Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

【数字から考える未来】真のグローバル企業の数

最新の経済学で、世界はグローバル化しておらず、フラット化もしていないことが分かってきました。

入山准教授P75

商学学術院  准教授 入山 章栄(いりやま・あきえ)

1972年東京生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了後、三菱総合研究所を経て、03年ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学し、08年Ph.D.を取得。専門は経営戦略論。

米インディアナ大学のアラン・ラグマン教授とカナダ・カルガリー大学のアレン・ヴェルビク教授が2004年に発表した論文には、世界の主要多国籍企業365社のうち「真のグローバル企業」は9社しかないと書かれている。そのうち日本企業は2社。

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皆さんは「グローバル」という言葉からどのようなイメージを持ちますか。日本語では“地球全体の”“世界的な”となりますが、人によってその基準はまちまちでしょう。“グローバル企業”と呼ばれる企業の定義もまた曖昧です。米インディアナ大学の経営学者アラン・ラグマン教授らが2004年に発表した研究では、世界を“北米地域”“欧州地域”“アジア太平洋地域”の3つに分け、「本社のある地域の売上が全体の半分以下で、かつ他の2地域がそれぞれ2割以上」という売上構成の企業――すなわち世界で万遍なく売り上げている企業を「真のグローバル企業」と定義しました。すると、フォーチュン・グローバル500にランクされるような誰もが知っている欧米や日本の多国籍企業でも、全体でわずか9社しか「真のグローバル企業」に当てはまらなかったのです。海外での売上高が多くても、実際の売上構成比は本社のある地域がほとんどである場合が、圧倒的に多いのです。これは2001年のデータを基に算出されていますが、現在でもこの傾向は変わらないでしょう。

 

入山先生

 

このことから分かるのは「世界は思ったほどグローバル化していない」ということ。ただしこれも“グローバル化の定義”の一つでしかありません。ビジネスの世界では「活性化」「ビジネスモデル」など、定義が曖昧な言葉が他にもたくさんあります。

経営学・経済学ではグローバルな状態を「国と国との垣根がなくなる」のではなく、むしろ「国ごとの違いが浮き立つ」と考えた方がしっくりくる研究成果が多くあります。例えば“グラビティモデル”という考え方があります。二国間の貿易に最も影響するのは距離。距離が離れるほど貿易量は減り、距離と貿易は反比例の関係にあるというものです。ブリティッシュ・コロンビア大学の経済学者キース・ヘッド教授らは、距離がどのくらい貿易量に影響を与えるかについての過去の研究成果をまとめました。すると、情報が世界中を行き交い輸送コストも大幅に削減した現代の方が、貿易に与える距離のマイナスファクターは小さくなっているように思えますが、彼のまとめた結果によると、実は最近の方がマイナスのファクターが逆に大きくなっているのです。これは国際経済学の謎の一つといえます。

「グローバル」とは曖昧な言葉で、実は分からないことが多いのです。皆さんがこのような言葉に惑わされないためには、うわべの意味ではなく言葉の本質を見極めることが重要だと私は考えています。大学はこれができる数少ない場。多くの人と意見を交換し、教授などから学術的な定義も学んで、自分の考えを見つけ出してください。

(『新鐘』No.82掲載記事より)

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