Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

化粧品を購入する際、口コミを参考にするのはなぜか?

化粧品の購買行動において、口コミはパワフルに作用します

ishida

帝京大学助教・商学学術院非常勤講師 石田 大典(いしだ・だいすけ)

1980 年広島県生まれ。2004 年早稲田大学商学部卒業、06年同大学院商学研究科修士課程修了、11年同大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。専門はマーケティング戦略、消費者行動など。

 

化粧品は感性商品といわれるだけに、これまで消費者の感性を刺激して購買意欲を高めるさまざまな手法が行われてきました。特に昨今では、ブログやツイッターなどSNS の普及をはじめとしたコミュニケーション環境の激変により、化粧品業界におけるマーケティング戦略の柱に、口コミが位置付けられるようになってきています。
米国マーケティング協会が2015 年に発行した『ジャーナル・オブ・マーケティング』誌に掲載された論文(注)によると、インターネットの口コミが売上に大きく寄与する商品の特徴は3 つ。

(注)You, Y., G. G. Vandakkepatt, and A. M. Joshi ( 2015 ) , “A Meta-Analysis of Electronic Word-of-Mouth Elasticity,” Journal of Marketing, 79 ( 2 ) , 19-39.

1 つ目の特徴は、耐久財であること。家電製品や家具など長期にわたって使用する耐久材には、高価格で消費者の思い入れが強いものも多いです。そのため、購買前に積極的な情報収集が行われる傾向にあります。その手段として多くの人が口コミを活用するわけです。化粧品は耐久財ではありませんが、女性にとっては非常に思い入れが強い商品。化粧品の購買行動においても、口コミは作用すると考えられます。2 つ目は、試すことができない商品。試供品が比較的揃う化粧品全般としてみれば、これに当たりませんが、大切なのは効果を試せるかどうか。口紅やアイシャドーといったメイクアップ化粧品は売り場での試し付けで、すぐに良し悪しが分かります。一方、化粧水などの基礎化粧品の多くは、一定期間使い続けることで効果が発揮されます。従って試用はできても、その場で確たる効果を実感することは難しく、使用経験者の口コミが頼りにされるのです。3 つ目は、プライベートな商品であること。プライベートな商品とは、自宅において個人で使うものを指します。衣服やアクセサリーとは異なり、基礎化粧品などのプライベートな商品では、他の消費者の使用場面を参照できないため、口コミが重要な参考材料となるのです。

@cosmeこのように、化粧品の口コミが消費者にとって有益な情報源になり得たのは、化粧品ブランドの枠を超えた商品情報の集まる口コミサイトの存在があったからでしょう。日本最大のコスメ・美容の総合サイトとうたう「@cosme (アットコスメ)」の口コミ数は1,200万件を超えているほど。口コミの伝達手段は従来、学校や地元などの友人や知人との直接的なコミュニケーションに限られていました。それに対し、インターネット上の口コミは見ず知らずのユーザーレビューですから、信頼度は従来の口コミよりも劣ると推測されます。だからこそ、インターネットならではの膨大かつ最新の情報量がものを言うわけです。

近年、市場の成熟化とともにどのブランドも本質的な違いがなくなるコモディティー化が進展しています。そうした中、消費者がインターネット上の口コミの情報を基に製品の特徴を理解したり、購買の決め手にするということは、自然の流れかもしれません。

(『新鐘』No.82掲載記事より)

 

Tags

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる