Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田出身の起業家たち With/Post コロナ どう働く?(前編)

コロナで変わった働き方 今、変化に強い人材が求められている

山田進太郎 株式会社メルカリ代表取締役CEO

新型コロナウイルス感染症の流行は、今まで当たり前だった日常を大きく変えました。早稲田大学でもキャンパス閉鎖、オンライン授業、部活動やサークル活動の自粛といった対策がとられました。特に新入生は受験を乗り越えたのに入学直後からオンライン授業になり、キャンパスへ通えず、友達も作りにくい状況に戸惑ったことでしょう。3~4年生も就職活動における企業説明会や面接がオンラインになったり、急激な経済の悪化で企業が採用を絞ったりしたため、苦労している人も多いはずです。

この先どうなるのかなんて、誰にも分かりません。そうであればWith/Postコロナの時代をどう生き抜いていくかに、目を向けていくことが必要です。

先行きが不透明な中、学生が今何をすべきなのかを考える上では、時代を切り開いてきたリーダーたちの言葉にヒントがあるはずです。

コロナ禍で巣ごもり需要を取り込み、さらなる成長を遂げた「株式会社メルカリ」は、これからの時代を見据えた働き方を模索しています。そこで今回は早稲田大学の卒業生(校友)であり、寄附講座「起業家養成講座Ⅱ」(商学部開講オープン科目)の講師も務める山田進太郎代表取締役CEOに、メルカリの現状とコロナ時代を生きる学生へのアドバイスを伺いました。

profile

株式会社メルカリ代表取締役CEO

山田進太郎

1977年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、ウノウ設立。「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネット・サービスを立上げる。2010年、ウノウをZyngaに売却。2012年退社後、世界一周を経て、2013年2月、株式会社メルカリを創業。

新型コロナウイルスが日本のEC化を一気に“加速”。投資してきた未来に近づいた

株式会社メルカリはフリマアプリ「メルカリ」や決済サービス「メルペイ」を展開されています。山田さんは新型コロナウイルスによって、メルカリを取り巻くビジネス環境にどのような変化があったと思いますか?

これまで日本のEC化率(※1)は欧米に比べて低く、統計の種類にもよりますが、欧米が10%に対して日本は5%といった状況でした。ところが今回のコロナ禍で、ショッピングスタイルの中心がリアルの店舗からオンラインへと急激に変化しました。EC化が“加速”し、3~5年はかかると見られていた変化が、この3~5カ月で一気に訪れた印象です。EC化率は今後も右肩上がりになっていくでしょうね。それに昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)(※2)なども注目され、効率を追求してさまざまなものがオンライン化されていますが、この傾向も加速すると思います。

※1 全ての商取引のうち電子商取引(EC)が占める割合のこと。
※2デジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスプロセス、文化などを変革すること。

うちでは「メルカリ」の日本事業、アメリカ事業、そしてスマホ決済サービスの「メルペイ」事業を3本柱とし、その確立を目指してきました。コロナ禍でサービスの成長も加速しています。私たちは「こんなサービスがあったら便利なんじゃないか、楽しいんじゃないか」と考えてビジネスをつくってきました。新型コロナウイルスが時代を一気に前に進めたことで、私たちが信じて投資してきた「未来」がいち早く訪れたように思います。

一気に進んだEC化はメルカリにとって追い風となったんですね。経営への影響はいかがでしょうか?

新型コロナウイルスの流行前は事業の三本柱の確立に向けて、成長可能性が見込まれる案件には積極的に投資をしていました。感染拡大後は、先⾏きの⾒通しへの不透明さも強まることから、広告費や採用といった投資を抑制し、最悪の事態に備えました。

今後、コロナの状況がどうなるか分からないこともあり、引き続き規律ある投資をしていく方針に変わりはありませんが、状況を見極めながら機会と見れば、更なる成長を最優先した投資の再加速も検討していきます。

新しい働き方「ニューノーマルワークスタイル」確立へ、メルカリ社員の声を吸い上げあれこれ挑戦

新型コロナウイルスの影響で、メルカリでは働き方にどのような変化がありましたか? また社会全体では働き方がどう変わっていくと考えていますか?

2020年2月末からリモートワークを導入し、4月から6月末までオフィスを閉鎖しました。10月からはフルオープンしていますが、現在の出社比率は10~15%くらい(2020年11月時点)で、まだほとんどの社員が出社していないですね。私も基本在宅で仕事をしていて、取材や人と会う機会があればオフィスに来ています。

ナチュラルな丸テーブルを配すなど温かい雰囲気がある東京オフィス。今は出社している社員は少ないそう(写真:メルカリ提供)

今後ワクチンができたとしても、社会全体として今までのように毎日会社に行くことはなくなると思っています。そんな中で理想的な働き方を、私たちは「ニューノーマルワークスタイル」と呼んでいるのですが、その確立ができた企業ほど競争力を持つと考えています。メルカリでも、短期的には効率がよく、長期的には競争力がある、そんなニューノーマルワークスタイルの確立を一つの大きなテーマに据え、できることから始めています。

例えば、会議室をコロナ禍でも安全に使えるレイアウトに作り変えたり、オフィスの一部をフリーアドレスにしたり、ソーシャルディスタンスを保ちながら創造性高く仕事ができる方法を探しています。また出社頻度を下げられるように、社員の家の近くにオフィスを借りて「ホームオフィス」として出社してもらう取り組みもテストしています。効果は仕事のパフォーマンスや社内評価と合わせて個人・チーム単位でトラッキングしていますが、最適な解を見つけるまでには非常に時間がかかるでしょうね。

東京以外は、仙台、福岡、米国(ボストン、パロアルト、ポートランド)にオフィスがある(写真:メルカリ提供)

コロナ禍でもどうすれば効率よく仕事ができるか…そういったアイデアは社内からあがってくるのですか?

こういった取り組みを主管しているチームはありますが、ボトムアップのものもありますね。社内にはもともと「オープンドア」というオープンディスカッションをする文化があります。コロナ前は立ち話などで気軽に意見を聞けていましたが、今はオンラインが中心になって社員の声を吸い上げにくくなりました。そこで新型コロナウイルス関連だけでなく、人事制度だったり研究開発だったり、「一言言いたい」人はオンラインでもオフラインでも、オープンドアを活用するように推奨しています。参加した人の理解が深まれば、その人から他の人に情報が広がる効果も期待できますしね。

オンラインでも積極的に意見を言うように促しているということですが、やはり急にリモートワークになって、社員に戸惑いはあったということでしょうか?

そうですね、リモートワークによる課題はいろいろあるのですが、その一つが4月〜6月入社の新入社員や転職してきた社員、部署異動した社員のeNPS(従業員エンゲージメント)(※3)が低かったという点です。オフィス閉鎖でオンラインだけのやりとりになり、チームに入っていきにくくなっていきました。そこで社内のチャットでは新しいメンバーを気遣ってオンラインでも積極的に人間関係を築くようにし、最近はオフラインでのランチを活用したチームビルディングも推奨しています。(取材時点、感染の状況などで都度変更されているそう)

※3 職場に対する愛着や信頼の度合いを測る指標。職場推奨度。Employee Net Promoter Score。

オンラインでもオフラインでも、どの取り組みが正解かはまだ分かりません。メルカリではどんな環境でも働きやすい会社になるように、今はこういった一時的な対策を一つ一つ積み上げている状況です。

人材を見極める時間少なく、採用難航。早稲田の学生には変化に強い人材になってほしい

新型コロナウイルスの影響で新卒採用の時期を遅らせたり、採用自体を停止したりする企業も少なくありません。早稲田の学生もその多くが就職に関して不安を抱えています。メルカリでは採用にどのような影響がありましたか?

メルカリでは面接から内定といった一般的な採用プロセスではなく、インターンシップから採用に至るケースが多いんです。コロナ禍ではオフィスを閉鎖していて今までのようなインターンができなくなったものの、オンラインで開催するなど工夫しながらやっています。とはいえ、人材を見極める期間が短くなってしまっていることが課題となっています。海外からの採用も多いのですが、今は私たちが海外に行けませんし、日本にインターンに来てもらうこともできません。

採用では難しい状況が続いているのですね。良い人材がいたら採用したいというお話ですが、具体的にどういう人材を求めているのですか?

メルカリには「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションがあるので、やはりグローバルで何かやっていきたいという人を求めています。社内には外国人も多く、特にエンジニアでは5割程度を占めていて、会話も基本的に英語です。会社がグローバルスタンダードの環境にどんどん近づいている中で、自分で興味を持って、常にチャレンジングな環境で成長していきたいという思いがある人、常に変化できる人を求めています。これからますます変化が大きい世の中になっていくので、早稲田の学生たちには興味関心が高く、変化に強い人になってほしいですね。きっと、メルカリ以外の会社にも求められると思いますよ。

メルカリとは?
フリマアプリ「メルカリ」を展開する日本企業。2013年2月に「コウゾウ」として創業し、「メルカリ」に社名変更。社員数約1800名(2021年1月現在)。フリマアプリが日本国内で人気を博し、2014年からはアメリカ版の提供を開始。国内で東京、仙台、福岡、大阪、アメリカにも3拠点を構える。日本初のユニコーン企業(非上場で時価総額10億ドルを超えるとされる企業)として注目を集め、2018年東証マザーズ上場。2019年には「メルペイ」をリリースし、決済サービスに参入した。2020年7-9月期の売上高は221億円、営業損益は3億円の黒字。国内のメルカリの月間アクティブユーザー数は1755万人、年間流通総額は6259億円にのぼる。

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