Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

「沼にはまる」

「沼にはまる」という表現を目にする。ネット用語で「夢中になって抜け出せない」状況を指す。私は今、万年筆のインク沼にはまっている。一度「インク沼」でググって見てほしい。こんなに多くの人が底なし沼にはまって喘(あえ)いでいる。

手紙というコミュニケーションツールが過去のものとなり、SNSやメールがその主流となっている。そこに「打つ」行為はあるが「書く」行為がなくなりつつある。テストや役所に出す書類は書かなくてはならないので、シャープペンシルやボールペンはしばらく健在だろうが、万年筆は数年前までは文筆家や一部の愛好家だけが使う、化石化しそうな筆記具であった。それがここ数年で復権をし、しかも沼扱いされるほど多種多様な万年筆とインクが出回っている。一度、伊東屋や丸善など大きな文房具屋さんの万年筆コーナーにお立ち寄りになるとよい。色が驚くほど豊富であり、さらに自分のオリジナルカラーを作ることができる。

インスタ映えを狙った写真や流行のスイーツなどの沼にはまることはわかりやすいが、古く高価、不便で手間のかかる道具である万年筆にいまさら人気が集まることは多少解せない。でも、ふと思うのである、「人間は、ある方向に進み過ぎたとき、その対極にあったものの価値を再認識するのではないか?」と。国際化が進んで、母国の良さを再認識したという話をよく耳にする。自然環境が失われて初めて、種の多様性の重要性を再認識するがそのときはもう遅い。

「多様な価値を再認識すること」、私たちは、行き過ぎる前にそのことに気づきたいものである。

(H.T.)

第1037回

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる