Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

新訳『ゴドーを待ちながら』リーディング公演 少年役・小川紗良が感じたベケットの魅力

2017年6月6日(火)、早稲田小劇場どらま館にて、岡室美奈子文学学術院教授による新訳戯曲を、早稲田小劇場どらま館芸術監督でもある宮沢章夫文学学術院教授が演出し、オーディションで選出された出演者と共に創作した、「新訳『ゴドーを待ちながら』リーディング ワーク・イン・プログレス(※)公演」が開催されました。公演後には両教授と出演者、観客によるディスカッションの場が設けられ、翻訳や演出などをめぐり白熱した議論が行われました。本公演は、2017年11月に行われる予定です。

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この公演に出演した文化構想学部在学中の小川紗良さんから、レポートが届きました。映画監督としても活躍している小川さんは、不条理演劇の傑作とされるサミュエル・ベケット作の戯曲を演じて何を思い、何を受け取ったのでしょうか。

※ワーク・イン・プログレス…創作途中の作品を公開し、観客の意見なども参考にしながら作り上げていく手法のこと。

2017年6月6日(火)

新訳『ゴドーを待ちながら』リーディング ワーク・イン・プログレス公演

文化構想学部 3年 小川 紗良(おがわ・さら)

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少年役を熱演する小川さん

新訳『ゴドーを待ちながら』リーディング ワーク・イン・プログレス公演は、私の20歳最後の取り組みとなりました。ぎりぎり20歳のうちに、この演劇史に残る問題作と出会えたことを心からうれしく思います。また、早稲田大学在学中に岡室美奈子先生・宮沢章夫先生の手掛ける作品に関われたことも、とても光栄に思います。

私だけでなく、現代社会・現代演劇にとっても、このタイミングでゴドーの新訳が成され、公演が行われたことには大きな意味があると考えています。あらゆる物事が加速し、簡略化し、無駄を排除する方向に動いている現代で、映画や演劇も徐々にハイテンポで分かりやすいものが増えているように思います。『ゴドーを待ちながら』はその流れの対極にあるのではないでしょうか。いかに無駄を作り、退屈を積み重ね、その中に真理を込めるか。その姿勢には、社会や演劇に対するベケットの強い疑いが感じられます。そしてその疑いが、2017年の現代においても面白いほど当てはまると、私は今回の公演を通して感じました。私自身、映画を作るときに「いかに観客を飽きさせないか」ということを考え、無駄を排除しようとしてしまいがちです。従って、退屈を恐れずむしろ面白みに変えてしまうベケットの戯曲にはハッとさせられました。

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稽古着のような衣装も含め、ワーク・イン・プログレスならではの表現が

宮沢先生が演出時におっしゃっていた「不毛な会話の中にこそ、さまざまなことが込められている」という言葉も印象に残っています。宮沢先生の演出は一見突飛(とっぴ)なおふざけのようで、しかし筋が通っていました。誰よりもふざけることが上手な宮沢先生の演出を受けるうちに、私もいくらか肩の力が抜け、「退屈を楽しもう」という気持ちが芽生えました。

また、岡室先生の新訳も素晴らしいものでした。原作の質を保ちつつ、きちんと現代の観客に伝わる言い回しで訳されており、そのバランスの良さに感動しました。特に、「厄日かよ!」というせりふが、まるでお笑いコンビ「さまぁ〜ず」の三村(マサカズ)さんのようで気に入っています。私の演じた少年に関しては、今まで成されていた翻訳とだいぶ違うニュアンスで描かれていました。へりくだった態度の中にも恐れや生意気さが垣間見える様子がかわいらしく、繰り返される言葉をどう演じ分けるか考えるのが楽しかったです。

演出を手掛けた宮沢章夫文学学術院教授

演出を手掛けた宮沢章夫文学学術院教授

稽古を重ねるごとに私の中で面白みを増していった新訳『ゴドーを待ちながら』ですが、最も感動的な瞬間はやはり本番でした。稽古で何度も読んだせりふも、舞台上で観客を前にした途端に全く違う意味を持ったり、予想外の反応があったりと、とにかく本番での発見がものすごく多い作品でした。本番でこそ戯曲が生き生きとする様子を目の当たりにし、ベケットの戯曲が残り続ける訳を身をもって知りました。20歳の終わりに、新訳『ゴドーを待ちながら』を通して思い知ったことの数々は、今後長年にわたって私の中に残っていくだろうと予感しています。

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ビデオカメラを使った斬新な演出も

撮影:石垣星児

【どらま館での注目イベント 】

オープンキャンパス@Waseda

受験生が訪れるオープンキャンパスに合わせて、早稲田小劇場どらま館を無料開放します。第43回東京建築賞優秀賞を受賞したどらま館を自由に見学できる貴重な機会ですので、ぜひお越しください。各日、演劇サークル「(劇団)森」による公開稽古も実施予定です。

日時:2017年8月5日(土)・6日(日)11:00~17:00
予約:不要
お問い合わせ:早稲田大学学生部学生生活課 03-3202-0706

【ご支援のお願い 】

早稲田大学は「早稲田小劇場どらま館」を早稲田演劇振興の中核的拠点と位置づけ、早稲田演劇の伝統を継承・発展させ、優れた演劇文化を発信し、教育 を通して、次代を担う演劇人を多数育成することを目指しています。「早稲田小劇場どらま館」を核に、早稲田の新たなコミュニティが形成されることを願い、 これを実現するため、多くの皆さまのご支援を得るべく、「WASEDAサポーターズ倶楽部」を通じた募金「早稲田小劇場ネクスト・ジェネレーション募金」を募集中です。

ご寄付は、学生のため、演劇教育に資する目的のために使用いたします。早稲田演劇振興へのお力添えをいただける皆さまの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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