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特集

総長挨拶 夢中になれるものを見つけて充実した大学生活を【2022年度入学記念号】

撮影:飯島裕

早稲田大学総長 田中 愛治(たなか・あいじ)

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

早稲田大学は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを回避するため、入学式の式典への参加を新入生のみといたしました。ご家族や関係者の方と迎える入学式は、格別のものであるにもかかわらず、規模を縮小しての実施となったことを大変残念に思っております。一方で、早稲田大学は、三つの重要な使命を果たす必要があります。皆さんの健康と生命を守る使命、皆さんに教育を確実に提供する使命、そして教員が研究を続けその成果を教育に反映し、社会に貢献する使命です。この三つの使命を果たすためには、入学式の参加人数を制限してでも、健康で安全な環境を新年度に向けて整えることが最優先である、と私たち教職員は考えたのです。このことをご理解いただきたく思います。

入学式で皆さんは、早稲田大学の一員であることを認識し、新たな一歩を踏み出すことになるでしょう。今回は、早稲田がこれから目指す姿の紹介と、早稲田での学びを通じ、皆さんに身に付けてほしい力についてご説明します。

目指すのは「世界で輝くWASEDA」

2018年11月に早稲田大学の総長に就任して以来、私が強調しているのは「世界で輝くWASEDA」を目指す、ということです。早稲田は今、世界のトップクラスの大学になるという決意を固めつつあります。早稲田大学が国際的に見て学術的に意義があると思われる研究を続け、社会に送り出した人材が世界中で高く評価されるようになれば、「世界で輝くWASEDA」が実現すると思います。そこで、学生の力をさらに伸ばすために、学内の施設・サービスを充実させ、学生の目から見て学習効果の高い授業を提供することが重要だと考えています。こうして、新入生の皆さんが将来、グローバル・リーダーに成長するための環境を整備しています。

写真左:2020年3月に竣工した研究開発棟・121号館(撮影: ㈱エスエス / 走出直道)
写真右:2021年10月に開館した国際文学館(村上春樹ライブラリー)。村上春樹さんから寄贈・寄託された資料やレコードなどを所蔵し、村上文学の研究を行うとともに、国際文学、翻訳文学に関する世界の交流拠点となることを目指す(撮影:高橋榮)

ただし、早稲田が目指すグローバル・リーダーとは、必ずしも国際機関や世界的に有名な企業で仕事する人材だけに限りません。どのような場所・組織で仕事をしようとも、グローバルな視野を持ち、人類社会に貢献しようとしている人は、グローバル・リーダーと言い得ると考えています。そんなグローバル・リーダーとして活躍するためのポイントとなるのが、皆さんに身に付けてもらいたい二つの力「たくましい知性」と「しなやかな感性」です。

答えのない問題にも解決策を示せる「たくましい知性」

皆さんが感じているように、現在、人類は多くの問題に直面しています。新型コロナウイルス感染症の拡大防止や脱炭素社会の実現、経済格差の是正などがありますが、いずれも「正解」は用意されていません。早稲田大学で、そのような答えのない問題に対する解決策を、自分の頭で考え抜く「たくましい知性」をぜひ育んでください。多くの皆さんがこれまで勉強してきた、知識と論理的推論だけを頼りに、制限時間内で問題を解くのを目的とするような受験勉強とは違い、自分なりの仮説を提案するまでには、数週間、数カ月、もしくは数年といった長い時間が掛かるかもしれません。それでも、まずは未知の問題を自分事として捉えてみる。そして、問題に対して自分なりの解決策を立て、根拠を示してその策を検証し、自分の仮説が誤っていれば一からやり直す。このような思考の訓練を通じて、「たくましい知性」を早稲田大学で育んでください。

早稲田キャンパスにある大隈重信像

1882年、大隈重信によって設立された早稲田大学は、「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」という建学の理念を掲げ、140年にわたって、学問を実社会に役立てることを重視する教育をしてきました。それを、より体系的に、学部を問わず全学の学生に提供できるように、早稲田大学ではグローバルエデュケーションセンター(GEC)を中心に、全学共通の科目を提供しています。その中でも、基盤教育として位置付けられているのが、「日本語の学術的文章の作成」「英語での発信・英語の論理的文章の作成」「数学的な論理的思考力」「データサイエンスを駆使できる統計学的な理解」「情報科学を活用する能力」という五つの分野で、これらを体系的に学ぶことができます。基盤教育とは、大学で学問を学ぶために必須で、社会に出ても知的職業に就けば必要になるアカデミック・ツールをマスターするための教育です。

特に、「データサイエンスを駆使できる統計学的な理解」に関しては、2021年度から、全学部・研究科の学生に向けたデータ科学教育を展開し始めました。数学や統計に苦手意識を持つ方でも、一からデータ科学を学ぶ体制を整備しています。データ活用がますます重要になっている社会に飛び立つ前に、ぜひ積極的に受講してみてください。

多様な価値観に敬意を持って接する「しなやかな感性」

早稲田大学には、多様性を認める創立以来の伝統があります。日本全国から学生が集まり、また海外からも例年8,000名を超える学生が来ています。このため早稲田は、性別、障がい、性的指向・性自認、国籍、エスニシティ、信条、年齢などにかかわらず、多様な価値観を持つ人々に敬意を持って接し、理解し尊重する「しなやかな感性」を育むことのできる大学です。

大学内で自分とは異なるバックグラウンドを持つ学生と共に学び、共に活動することで、「しなやかな感性」をぜひとも育んでください。早稲田大学では、多様な授業の他にもたくさんの学生と交流できる場所を用意しています。例えば、ICC(異文化交流センター)GSセンター(Gender and Sexuality Center)WAVOC(平山郁夫記念ボランティアセンター)などで、学生主体のイベントが多く実施されています。こういった機会を積極的に活用してください。

写真左:早稲田キャンパス3号館にあるICCでは、オンラインイベントも充実
写真右:2017年4月に発足したGSセンター(早稲田キャンパス10号館)。リソースセンターとして、LGBTQ+(性的マイノリティなど)を含む多くの学生を支えている(写真は2018年に参加した東京レインボープライドパレードの様子)

学生による自由闊達(かったつ)なイニシアチブ

早稲田大学が誇れる特徴の一つは、どのような学生にも居場所があることです。早稲田では、一人一人が対等で自然に交流しています。自分のやりたいことが、必ず学内のどこかにあると思います。もし見つからなければ、自分自身で新しい取り組みを始めることもできますし、大学もそれを奨励しています。新入生の皆さんには、在学中にこれだけは自分が打ち込んだと思えるものを、もしくはこういうことにやりがいを感じるだろうなと思うものを、見つけていただきたいと思います。そのことが、将来、人生の中で何らかの形で生きてくると思います。

写真左:早稲田大学が運営する、南門通りに建つ小劇場「早稲田小劇場どらま館」。黒一色の外観が特徴的
写真右:WAVOCのプロジェクト「狩り部」では、地域に密着して獣害問題に取り組んでいる

早稲田大学は、型にはまった成功への道筋を求めるような大学ではなく、自分でやりたいことを探し出す大学です。早稲田にいる間に、面白いと思うこと、やりがいを感じることを見つけ出してください。それは、勉強や学問研究かもしれず、ビジネスやベンチャーの起業かもしれず、政治や行政に関することかもしれません。あるいは、音楽、演劇、スポーツかもしれません。心の準備ができたら、思い切って挑戦してください。在学中から、やりたいことを思い切ってやってみる。そして、得られた経験を糧に、人生を切り開いていってください。それが早稲田らしいといえる生き方です。早稲田は、その準備に最も適した大学だと思っています。ここで素晴らしい学生生活を送ってください。大学でのかけがえのない経験は、今後の人生の大きな糧となり、大きな自信になるはずです。

【次回フォーカス予告】4月4日(月)公開「学食特集」

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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