よく「AI(人口知能)」が話題になる。その開発スピードたるや日進月歩の勢いで、このままではあと30年もしないうちに我々人類の知能に追いつき、やがてAIが自分を超えるAIを開発できるようになり、ついに人類がAIによって支配される日が訪れる――どうにもこうにもSFめいた話ではあるが、門外漢の私の理解によればこれがいわゆる「2045年問題」と呼ばれるものらしい。人類は、人類が作り出したものによって、やがて支配される。何とも滑稽で皮肉なことではないか。
さて、やがて諸君もAIに支配されてしまうのだろうか。この問いに自信を持って「No」と答える者には、もう一つ問いたい。「現在の諸君の日常はどうなっている?」
夜中に来ていたかも知れないメッセージを確認するために、洗面よりも朝食よりも前に枕元のスマホを手に取り、SNSの新規投稿や自分の投稿についたイイネの数が気になって僅か90分(私が教壇に立つ高等学院ではたったの50分!)の授業中も辛抱できずにノートの影でチェックし、充電用のコンセントがあるかどうかでこれから仲間と行く喫茶店を選び、仲間との昼食の時間でさえ片手にお箸で片手にスマホ…。科目登録の時にはスマホいじりをやりやすい授業かどうかが判断基準になる学生もいると聞く。
このように、日常の行動の一部はスマホに縛られているという者もいよう。換言すれば、そういった諸君はすでにスマホに支配されているということになる。人類とはスマホですら容易に支配することのできる存在なのか。それならば、AIはいとも簡単に我々を支配することだろう。人類は、人類が作り出したものによって、既に支配されている。何とも滑稽で皮肉なことではないか。
(YY)
第998回