Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

神田川の歴史をひもとけば、都市型災害を救うヒントが見えてくる<後編>

都市河川と人々の生活、その変遷と自然災害<小石川後楽園~柳橋>

神田川は昔から人々と向き合い続けてきた

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教育・総合科学学術院 教授 久保 純子(くぼ・すみこ)

1959年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、東京都立大学大学院理学研究科修了、博士(理学)。中央学院大学助教授を経て2001年4月より早稲田大学に勤務。地理学(自然地理学、地形学)専攻。

久保純子ゼミによるフィールドワーク 神田川の移り変わりをたどる

「人間の生活に関わる自然環境」をテーマに、自然地理学を研究する久保純子教授ゼミのフィールドワークは、都市型水害のリスクと都市河川の在り方を、神田川の歴史にヒントを見つけるもの。後編は小石川後楽園から隅田川との合流地点まで歩く。

>> 前編(仲之橋~飯田橋)はこちら

5 小石川後楽園

江戸時代初期に水戸徳川家初代藩主である頼房が中屋敷として造り、二代光圀が完成させた庭園が小石川後楽園。園内には関口大洗堰から流れていた神田上水の跡が残っていて、現在も見ることができる。1987 年には文京区本郷で神田上水の石樋が発掘された。また、江戸末期に発生した安政江戸地震では水戸徳川家の屋敷付近は大きな被害を受けた。この付近は神田川沿いの低地で、都心の中では地盤が弱かったことが原因といわれている。

 

6聖橋・昌平橋

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現在は御茶ノ水の聖橋の下を流れる神田川は、江戸時代までは水道橋から江戸城東側の大手町方面に流れていた。1625 年に江戸城の災害防止と軍事上の目的から駿河台を開削し、浜町方面の海に注ぐための運河工事が行われた。これを行ったのが仙台の伊達藩だったため、この辺りは仙台堀と呼ばれている。秋葉原にある昌平橋付近は、駿河台を下りてから海抜が低くなるので川底を深く掘れなかったという。昌平橋脇には御茶ノ水からトンネルに入る御茶ノ水分水路の出口が見える。

7.浅草橋

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京浜東北線より東のデルタ地帯に位置する浅草橋付近では、神田川の両岸に堤防が設けられ屋形船の船宿が並ぶ。隅田川との合流地点までの右岸は柳が植栽された遊歩道になっているが、直立護岸のため人が川岸に近づくことはできない。現在、水辺沿いの緑化の促進やオープンスペースの創出など、人と川が共生できる街づくりが検討されている。

 

8.柳橋

神田川の最も下流に架かる橋が柳橋。浅草橋から柳橋までの両岸も直立護岸堤防による自然災害対策が施されているため、道路から川面は見られない。柳橋を越えると50mほどで神田川が隅田川に合流し、三鷹市の井の頭池から始まる24.6 kmの旅を終える。隅田川は護岸に遊歩道が設けられるなど、人と川が共生できるよう整備されている。

まとめ

「都市河川の改善に興味があるので、神田川をどうやったらより良くできるかに注目しました。川沿いには古い町が多いので、どう改善したらいいかを考えて、ゆくゆくは街づくりに関われたらと思います」(永井さん)

「川沿いを歩き、いろいろな気付き、発見がありました。特に暗きょは普段意識することがないので知ることができて良かったです」(奈良さん)

「身近な神田川でも知らないことがたくさんあることをフィールドワークで発見できたのが良かったです。細い川の中にいろいろな治水対策がされていると知ったことも勉強になりました」(小早川さん)

「神田川は今でも人々の生活に密着していることが、一日歩いてよく分かりました。だからこそ防災対策、治水対策が重要であることも実感できたのが良かったです」(大館さん)

「古くは染め物を洗う場所として神田川が使われていたことを知り、驚きました。何気なく見ている川に安全に暮らすための工夫がたくさん施されていることを知ることができて、とても勉強になりました」(小嶋さん)

 

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[久保ゼミ] 「人間の生活に関わる自然環境」をテーマとするゼミで、自然地理学について研究している。自然地理学に必要な文献を読むだけでなく、研究する場所に実際に出掛けて直接観察したり関係者の話を聞いたりするフィールドワークに重点を置いている。
[参加学生] 前列左から小嶋 和さん(教育学部3年)、大館茉由さん(同4年)、久保純子教授、大島哲明さん(同4年)。中列左から小早川和貴さん(同4年)、奈良敦紀さん(同4年)、後列左から荷見大樹さん(同4年)、久保宜映さん(同4年)、井上修弥さん(同3年)、小林 航さん(同3年)、新井俊哉さん(同3年)、背戸裕太朗さん(同3年)、永井 遥さん(TA)

(『新鐘』No.82掲載記事より)

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