Waseda Weekly早稲田ウィークリー

キャリアコンパス

アナから弁護士になってさらに早大院修了 菊間千乃、学び続けた早稲田愛

2019年度入学記念号

一生懸命やることで、次の可能性が開ける

弁護士 菊間 千乃(きくま・ゆきの)

フジテレビの人気アナウンサーとして華々しい活躍を続けながら、弁護士へと転身を果たした菊間千乃さん。誰もが知る狭き門を二つもくぐり抜けることができた要因はどこにあるのだろうか? アナウンサーになるために過ごした学部生時代の4年間。弁護士になるために決断したこと。さらに、今春まで早稲田大学大学院で改めて学びを深めた理由…そこにはずっと変わらない「信念」ともいうべきものがあった。

なりたい自分に近づくための「思いの強さ」と「準備力」

「私、アナウンサーになることよりも前に、早稲田大学に行くと決めていたんです。小学3年生のとき、早稲田と同志社のラグビーの試合を見たのがきっかけでした。それからずっと早稲田のファン。愛校心は入学前からありましたよ」

9歳にして「第一志望、早稲田大学」を決めた菊間さん。その後、小学6年生でアナウンサーという職業への夢を持ったことで、その想いはさらに強まることになった。

「当時、テレビで活躍していた筑紫哲也さん、久米宏さん、田原総一朗さん、タモリさんと、名アナウンサー、名司会者は皆さん早稲田出身。私がなりたい自分に近づくにはここしかない! と、ますます早稲田愛が強まって…報道志望だったので法律を学びたくて法学部を目指しました」

念願通り、早稲田大学法学部に合格した菊間さんは、4年後、またも第一志望だったフジテレビのアナウンサー試験を突破した。なぜ、夢をかなえることができたのだろうか?

奥島孝康教授のゼミの同期と法学部の卒業式で

「それは、思いが強いのと、準備を怠らなかったからですかね。就職活動の時期になって動き始めてもダメだったと思います。私は子どもの頃からずっとアナウンサーになりたいという想いでテレビを見ていたので、アナウンサーには何が求められるかということを自分なりにいつも考えていました。アナウンサーは人間力が試される仕事。出会いの瞬間が勝負です。『こいつ嫌だな』と思われたらチャンネルを変えられてしまうし、インタビューでも話を引き出せません。だからアルバイトも、自分とかぶらない属性の人がいるところで、人間力を鍛えることができるかという観点で選んでいましたね」

アルバイト以外でも菊間さんの準備は徹底していた。それがアナウンサー試験までの1年間、毎日つづり続けた「菊間流ネタ帳」だった。

「当時アナウンサー試験には、与えられたテーマに沿って1分間で話をするフリートーク試験が必ずありました。そこで私は、どんなテーマを出されても1分間でテッパンの話ができるよう、ありとあらゆるものについて自分の言葉でフリートークネタを書きためていきました。試験を受けたのは約2,000人。その中でフリートークの準備をここまでやったのは、きっと私だけだったと思います。試験直前はみんな鏡を見ているのに、私だけノートを見ていましたから。準備度合いが違うから試験が進むにつれ、『この子、次はどんな話をするんだろう?』と周囲が期待して、大した話をしていなくてもみんなが笑ってくれる。試験官は『菊間さんがしゃべるとみんなが注目する』と誤解してくれて、それで受かったようなものです」

(左)入社2年目に「ワールドカップスキー」のため初の海外取材へ
(右)入社8年目『こたえてちょーだい!』という朝の帯番組のスタジオで。フジテレビアナウンサーのカレンダー用に撮影

憧れ続けたフジテレビのアナウンサーという仕事は、想像以上に楽しい日々だったと振り返る菊間さん。にもかかわらず、入社から12年後の2007年、次の夢=弁護士になるために退社という道を選択した。

「実はフジテレビに入るときから、10年後に司法試験を受けると決めていました。私が入社した頃は、30歳を過ぎてテレビに出ている女性アナウンサーはほぼゼロ。皆さん20代のうちに結婚するかフリーになって辞めていました。でも私はずっとなりたかった仕事を5、6年で終わらせたくなかった。『どうすればアナウンサー寿命を伸ばせるか』を考えました。それで、若手が持っていないものを身に付ければいいと導きだしたのが、『弁護士資格を持つアナウンサー』というポジションでした」

心掛けているのは弁護士としていかに成長するか

当初は「法律の知識を生かしたアナウンサーになる」という青写真を描いていた菊間さん。だが、実際に司法試験の勉強を始めると、その思いは少しずつ変わっていくことになった。

「私が通ったロースクールは講師陣の8割が現役の弁護士で、メディアで話題になった事件を扱った先生もたくさんいらっしゃいました。やはり生の話は迫力があり、先生方の姿がとても格好良かったんです。条文は覚えるためにあるのではなく、人を守るため、時には責めるための武器として使うもの。でも、司法試験に受かってこれまでの仕事に戻ったら、ただの知識で終わってしまう。せっかく資格を取るならば、私も実務で生かしたいと思いました」

アナウンサー業務の合間にロースクールに通い、睡眠は1日2~3時間という生活を3年間。それでも司法試験に受かるにはまだまだ時間が足りないと、ついに退社を決意。それから2年後、2度目の司法試験で見事合格し、菊間さんは2012年から弁護士として二つ目のキャリアをスタートさせた。

「弁護士になるまでは、法曹はドライな世界だと思っていましたが、実際には人と人との話し合いの中で解決することが多く、想像以上にウェットな世界でした。あらためて、弁護士もアナウンサーとは別な意味で人間性全体が試される仕事だなと日々感じています」

弁護士として、会計士や税理士が集まるイベントでパネルディスカッションに登壇

2018年には株式会社コーセーの社外取締役に就任するなど、弁護士として幅広いフィールドで活躍する菊間さん。忙しい日々にもかかわらず、2018年春に早稲田大学大学院法学研究科「知的財産法LL.M.コース」へ入学。1年間、再び早稲田に通う日々を経験した。

「実は今、古巣であるフジテレビの顧問も務めていて、その関連で知的財産(知財)、中でも著作権に関する相談をいただくことがあるのですが、ロースクールでは知財について深く学ぶ機会がありませんでした。この分野を極めたいと思っても、知財はニッチな世界なので、ただ待っていても仕事はなかなか来ません。実務の中で力を付けるのは難しい。きちんと体系立てて学び直したいと思っていたところ、早稲田にLL.M.コースが新設されました。関東では他に知財専門のロースクールはありませんし、教壇に立たれる先生方は知財の世界では日本最高峰の方ばかり。元裁判官の方も多く、弁護士として裁判官の考え方を直接聞けるのも勉強になりましたし、本当にぜいたくで楽しい1年間でした。最終学歴がまた『早稲田』と書けるようになったこともうれしいです(笑)」

「知的財産法LL.M.コース」の模擬裁判では裁判長を担当(前列左から5人目が菊間さん)

常に次に立つべきフィールドの青写真を描き、必要なものは何かを考え、準備を怠らない菊間さん。今、将来に向けて準備していること、心掛けていることは何だろうか?

「計画立ててつかんだ夢もありますが、実は自分でも想定していなかった道に進むことも多いんです。コーセーの社外取締役にしても全く想定外。周囲の方が私を引っ張ってくださっています。声を掛けていただいたことを一生懸命やることで、また次の可能性が広がっていくのではないでしょうか。弁護士としてもっともっと成長していきたい、という思いだけは常に持っていますね」

「知的財産法LL.M.コース」の謝恩会で先生方にフィギュアをプレゼント。左は特許法が専門の高林龍教授、右は著作権法が専門の上野達弘教授

10年後の自分が楽しみと語る未来志向の菊間さんから、前途広がる現役早大生に向けてメッセージをもらった。

「自分にしかできない何かを見つける4年間であってほしいと思います。私みたいに『こうなりたい』というものが決まっているなら、そこに向けて準備をした方がいいですし、オンリーワンの自分になるためには何が必要かを模索してほしいです。早稲田は受け身の学生には何も与えてくれないかもしれません。でも自ら求めに来た人にはたくさんのものを与えてくれる場所だと思います。臆することなく、いろいろなことに挑戦をする行動力のある学生生活を送ってください」

2019年3月25日の修了式にて。左:高林龍教授、上野達弘教授と 右:大隈重信像前で

取材・文=オグマナオト(2002年、第二文学部卒)
撮影=石垣星児

【プロフィール】

1972年東京都出身。小学生の頃より早稲田大学入学とフジテレビアナウンサーを目指す。早稲田大学法学部卒業後、1995年株式会社フジテレビジョンに入社。バラエティーや情報・スポーツ番組など数多く担当する。2007年、司法試験に専念するために退社。2009年3月、大宮法科大学院大学修了。2010年の司法試験に合格し、現在は弁護士法人松尾綜合法律事務所にて紛争解決や企業法務、コーポレートガバナンスの分野を中心に、弁護士として幅広く活躍。2018年、早稲田大学大学院法学研究科「知的財産法LL.M.コース」へ入学、2019年3月修了。

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