東京都内にある有名大学への入学者を分析すると、直近30年間で「首都圏の高校出身者」の割合が急増しているという。早稲田大学でも同じような傾向がみられ、「地方の高校出身者」学生の割合及び総数のいずれもが急減している。
20年ほど前の「地方の高校出身者」である私は、高校を卒業するまで特段の問題意識を持つこともなく日本海側の漁村集落で生活したが、そんな中で自然を相手にする生業(なりわい)である漁業、農業、林業から生活の知恵(少しオーバー?)を当たり前のように学んできたようだ。
そうしたことは、最近の学生と接し、対比することで強く感じる。例えば、研究室に入ってくる学生と過疎化と耕作放棄地について話し合っても、農業従事者の生活スタイルをあまりにも理解しておらず、都市での生活と地方での農業・農地管理を連続して考えることができない。ゼミで野外調査に行く際に荷物をロープで縛ろうとしても、縛り方を知らない(いわゆる固結びになってしまう)。もちろん、地方で少子高齢化が深刻化することで、農山漁村が今後どうなっていくかを「肌感覚」としてイメージすることが多くの学生にとって極めて難しいのである。
昨今、地方創生や農業などの第1次産業の再生といった掛け声を耳にするが、その中心となるべき第1次産業の従事者を育成することは十分なのか。そして人材育成のために東京都内の大学が何をすべきなのか。実は重く大きな宿題が課せられていると認識している次第である。
(H)
第969回