1963年、ビートルズが「プリーズ・プリーズ・ミー」で初のヒットチャートNo.1になった頃、ジョン・レノンがあるインタビューで「僕たちなんかあと3カ月ももてばラッキーだと思う」と言っている映像を見たことがある。「売れるなんて一時的なことさ」というシニカルなコメントと受け取れなくもないが、ジョンの顔付きはとても真面目であまり自信のないような様子が印象的だった。
その後のビートルズの伝説的な活躍については、ここで改めて述べるまでもないだろう。あの頃のビートルズのメンバーは全員20代前半、ジョン・レノンも22歳か23歳だったはずだ。
「自分が何者だか分からない」「自分が世の中で何をやって行けるのか分からない」というのは10代から20代にかけて多くの人が抱く気持ちだろう。日本ならば高校時代、大学時代、そして社会に出て行く頃だ。インタビューの映像を見ると、あのジョン・レノンもあの頃は自分たちが何者なのか分かっていなかったんだと思う。
20代で自分が何者か分かれば、安心だ。もう迷わなくていい、右往左往しなくていい。でもあの迷い、暗中模索がその後のビートルズを造っていった大きなエネルギーになったのだと思う。迷いにこそエネルギーがある。
(AF)
第1002回