ここ数年、アジア各国の学生たちと触れ合う機会が多い。その国を代表するような優秀な学生たちと接するので当然といえば当然ながら、彼らの高いモチベーションとコミュニケーション力に驚かされることもしばしばだ。彼らと世界の中で競争して行かなければならない日本の同世代(すなわち自分の子供の世代でもある)は大変だなあ、と思ってしまう。
今、優秀なアジアの学生を求めて、先進各国の大学間で激しいリクルート競争が繰り広げられており、彼らは各国のプログラムの中から、自分に合った良い条件のところを選んで積極的に留学先を決めている。翻ってわが国では、学生の内向き志向や留学へのモチベーションの低さが度々指摘されている。
しかしながら学生たちやわが子を見ていると、指摘されているような消極性だけを問題にすべきではない気がしている。つまり、この世代特有の価値観で”冷静に”判断した結果、彼らはわれわれバブル世代のイケイケドンドンな価値観とは異なる選択をしただけではないか、と思えて仕方がないのである。
そう、われわれの若かりし頃と比較して冷静に自分を客観視できる彼らは、わが価値観を押し付けようとする親世代に対して一枚上手の”大人”の対応をしつつも、自分たちの価値観・流儀を守って世界と付き合おうとしているような気がするのである。『なかなかやるなあ』と思えてくる。
親世代と子供世代の価値観は常にぶつかるものだが、どちらの価値観が良いのかについては歴史の判断を待つしかない。おそらく次世代の彼らの価値観はより将来にフィットしたものであろうとは思うが、その判断がどのように親を超えてくるのかを見守るのが老後の楽しみだったりしている。
(YN)
第1005回