「1+1はいくつか」の質問に「2」と答える学生が大半である。ではなぜ2なのかと再質問すると、今度は大半が戸惑って答えない。これは、もし10進法の世界を前提とするならば、2で正しいが、もしコンピュータの世界、すなわち2進法の世界(数字は0と1しかない世界)ならば、その答えは10になります。前提条件によって答えが異なる。これは現代の科学を学習することの常識です。にもかかわらず、某アメリカのハンバーガーチェーンはインドにビーフハンバーグの店を出店したところ、現地の人々から痛烈な批判を受け、結局昨年全面撤退を余儀なくされてしまいました。これはまさに前提条件無視の典型的な悲劇の事例です。
大学では多くの理論を学びます。その理論が理解しにくいとよく耳にしますが、それは前提条件を理解せずに理論そのものを理解しようとしていることの結果です。理論を理解するには、まず前提条件を理解したうえで、理論そのものを理解することに努めるべきです。現在のグローバル化した社会において相互対話の場での理解力、自己表現力、説得力が特に重視されるが、その場合にも前提条件の把握や表明が特に重要です。相手の対話・主張の前提条件が理解できれば、その主張の趣旨の理解は容易です。
これをいかに習得すべきか。それは1にも2にも対話による訓練でしょう。しかし、対話するのも題材が無ければ対話などできません。題材の収集には読書が最も大事です。最近学生の読書量が大きく減少しているとのことですが、早稲田ではそのようなことがないと願っております。
(K・H)
第1023回