
小野梓の演説資料「祝東京専門学校之開校」(古典籍総合データベースより)

「祝東京専門学校之開校」にある小野梓(後)の肖像写真
東京専門学校(※早稲田大学の前身)創設の功労者・小野梓は、今も小野梓記念賞、小野梓記念奨学金、小野記念講堂等にその名を残し、日々、早大生とともにある。その心血を注いだ業績は『小野梓全集』全五巻(早稲田大学出版部)等で読むことができる。創立記念日を機に小野梓の開校演説資料を改めて読んでみる。「祝東京専門学校之開校」の画像は早稲田大学図書館のWebサイト「古典籍総合データベース」で閲覧でき、「東京専門学校」(『東洋論策』)は、『小野梓全集』第四巻に収められている(46-53頁)。
小野は、「国民精神の独立」と「学問の独立」について、その国を独立させるにはその民を独立させなければならず、その民を独立させようとするなら、その精神を独立させなければならず、その精神を独立させるには「必らず先づ其学問を独立せしめざるを得ず」と説き(47頁)、「我邦学問の独立」と邦語による講義の重要性を指摘するとともに、「英学の一科を設け、我学生をして大に原書を自読する力を養はしめんと欲す」と述べる(51頁)。小野はこの演説で、自治の精神を涵養(かんよう)し、活発な気象を発揚することが必要であり、これを抑圧すべきではないと力説している(51、52頁)。「学問の独立」により培った精神をのびのびと発揚させようという主張である。
小野は「東京専門学校をして政党以外に在て独立せしめんと欲する」(52頁)と言明し、本校の目的は「斯の学生をして速に真正の学力を得せしめ、早く之を実際に応用せしめんと欲するに在るのみ」(53頁)と述べているが、これは「学問の独立」の別の面に関連している。開校演説資料は、本学創設に向けての、小野のあふれるばかりの情熱を示しており、その精神は今も早稲田大学を照らし続けている。
学生部長 政治経済学術院教授 齊藤 泰治(さいとう・たいじ)