Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

表現への挑戦を描いた劇団森『ECHO』 未熟であっても「今」スタートを

2015年4月30日、早稲田キャンパス近くの南門通り商店街にグランドオープンした「早稲田小劇場どらま館」。これまで多くの団体がその舞台を彩ってきました。早稲田演劇の今をお伝えすべく、公演レビューをお届けします。

【早稲田演劇の今】早稲田小劇場どらま館レビューVol. 10

2018年5月19日(土)~21日(月)

公認サークル (劇団)森(しん) 2018年度新歓公演『ECHO』

撮影:雨宮真人(以下全て)

まず、あらすじを書くなら、このような文章になるでしょうか。

――――――
主人公は卒業を間近に控えた女子高生。ピアノのコンクールに向けて練習に励んでいたが、先生から表現が硬いという指摘を受け、壁にぶつかっていた。それを横目で見ている双子の妹は、姉のような才能がないためにピアノから離れ、嫉妬に苛(さいな)まれている。

一方、別の場所。窃盗団と思(おぼ)しき一団が次のターゲットに狙いを定めている。その重要なヒントはピアノコンクールの会場にあった。コンクール会場に違和感なく紛れ込むために主人公に接近する窃盗団。その横取りを狙うライバルの女盗賊は主人公の妹にひそかに接触、複雑に話が交錯していく。
――――――

演出で印象に残っているのは、とにかく暗転が少ない舞台だったということです。通常、場面転換には、暗転や明かりの変化を使います。しかし、今作ではほとんど明かりの変化はなく、役者の出入りだけで場面転換が行われます。もう一つ印象的だったのは、情報量が多いことです。場面転換をほぼしないために状況の理解が追い付かないということもありますが、セリフの量も多いように感じられました。役者は常に話し続け、物語をまくしたてていきます。こうした演出は、物語のスピード感を生み、ジェットコースターのようなストーリー進行による爽快感を生み出していました。

劇場に入って一番初めに目に飛び込むのは、壁にめり込んだピアノです。冒頭、このピアノの上に立っての独白シーンは、日常目にすることのない「ピアノの上に立つ」という行為の奇妙さも相まって、どこか心が落ち着かない気持ちにさせられました。この違和感がラストシーンにつながっていくわけですか、その異様な光景は非常にインパクトがあり、とても好感が持てました。

入り組んだ関係性も一つの挑戦です。一番フォーカスされていた主人公と妹のみならず、ピアノの先生と主人公をライバル視する女、窃盗団の内部でのいざこざ、窃盗団とライバルの対立…あふれるような情報量は、表現欲の現れであるように思われました。

この舞台は、ある若者たちの「表現」への挑戦、そのスタートです。

何かを表現したいと思うとき、作ったものを人に見せるのは恥ずかしいと感じることがあります。下手だと言われるかもしれない、嘲笑(あざわら)われるかもしれない。特に演劇というプラットホームは、自己の身体を使う表現です。そういう恐怖が悪い方向に働くと、自己否定感すら感じさせられてしまいます。そしてそこには大きなジレンマがあります。優れた表現をしたいと思ったら、たとえ未熟でも、「いま」表現をしていかなければいけないということです。その一歩を踏み出していかなければ、優れた表現に至ることは永遠にありません。

重要なのは、そのスタートラインにいることです。

「来たれ、表現欲に飢えた新入生」

そんなメッセージが強烈に伝わってきた気がします。

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