Waseda Weekly早稲田ウィークリー

コラム

親の背中

日本語学習者に対する作文力の調査のため、ドイツに行ってきた。調査協力者の学生Aさんの作文がとても印象的だった。作文のテーマは「住みやすい街の条件」。

Aさんが住みやすい街の条件として挙げていたのは、次の2つ。1つ目は(国民の)おおらかさ、2つ目は富の均衡性。2つ目の条件を議論する段落で「格差是正」の問題を指摘しており、その中にこんな記述があった。

世界の国には豊富な人少ないがいますが、貧乏な人の数は非常に多いです。この人(=貧乏な人)は頻繁に家賃や食べ物や子供の教育などを払えません。もし、豊富な人は貧乏な人にお金をあげたら、機会の平等があります。

執筆意図をドイツ語で改めて聞いてみた。Aさんが本当に言いたかったことは、「社会の制度として富の再分配ができる仕組みが必要だ。例えば、富裕層からたくさんの税金をとって、貧困層に分配するといった制度が望ましい。こうすることで、機会均等が実現できる」ということが言いたかったそうだ。現地の先生も言っていたが、ドイツという国は(良い意味の)社会主義がうまく機能しているそうで、大学生が書くちょっとした作文においてさえ、こういうことが言及されていることに、少し驚いた。

そこで、「どうして自分の富を他者に分配したほうが良いと考えるようになったのですか」と聞いてみた。その答えはとてもシンプルなものだった。「自分の親がいつもそうしてたから」「自分の親が貧しい人たちに自分のものを分け与えるところをいつも見てきたから」だと。

親の背中をみて、育つというのは、万国共通だなと改めて感じた。

(J)

第997回

 

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