Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田出身の起業家たち With/Post コロナ どう働く?(後編)

「変化はチャンス」学生のうちにできることを一つずつやろう

山田進太郎 株式会社メルカリ代表取締役CEO

コロナ禍で急激に進んだEC化を背景に業績を伸ばした株式会社メルカリ。前編ではニューノーマルワークスタイルの確立を目指した取り組みなど、メルカリならではの柔らかい発想で生まれる挑戦や採用の状況などを、山田進太郎代表取締役CEOに伺いました。

後編では早稲田大学の卒業生(校友)として、思うように学生生活を送れない早大生へのアドバイスや、ビジネスをしていく上で基礎となった学生時代の経験、そしてここ数年講師として参加されている寄附講座「起業家養成講座Ⅱ」(商学部開講オープン科目)から感じる早稲田の学生の変化について掘り下げていきます。

profile

株式会社メルカリ代表取締役CEO

山田進太郎

1977年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、ウノウ設立。「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネット・サービスを立上げる。2010年、ウノウをZyngaに売却。2012年退社後、世界一周を経て、2013年2月、株式会社メルカリを創業。

変化が大きい時代 → チャンスも多い! 学生はポジティブにいこう

新型コロナウイルスは経済だけでなく学生生活にも大きな影響を及ぼしました。早稲田大学でも春学期は全ての授業をオンライン授業に切り替え、一時はキャンパスも閉鎖しました。キャンパスで授業が受けられずやりたいこともできず、フラストレーションがたまっている学生も多いようです。山田さんからは今の学生がどのように見えていますか?

授業が対面からオンライン授業になるなど、今まで変わらなかったものがどんどんと変わってきていますね。ただこういう時はチャンスも多い。その点はポジティブに考えてもいいのではないでしょうか。

もちろん短期的に見ればキャンパスに行けない、友達を作れないといったネガティブな点はあります。でもワクチンができたとしても、完全に元通りとはいかないでしょう。それこそ授業もオンラインとオフラインのハイブリッドになっていくと思います。

学生はその変化を見極めて、何ができるのか、どう対応していくべきかを考え、一つ一つ行動に移していくことが大事なのではないでしょうか。例えば海外に行けなくても国内は移動できますし、時間があるから集中して勉強もできます。研究をするでも小説を書くでもいいと思います。

山田進太郎 株式会社メルカリ代表取締役社長CEOの画像

例えば本を読むとしたら? 山田さんが学生にお勧めしたい本を3冊あげていただけますか?

1冊目はナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』(ダイヤモンド社)です。白鳥は白いものだと思い込んでいたところに黒い白鳥が紛れ込んできたら常識が崩れますよね。震災やリーマンショックや新型コロナウィルスなど今はブラック・スワンがたくさん起こっています。そういった不確実性の高い今の世の中でどういう戦略で生きていくかのヒントがあります。2冊目は塩野七生さんの歴史小説『ローマ人の物語』(新潮社)シリーズです。ものすごく長編ですが歴史から学ぶのはいいと思います。あとは村上隆さんの『芸術起業論』(幻冬舎)もお勧めです。

学生時代のサークルで目覚めた「みんなでやることの面白さ」がビジネスの基礎に

メルカリは時代の変化に合わせ、事業を拡大されているように感じます。これは山田さんご自身が学生時代から思い描いていたことなのでしょうか?

学生時代には「こうなりたい」という明確なビジョンはなかったですね。友人とインターネットビジネスをやったり、楽天の内定者インターンシップを通して「ネットビジネスって面白いな」とは思っていましたが、ずっとやり続けるとは考えていませんでした。海外で働きたいとも思っていましたがそれも漠然としたもので、未来の想像はできていなかったですね。ただ20代、30代の頃は「これが自分のやりたいことだ」と思ったことをやってきたので、後悔はありません

メルカリ本社の入り口には、メルカリで取り扱われているような雑貨が並ぶ(写真:メルカリ提供)

では、学生時代の経験で、今ビジネスをしていく上で役に立っていることはありますか? 学生にこれはやっておいた方がいいというアドバイスがあればお願いします。

学生時代は「早稲田リンクス」(公認サークル)で活動していて、同期から勧められて幹事長にまでなりました。それまで小中高とリーダーシップなんてとったことがなかったので、初めての経験です。ただ実際にやってみると、みんなでどうサークルを盛り上げるか考えたり、新歓を頑張ったりしてサークルを拡大させていくのはすごく楽しかったですね。その中で「みんなでやる面白さ」に目覚めました。起業って、人を集めて一つのゴールに向かってみんなで進んでいくものなので、この経験はビジネスに非常に役立っています

ロビーには遊び心が感じられるユーモアラスな椅子が置いてある(写真:メルカリ提供)

逆に学生時代の経験で、失敗した、またはやっておけばよかったと後悔していることはありますか?

大学生活にはもちろん、つらいこともありましたよ。ですがそれも含めていい経験です。ただ英語だけは、学生のときからきちんとやっておけば良かったと思っています。2019年から毎日2時間英語を勉強していますが、学生のときに比べて記憶力も低下していますからね(笑)。

日本は人口が減少していて、日本の中だけでビジネスをするのは逆境の中でやっているようなものです。これからビジネスをするならグローバルに展開していくことを考えなければいけません。そうなると、まずコミュニケーションをとるために英語は必須。その重要性は増していると思いますね。

山田さんもいくつになっても努力されているのですね。他にコロナ禍に変化したことはありましたか?

コロナ太りをしてしまいました(笑)。オフィスにいると会議室の移動などでなんだかんだ動いているのですが、リモートワークだとやっぱり運動がおろそかになりますね。運動をせずに同じ場所にいると、気分も落ち込んでしまいます。今は定期的にジムに行って、運動をしています。

「起業したい」から「起業しています」に。講師をして感じる早稲田の学生の変化

2013年から早稲田大学の寄附講座である「起業家養成講座」の講師を務められていますが、始めた当初と比べて学生に何か変化はありましたか?

大きな変化を感じますね。講師はインターネット業界の先輩から声を掛けられ、大学への恩返しのつもりで始めたものの、開始当初、学生は「起業って何ですか?」という感じでした(笑)。ですが数年前から講座の人気が上がり、「起業したい」という学生が増えてきました。そして2018年くらいからは「(既に)起業しています」という学生が多くなりました。私たちの話から起業に興味を持つ学生が増えたのかは分かりませんが、起業家を養成するという意味で一定の効果があったのだとしたらうれしいです。学生も普通に起業する時代が来たんですね。

私は大学1年のときにソフトバンクの孫正義さん(ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長)や、ワタミの渡邉美樹さん(ワタミ株式会社代表取締役会長兼グループCEO)といったいわゆる「青年実業家」の話を聞いて、「どうやったらこういう風になれるんだろう」「自分には起業は難しいな」と一時は諦めちゃったんです。でもその後インターネットに出合って、起業することになりました。だからこそ講座では「普通の学生だった自分がどのように起業したのか」という学生にとってリアリティのある話をしています。

今の時代は、以前より起業しやすい時代になったということなのでしょうか?

孫さんが起業されていた時代は本当に起業したいという人しか起業していなかったと思いますが、私たちの時代はやりたいことをやっていたら起業していたという人も多い。そして今、学生はもっとカジュアルに起業しています。それはそれでいいと思います。もちろん起業には難しいこともたくさんありますが、その経験は全て自分の成長につながります。今後も起業に限らず、やりたいことにカジュアルに挑戦する学生が増えていってほしいですね。

メルカリとは?
フリマアプリ「メルカリ」を展開する日本企業。2013年2月に「コウゾウ」として創業し、「メルカリ」に社名変更。社員数約1800名(2021年1月現在)。フリマアプリが日本国内で人気を博し、2014年からはアメリカ版の提供を開始。国内で東京、仙台、福岡、大阪、アメリカにも3拠点を構える。日本初のユニコーン企業(非上場で時価総額10億ドルを超えるとされる企業)として注目を集め、2018年東証マザーズ上場。2019年には「メルペイ」をリリースし、決済サービスに参入した。2020年7-9月期の売上高は221億円、営業損益は3億円の黒字。国内のメルカリの月間アクティブユーザー数は1755万人、年間流通総額は6259億円にのぼる。

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