OK ROCK」、「新聞広告の日 朝日新聞社×左ききのエレン Powered by JINS」など話題になった広告やイベントを多数手掛ける。近年はスタートアップ投資事業やクリエイティブディレクターの養成にも取り組んでいる。近著に『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』(文藝春秋)がある。

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