Office of Continuing Education(OCE)早稲田大学 コンティニューイング・エデュケーション推進室

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「その成功は、狙ってやったのか」 ―早稲田でブランド戦略を学び直した2人が、現場に持ち帰ったもの

本を読めば知識は増える。セミナーに行けば成功事例も聞ける。それでも、自分の仕事に持ち帰れた手応えがない。マーケティングやブランドに関わる人なら、一度は覚えのある感覚ではないでしょうか。

早稲田大学「ブランド戦略実践講座 ~成功事例を当事者から学ぶ~」を受講した2人も、同じ場所から出発しました。ニチバン株式会社の渡邉智和さんと、株式会社ビデオリサーチの尾上なつはさん。3か月後、2人が現場に持ち帰ったのは、新しい知識そのものよりも、事例の「聞き方」と仕事の「考え方」でした。

 

成功を収めた実務家が、自分の言葉で語る3か月

登壇するのは、そのブランドを実際に動かした本人

本講座の講師陣は、ブランド戦略の現場に立ってきた実務家です。自動車、食品、日用品、BtoB、SaaSと、業界を横断して10名が登壇します。

全体をつなぐのは、コーディネーターの田中洋氏(中央大学名誉教授/東京大学経済学部講師)です。『ブランド戦略論』『デジタル時代のブランド戦略』の著者として初回にブランドの基礎理論を講義し、以降も毎回「伴走」して、実務家の語る個別の事例を理論の地図の上に置き直していきます。最終回はワークショップ形式で、3か月の学びを各自が自社に持ち帰る形にまとめます。

「うまくいかなかった話」まで聞けるのが、この講座の中身

事例紹介のセミナーは世の中に数多くあります。この講座が違うのは、成功の裏側にあった試行錯誤や、社内でつまずいた経験まで、当事者本人が率直に語る点です。過去の受講生からも「理論や成功事例だけでなく、実務の失敗(苦労)事例もお伺いできて大変参考になりました」という声が寄せられています。

2026年度のプログラムは3か月間で全6日・12セッション。いずれも水曜日の午後で、対面(早稲田大学日本橋キャンパス)とオンライン(Zoom)から選べるハイブリッド形式です(第5回はオンラインのみ)。マーケティングの実務経験や知識は問いません。

 

受講生インタビュー

「自社のやり方に、偏りはないか」―点検したくて門を叩いた

渡邉 智和さん / ニチバン株式会社 事業戦略本部 2010年入社。
11年間の国内営業を経て、本社でコンシューマー製品のブランドマネジャーに。製品開発部で新製品の企画立案を担当したのち、現在は事業戦略本部で中長期の戦略策定をマネジメントする。

渡邉さんが受講したのは、製品開発部でヘルスケア製品の企画を担当していた時期でした。ターゲットのニーズを調べ、市場動向を分析し、ブランドの軸に沿って企画を形にする。手順は確立していました。だからこそ、引っかかるものがあったといいます。自分たちが重ねている調査や分析のアプローチに、不足や偏りはないのか。社内のやり方だけを見ていて、気づかないまま通り過ぎているものはないか。

上司から勧められてカリキュラムを開いたとき、その課題感と講座の中身が重なりました。理論を学ぶだけでなく、実績のある実務家からリアルな手法を聞ける。「現在の業務に直結する実践的な知見が得られる」と確信できたことが、決め手になりました。

受講して痛感したのは、ブランド戦略が思っていたより「泥臭い」ものだということでした。データだけに頼らず、顧客理解に基づいて仮説を立てること。差別化(POD)ばかり考えがちなところで、同質性(POP)にも目を配ること。自社と顧客のあいだにあるギャップを埋めるために、n=1のペルソナをどこまで具体的に描けるか。さらに、一貫したブランド体験を届けるには、社員自身がブランドの伝道師になる「インターナルブランディング」が欠かせないことも学びました。

このうち「具体的なペルソナ設定」と「インターナルブランディング」の2つは、受講後すぐに実務へ持ち込んでいます。企画立案は、顧客像を具体化したストーリーベースへ切り替えました。プロジェクトの関係者には、ブランドのこだわりやパーパスを丁寧に共有し、浸透させるようにしました。結果として社内に共通言語が生まれ、事業戦略や企画を前に進める力が目に見えて上がったといいます。

「どれほど良い製品であっても、魅力が伝わらなければ価値を発揮できません」

渡邉さんが今後めざすのは、人々の日常の困りごとに寄り添い、QOL(生活の質)の向上に貢献できる製品やサービスを届けることです。そのためにまず、製品のこだわりや価値を正しく「知ってもらう」ところから丁寧に取り組む。そして社内外から永く愛され、生活者の日々に寄り添い続けるブランドを、事業戦略の立場から育てていく。受講を迷っている人には、こう伝えたいと話します。「自身の課題感を明確にして臨めば、間違いなく日々の業務やキャリアの大きな糧になるはずです」。

学んだ思考軸は、翌日からの企画会議に持ち込めるものでした。

「その成功は、狙ってやったのか」―事例の聞き方が変わった

尾上 なつはさん / 株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューショングループ 2006年入社。
自主サービスの運用・開発、ラジオ業務を経て、リサーチャーとしてクライアントの課題解決を担当。社内人材育成プログラム「マーケティングリサーチの基本」を作成・監修し、講師も務める。JMRA公的統計基盤整備委員会メンバー。

尾上さんは、マーケティング検定2級や専門統計調査士など、資格取得にも力を注いできました。ただ、独学には限界も感じていたといいます。1人で本に向かうだけでなく、その知識をビジネスの中で実際に活かしている人の話を聞きたい。人と議論しながら学びたい。それが受講のきっかけでした。

上長からの紹介で講座を知り、書籍の著者である田中先生の話を直接聞けることに惹かれました。決め手のひとつは、負担感がちょうどよかったこと。「毎週終日×1年間などの講座だったら、挫折していたと思います」と尾上さんは振り返ります。
講座で最も印象に残ったのは、ある講師の言葉でした。

「失敗には必ず理由があるが、成功は偶然も重なる」

その成功への一手は、すべて狙ってやったことなのか。それとも、組織や業界といった別の要因が重なった結果なのか。そう考えると、成功談よりむしろ失敗談のほうが学びになる。そして、語る側が隠しているわけではなく、実は話しきれていないことがある―これは、リサーチャーがクライアントのオリエンテーションに伺うときの状況にも通じる、と尾上さんは受け止めました。

「これまでは、肩書きがすごい方の話をそのまま鵜呑みにしがちなところが、多少あった気がします」。受講後は、「何がその成功や失敗から自分に取り入れられるか」という視点で聞けるようになりました。

変化は、社内での会話にも表れています。他社の成功事例を聞いて「すごい」で終わらせず、同僚と「何が本質なのか」「自分たちのクライアントにも応用できるのか」を話し合うようになりました。仕事柄、広告やプロモーションに目が行きがちだった視点も、4Pのうち特にPlaceまで含めて考えるようになり、視野が広がったといいます。

めざすのは、理論を知識として覚えるだけではなく、クライアントの課題解決に役立つ形で使いこなせるリサーチャーです。クライアントの成功を一緒に喜び、思わずハイタッチしたくなるような瞬間に立ち会えることが理想だと話します。「成功事例を知るだけで終わらず、『自分の仕事ならどう考えるか』まで掘り下げたい方には、ぜひおすすめしたいです」。

「すごい」で終わらせない。持ち帰った視点は、日々の議論の質を変えました。

業界も職種も異なる2人ですが、受け取ったものには共通点がありました。どちらも、覚えた知識をそのまま使ってはいないことです。渡邉さんは顧客像を具体化する思考軸として、尾上さんは事例を疑い、本質を取り出すための視点として、学びを自分の仕事の文脈に置き直していました。

実務家の話を聞いて「勉強になった」で終わるか、翌日の会議で使える形にして持ち帰るか。その差を生むのは、成功の裏側まで含めて当事者から聞き、自社ならどうかを考え抜く時間があるかどうかなのかもしれません。

早稲田大学「ブランド戦略実践講座 ~成功事例を当事者から学ぶ~」は、次期講座の受講生を募集しています。カリキュラム、講師陣、日程などの詳しい情報は、こちらをご覧ください。

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