Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

情報発信の陥穽(かんせい)

東ヨーロッパの「ある国」の田舎町を舞台に、女子高校生とその弟の経験を描いた映画『Mellow mud(英題)』を見た。イギリスのEU離脱をめぐる議論では、特にポーランド移民に対する反発が話題になったが、現実のこの「ある国」からも、多くの人々が西ヨーロッパの国々へ、一時的あるいは長期的に働きに行っている。

さて、映画の内容であるが(日本でこの映画を見る機会はほぼないと思われるが、以下、ネタバレを含むのでご注意ください)、この女子高校生と弟の母親も、ロンドンに出稼ぎに行ってしまっていた。父親は数年前に他界、一緒に暮らしていた祖母も急死してしまって、とうとう二人きりになった姉弟が、連絡のつかない母親になんとか戻ってほしいと思っていたところ、姉が、ロンドン行き往復航空券が賞品となっていた英語コンクールで、見事優秀賞を獲得する。こうして、姉は無事に母親に会うことができた。だが、母親には乳児までいる新しい家族があった。母親は姉に、一緒に帰ることはできないと告げる。

この上映には主演女優が臨席していて、上映後に観客の前でインタビューに答えてくれた。彼女は役作りの際に、同じ経験をした現実の子どもたちを参考にしたという。どちらが悲劇的かは判断がつかないが、その子どもたちは、なんと、母親が新しい家族を作ったことを母親のFacebookを通じて知ったのであった。映画の中身の衝撃はここでは書ききれなかったが、それよりも家族や友人、他人のことを省みない想像力の欠如と、あまりにも手軽な情報発信の手段が身近にある今の社会の怖さについて考えこまずにはいられなかった。

(K)

第1003回

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