皆さんが文書を作成するときにそうであるように、パソコンのキーボードを打ってこの原稿を書いている
私が初めて PCを購入したのは 1988年、ちょうど大学の助手をしていたころで、研究室の名簿を入力するのが最初の練習だった。 PCを使い始めるまでは当たり前だった「ペンで書くこと」が、この日を境に古めかしく面倒くさいことになった
皆さんがそうであるかどうかは分からないが、私は昔から図書館や書店で興味のある本を立ち読みしていると急に便意を催す。そのため、初めて入る書店や図書館では真っ先にトイレの場所を確認する
この症状が悪化したのは 1983年から 2年間、中国に留学したときのことだ。中国の古い小説や戯曲が研究対象だった私にとって、劇場で古典劇を見ることと図書館で古い書物を見ることが主な活動だった。芝居を観るときは問題ないのに、図書館で埃にまみれた古い小説や戯曲のテキストを見ていると、ほぼ間違いなくトイレに行きたくなる
世の中には私と同じような症状を持つ人が少なからずおり、「青木まりこ現象」と呼ばれていると知ったのは、留学を終えて帰国した直後だった。印刷の匂いが原因であるとか、興味のある本を見ているときのワクワク感が原因であるとか、さまざまな解説がなされていた
これまで数多くの学生諸君に「青木まりこ現象」をもたらしてきた本誌も、印刷物として発行されるのは本号が最後。 4月からは Webマガジンとして発行される。新たなメディアに身を包んだウィークリーは今まで以上に私たちをワクワクさせてくれるものとなるか。乞うご期待。
(M)
第961回