Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

エレベーターの教訓

都の西北のキャンパスの、さらに西北の片隅に位置するその号館は、竣工時は学内で唯一エレベーターを備えた建物だったらしい。しかし、それから半世紀余の時が流れた今、創立125周年前後に建て替えられた周囲の号館と比べれば、古色蒼然としている感は否めない。

かつては最新鋭だったエレベーターもまたしかり、学生の間では「狭い、遅い」と不評である。そうした声を聞きつつも、私はいつも「ちょっと待てよ」と思っている。設備的限界は如何ともしがたい。しかし、「狭い、遅い」理由はそれだけではない。リュックを背負ったままの学生が3〜4名も乗り込めば、それだけでエレベーターは一杯になってしまう。本来一度に6〜7名乗れるところ3〜4名しか乗れなければ、全体の運行が遅れるのも当然だ。なんのことはない、「狭い、遅い」のは私たち自身のせいでもある。

しかし、嘆いてばかりもいられない。ここはひとつ、このエレベーターを「公共空間を生きるためのレッスン場」ととらえてみてはどうか。人間は誰しも自分の利益を最大化したいと願うものだ。ただし、その実現の場が公共空間となれば話は別である。公共空間では誰もが等しく利益を追及する権利があればこそ、全員が利益を最大化する(リュックを背負ったままエレベーターに乗る!)ことは叶わない。自分の利益を追求しつつ相手の利益も尊重する態度が求められる所以である。そのことを私たちは、「狭い、遅い」エレベーターの教訓とすべきではないのか。

今度エレベーターに乗るときは、その背中に背負ったリュック、ちょっと下ろしてみませんか?

(Y.G.)

第1043回

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