Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

主体性をもって(大矢 雄介)

P1270363-profile早稲田大学 基幹理工学部 機械科学・航空学科4年
大矢 雄介
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2013年9月~2015年3月

はじめに

学生スタッフになる大学3年の秋まで、僕の学生生活はサッカー一色だった。入学当初、何も考えず当然のようにサッカーサークルに入り、これまでと同じように打ち込んだ。その分引退を迎える時には感傷的な思いにかられたし、達成感も感じていた。しかしそれ以上に「いつまでも過去の思い出に浸っていたくない。新しいことに挑戦することで、自分が知らない自分をみてみたい」という思いを抱いていた。そのような時にちょうどICCの学生スタッフの募集が目に留まった。応募書類を作成する際には、Webに公開されているこの『学生スタッフリーダー体験記』を読みあさり、先輩たちの体験談から「ICCではきっと素晴らしい経験ができる」と確信していた。振り返ってみると僕の志望理由は「学内の国際交流を促進したい」というよりは「自分の成長のため」という面の方が大きかったのかもしれない。

順風満帆

僕の学生スタッフとしての活動は一見順風満帆だった。初めての企画もスムーズに実現でき(『ボスポラス海峡横断地下鉄ができるまで~世界で活躍する日本のエンジニア~』)、自分が好きなサッカーのイベントも実現することができた(ICCスポーツ企画『サッカー・マッチ』)。また新入生に対するICC紹介プレゼンでは聖地・大隈講堂の担当を任されたりと、多くの経験をさせていただいた。というのも、前述した『学生スタッフリーダー体験記』を読んでいると多くの先輩学生スタッフが「初めは仕事が早く覚えられずなかなか思うようにできない」「学生スタッフとしての在り方に悩む」といったような壁にぶつかっていたことを知って、覚悟していたからだ。自分にはそのような悩みは特別なく、深く考えることもなかった。しかし、あることがきっかけでふとこんなことを思った。

「果たして自分はICCに貢献できているのか」

考えてみたが特別思い当たることがなかった。そして自分が壁にぶつかっていないのは、ただ壁をよけていたからではないかと考えた。それまで、与えられた仕事を何も考えずただ淡々とこなしていただけだったのではないか。きっと、自ら問題意識を持って主体的に取り組まない者に壁は現れないのだ、と気づいた。そこで「このまま卒業したくない。このまま良い気分で卒業しても自己満足なだけだ。」と思い、残りの期間で何ができるのかということを考えた。それは学生スタッフになっておよそ1年が経った時のことであり、卒業を半年後に控えた時のことである。

自分にできること

21残りの半年でICCにどう貢献できるのかと焦りながら考えている時期、ICCは大きな節目を迎えていた。ひとつは2006年のICC設立当初からICCを支えていた(前)課長の異動、もうひとつはオフィスの3号館への移転だ。さらに、振り返ってみるとその時期の自分の働きぶりはこれまで自分が憧れていた先輩の姿からはほど遠かった。業務を人任せにする、やるべき日常業務を忘れてしまう・・。いわゆる中だるみの時期だったのかもしれない。そのような状況において、自分は何をすべきか、何ができるのかと考えた結果、「基礎となる土台固めに貢献する」ということに行きついた。具体的には、細かい日常業務を徹底するということと、新しく入った学生スタッフのサポートを心がけることだ。

前者について。学生スタッフの仕事の大半は細かい日常業務や地道な作業である。イベントを実現させることやプレゼンでかっこいい姿を見せたところで、そういった細かい作業を疎かにしていては、表面上は立派な学生スタッフに見えるかもしれないが、そうはなりたくないと思った。他のSSLが忘れがちな仕事を意識し、もっと泥臭く、見えない部分の仕事を率先して行うことで貢献しようと決意した。
後者について。学生スタッフは人の入れ替わりが多く、仕事をまだ完全に覚えていないうちに後輩ができるということがよくある。そのような組織の中で、新SSLに正しく仕事を教えられなかったり、手本となるような働きぶりを示すことができないと、間違った情報がそのまま後輩に伝わってしまう。さらにそれが次のSSLに伝わってとなると、負の連鎖になる。これまでの偉大な先輩SSLが9年間積み上げてきたものは多くあるが、それらは今在籍している自分たちの意識や行動によって簡単に崩れてしまうという認識、危機感があったため先輩が自分にそうしてくれたように、後輩をしっかりとサポートしようと決意した。
このとき初めて自分はICCに貢献するために頭を使い、初めて主体性をもって仕事に取り組むようになった。

学生スタッフになる前と後の変化

33学生スタッフとしての経験を通じて自分の中で2つの変化が起こった。
1つは「自分の成長のため」という理由で始めた学生スタッフだったが、次第に「参加者のため」「ICCのため」という風に意識が広がっていった点だ。ICCのためにどれだけ貢献できたかは他人が評価してくれるものであり自分ではわからないが、貢献するために何をすべきか考え、実行したということは胸を張って言える。学生スタッフになって間もないころは自分のことで手一杯であり仕事を覚えることに必死で、自分以外の誰か、何かのために貢献しようと考える余裕はなかなか持てないかもしれない。しかし、自分のやれることが増えるにしたがってICCに貢献しなくてはならない、という気持ちは自然と出てくるものではないかと思う。
もう1つは、異文化交流・異文化理解に対する考え方だ。学生スタッフになる前の僕のコミュニティと言えば10人ほどの学科の仲の良い友達、60人ほどのサッカーサークルの友達だった。人数こそ多いが、「類は友を呼ぶ」と言うように同じような目的や共通の趣味を持っている傾向がある。そういったコミュニティでの居心地は良く、さらに協調性が求められるため、周りと“同じ”であろうと無意識に振舞っていた気がする。しかし、ICCでの環境は違った。僕は色々な人、いつもサポートしてくださるフルタイムスタッフや個性の強い学生スタッフ、そして様々なバックグラウンドを持つ参加者たちと出会った。ICCでは一人ひとり“違う”ことが当たり前であり、そういう人たちとの出会い・交流を通じて、多様性に関して寛容的になった。そして何より「世の中には色々な価値観・考え方を持った人がいる」という至極当然のことに気づくことができた。さらにそういった違いを認めたうえで「積極的に自分の意見を発信、他人の意見を傾聴、常にオープンマインド」というノーボーダー精神の大切さを学ぶことができたことは今後様々な人と出会い交流していくうえでの大きな財産になると思う。(『ICCノーボーダー・スキー&スノーボード・キャンプ』)早大生に異文化体験を促すはずが、自分自身が一番異文化体験させてもらったかもしれない。

最後に

このレポートを読んでいる方はさまざまだろう。参加者の人、SSLに応募しようとしている人、SSLになりたての人・・。ICCとの関わり方はさまざまである。参加者ならではの楽しみもあるし、スタッフでしか感じられない達成感などもある。どのように関わるかは自分次第だが、いずれにせよICCは自分自身の取り組む姿勢次第で可能性を無限大に広げることができる。逆に言えば学生スタッフに選ばれたからといって受け身の姿勢で働いていたら(以前の自分がそうだったように)得られるものは少ないだろうし、イベントに参加したからといって消極的になっていたら交流のチャンスはつかめない。僕自身、途中から主体性を持って活動に取り組んだことで、ICCで過ごす時間の密度が加速度的に濃くなった。サッカー一色だった僕の学生生活に色を加えてくれたICCに感謝したい。

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