Waseda Weekly早稲田ウィークリー

キャリアコンパス

アナウンサー 福澤朗 人と同じことをするのを恥ずかしいと思う羞恥心を持って欲しい

■ふくざわ・あきら

88年第一文学部卒。同年、日本テレビ入社。90年より「全日本プロレス中継」を担当。「ジャストミート!」のコールが若者の人気を集めた。現在、「ズームイン!!サタデー」、「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」などで活躍中。

入学する前の早稲田には、一言で言えば「野武士」、精神的な荒くれ者が集まっているようなイメージがありましたね。

それが入学してから学校そのものに裏切られた思いでした。九十分間のくり返しがいやでね。周りには、激しい受験戦争をクリアして、その四年間はのんびりやろうぜという暗黙の了解があるみたいで、生命力の弱い空間というかテンションが低いというか。僕なんかは推薦で入っちゃったもんだからおもいっきりバックスイングとって入学するわけですよ。なのにそのバックスイングにふさわしい球を投げてくれない。

そこでありあまるパワーを演劇に注ぎ込みました。Aさんに振られた腹いせにBさんとわざと仲良くするようなもんです。僕が一番影響を受けたのが研究生として劇団「円」にいたころです。社会人の厳しさやプロのテンションの高さに触れましたね。稽古場で演出家と俳優が殴り合いのけんかをするんです、演出論をめぐって。それがプロなんだと感じました。みなさんの年齢がすごく多感な時期だけに、中途半端な友達を作るよりは血圧の高い仲間と過ごしている時間を大切にしてほしいです。

結局、劇団員選考の最終段階で無残にもカット・オフされてしまったんですね。でも、運命とか挫折とかってのが後々考えてみるとどう転ぶか分からない。ターニングポイントで失敗したなって思っても五年後、十年後振り返ってみると、あのターニングポイントがあったから今こうしてやってられるんだなって思えることがいくつでもあると思うんですよ。

僕は演劇をやっている間に二年留年してしまったんですが、当初のマスコミ志望に戻って一番早い、とりわけ早い時期の日本テレビのアナウンサー試験を五月下旬に受けたわけなんです。ですから、その三カ月くらいで人生が変わりましたね。卒業見込をとるため新入生よりも激しいスケジュールでしたよ。二年の英語なんかも残ってましたから。それに体育も。

新入生の皆さんとは十五才も違うわけですから、物事の考え方とか価値観とか相当違うんじゃないかと思うんですけど、やっぱり根底に流れる部分は近いでしょう。早稲田に入ってくる連中ってのは多かれ少なかれ立身出世を夢見ているはずだと思う。自分の名前を世に出すとかじゃなくて、人とは違う仕事に就きたいとかね。並みに生きたいって気持ちを持ってる人はいないと思うんですよね。だけど、大学四年間ってのは激しい受験戦争で疲れた気持ちと体を休めるモラトリアムになってしまう。そこで易きに流れるとだんだん下降線をたどってしまうんですね。

学生時代は自分と同じ境遇に身を置かれている者が他にいますよね、試験だ、レポートだって言っても。でも、社会人になると自分しかいないんです。同じ境遇で慰めあってちゃ進歩がないんです。現状維持、つまり今のままでいいやってのは下降線です。人と同じことをするのを恥ずかしいと思う羞恥心を持って欲しい。

僕は確かに二年間留年して社会人になったけれど、半端に四年間過ごしてきた学生には負ける気がしないですね。これは早稲田の人にしか分かってもらえないと思う。僕は早稲田で「自分でやんなきゃだめなんだ」ってことを学んだんです。

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