異なる文化へのリスペクトが大切
文化構想学部 5年 林 美彩(はやし・みさ)

日・UAE文化交流団体の友人と(写真中央が筆者)
私は、アラブ首長国連邦(UAE)・アラブ首長国連邦大学に約1年間交換留学をしていました。大学はアブダビ首長国のアル・アインという、砂漠に囲まれた都市にありました。…と書くと未開の地のようにイメージされるかもしれませんが、モールもレストランも映画館もある、発展した都市です。

UAE大学の女子キャンパス
私がUAEへの留学を決めた一番のきっかけは高校3年生にさかのぼります。2015年1月、イスラム過激派組織による邦人殺害事件や同年11月のフランス・パリでの同時多発テロ。なぜイスラム過激派が生まれたのか、その背景を知りたいと思い、学部で中東の地域研究をする道を選びました。その学びの中で、実際に行ってみないと分からないことがあると思い、交換留学先として中東地域に出願しました。

都市の周りは砂漠です。雨が降ることはほとんどありませんが、風が強いと街も埃(ほこり)っぽくなります
日本や西洋諸国と比べると、確かに多くの「分かりやすい違い」はありました。現地の友人は、例外なくイスラム教スンニ派の厳格な教徒。国も政教一致の体制です。国を挙げて1カ月のラマダン(断食)があり、豚肉やアルコールは専門店以外では流通せず、1日5回のお祈りのためにprayer room(お祈り部屋)が施設の至る所に。外国人とはいえ、街中では女性が映らないように写真を撮る必要がありましたし、寮や家で撮った「隠してない」姿の女性の友人との写真はSNSに載せないのがルール、スカート丈にも配慮が必要などなど。このような点は誰にとっても分かりやすい「異」かもしれません。
しかし、私は帰国後留学体験について話すとき、上記の内容を「こんなに違ってこんなに大変だった!」というスタンスで伝えることに抵抗があります。文化もお国柄も確かに異なりますが、多くの友人をはじめとする私が出会ったUAEの人々は、私たちと同じような要素をたくさん持ち合わせた、とびっきり温かい人々でした。「異」の部分は目立つ上にキャッチーですが、これらの違いは実際に生活すれば1カ月ほどで案外慣れるものです。

大学で所属していた和太鼓チームのコンサート。人生初のスタンディングオベーションを受けて最高でした
「異」とぶつかる中で、自分たちの「当たり前」もまた誰かにとって「異」であること、絶対的な“普通”なんてどこにもないと気付くことができました。これは日本にいても同じことだと思いますが、一見「異」だと思うこともリスペクトの念を持って受け入れてみることが大切だと思います。
このように、行ってみないと分からないことが本当に多かったので、「実際に行ってみること」の価値は本当にあると思います。どこの地域に行くか迷っている方、好奇心に素直に挑戦してみてください!
アラブ首長国連邦の食事情

新鮮な羊は臭みが全くありません。これを食べるときは手で食べます
自炊していたので寮では日本食を作って食べていましたが、UAEならではと言えば、羊や鶏をご飯とスパイスで炊いたものが絶品。冬の夜は砂漠でのバーベキューが恒例です(野生のラクダがやってきますが)。
アラブ首長国連邦はこんなところ
アラブ首長国連邦(UAE)はアラビア半島にある国で、ペルシャ湾沿いに発展した7 つの首長国からなる連邦国家。公用語はアラビア語。宗教はイスラム教が国教。砂漠気候のため、年間を通じて雨はほとんど降らず、海岸線が長いことから気温の日較差は小さい。11~3月は冬季で、平均気温も20℃前後と過ごしやすいが、6~9月の夏季には気温が50℃近くまで上昇し、雨が降らないにもかかわらず、海岸に近いため湿度が80%前後と非常に高くなる。UAEの首長国の一つであるドバイの平均気温は23.4℃(1月)、42.3℃(7月)で、年降水量は60mm。近年では政治のアブダビ、経済のドバイとも言われており、ドバイには世界一の高層ビルであるブルジュ・ハリファなどもあり観光地としても知られている。日本から直行便で約11時間。