Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

気持ちを晴らしてくれた、中国人の「気兼ねなさ」

大学時代に忘れられない思い出がある。上海から北京まで24時間以上かけて、列車で旅行をしたことである。学生であった私は、一番安い列車を選んだ。それは「無席」、つまり立ち席のチケットであった。

外国人の私が切符を買うのは一苦労で、窓口では邪慳(じゃけん)に扱われ、怒鳴られ、切符一枚買うのに何故(なぜ)こんな思いをするのか、中国なんて来るのではなかったと、泣く思いで列車に乗り込んだ。車両では、人がひしめき合い、通路を通るのも一苦労だった。すると、赤ん坊の泣き声がうるさいと喧嘩(けんか)が始まった。何故もっと優しい気持ちを持てないのか、とますます苦々しい気持ちになった。

しばらくし、また大声が聞こえてくると、今度は、赤ん坊がうるさいと怒ったその人が、ずっと立っていては大変だ、座れ、と言っているようだった。先刻まで怒鳴っていた人が、今度は親切に席を譲っている。理解に苦しんだが、旅の中で気づいたことは、中国人は、いい意味でも悪い意味でも遠慮がない、ということだった。外国人の私にも気兼ねなく話しかけてきて、果物を分け、どこか空いたらちょっと座れ、しばらくしたら替われ、という。おかげで、暗い気持ちで始まった長旅が賑(にぎ)やかな楽しい旅行に変わった。北京に着く頃には、中国でもやっていけるかな、と感じたのを覚えている。

(K)
第1024回

 

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