政治経済学部4年
田中 優衣
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2011年10月~2014年3月
ICCとの出会い
入学当初、漠然と「大学に入ったらなんらかの形で国際交流に関わりたい」と思っていた。国際交流サークルも見てみたが、なんとなく自分が求めているものと違う気がした。 そんななか、waseda-net portalでICCの新入生歓迎ウエルカム・フェスタの開催を知った。 「大学機関が行っているなら、とりあえず安心できるな」と授業の空き時間にいったウエルカム・カフェが私とICCとの最初の出会いであった。
留学生と交流ができ、自分も企画に携われるということに興味を持ち、ボランティアスタッフであるイベント・サポーターとして活動した。さまざまな学部学年国籍の、幅広い人との出会いが楽しく、刺激を受け、大学1年の秋、大学2年の春、秋と3期連続でサポーターに登録。「私も自らこんなイベントを企画し学生の出会いの場を広げてみたい」と思うようになり、大学二年の秋に学生スタッフリーダーに応募した。
いっぱいいっぱい
SSLになって初めて私が担当することになったのは「世界遺産白川郷&トヨタ自動車」のフィールド・トリップであった。SSLになり立ての時期に、「日本の世界遺産を留学生に見てもらいたい!」と提案した案が、運よく実現できることとなったのだ。担当したのは私を含めて4人の新人学生スタッフ。私は発案者ということもあり、主担当を任された。しかし、自分で考えた案ではあるものの、実際の企画をどう進めたら良いのか全くわからず、ただただ職員に言われたことを慌ただしくこなしていくだけであった。
それまでは自分は比較的計画性のある方だと自負していた。だが、協働作業というのは「自分だけ」が行うものでもなければ、「自分ひとり」の判断で勝手に進めてよいものでもない。思うように仕事が進まず、シフト時間内に業務を終わらせることができないことが多々あった。大学二年次、私の学科は特に必修が多い時期でもあり、そんななか終わらせることのできなかった作業を持ち帰って夜中にやることもあった。当時はやるべきタスクを「なぜ」「その時」に行う必要があるのかを考えることなく、職員から指示された期限に間に合わせるのでいっぱいいっぱいであった。物事が自分の思うように進まず正直苛立ちを感じたこともある。
世界遺産白川郷&トヨタ自動車のフィールド・トリップは、結果的には参加者の満足度も高く、大きな問題なく無事に終えることができた。しかし不思議と、自分自身はそれほど「達成感」を得ることはできなかった。それは私が「自分で考えた」行動をしておらず、ただ言われたことを次から次へとただただ“こなして”いたに過ぎないからであることに気付いた。新人学生スタッフ4人ということもあり、今思えば通常より手厚い職員のサポートがあったフィールド・トリップであった。この経験から、「言われてから」ではなく「言われる前」に自ら動いていく重要性を思い知らされた。
1年を経ての実施
ICCでは学生スタッフは自分の実施したいイベントの企画書を半期前に提出する。最初は「こんな早くから!?」と思っていたが、準備がイベント実施においてどれだけの重要性をもっているのかを学んでいくにつれて、半期前でも遅いのではないか、とまで終盤では思い始めていた。
中でもそのことを強く実感したのが、ハリーポッターの翻訳家の松岡佑子さんをお招きしたトーク・セッションである。松岡さんは現在スイス在住で、企画書をお送りした際には「ありがたいお話ですし、前向きに検討させて頂きたい」とお返事は頂いたものの、直近の帰国のタイミングは大学として開催時期にはふさわしくなかった。 しかし、早い時期から打診し、定期的に連絡を取らせて頂いていたからこそ、1年という長い調整期間を経て、開催に至ることができた。様々なリスクや可能性を考え、共にイベント運営にあたる他の学生スタッフと一緒に入念に現場のシミュレーションを行い、起きうるトラブル等についてもしっかり話し合うことで、当日は、参加者、ゲスト、スタッフ共に大変満足度の高いイベントとすることができた。
次のステップを思い浮かべて
どんな小さなイベントでも企画段階からイベント終了まで、一歩も二歩も三歩も先を考えて行動しなくてはいけないことに次第に気づかされた。とは言っても、ただやみくもに突っ走って準備をすればよいといというわけではない。 「なぜ」「その時に」行う必要があるのか、ひとつのステップの意味を考え、適切な判断のもとに進めるのが大切なのだ。 例えば著名人にトーク・セッションの講師を依頼するのであれば、「1ヶ月後にお願いします」というような急な打診は相手からしたら到底無理な相談であり、非常識なお願いでもある。 先方にはスケジュール調整、原稿作りなど事前調整と準備があり、ICC側にも広報準備や会場手配、そのあと、実際に学生にそのイベントのことを知ってもらうために必要な広報期間をとる必要がある。前持った行動は、相手方へのマナーであり、イベントの効果を最大に発揮するためであり、また同時に、協働する人への「おもいやり」でもあるのだと思う。
点でなく線で
業務の成果は通常その「結果」で測られるだろう。ICCが実施しているイベントの場合は、その成果として、異文化理解・異文化交流体験を通じた早大生の気づきや学び、成長といったものがある。それらの成果は、数値で測るのは非常に難しい漠然としたものだが、SSLとして企画側の立場に立ち、先を読んだ準備をしっかり行うことで、そのプロセスそのものもまた、ひとつの成果に繋がっていることを感じた。一歩先を捉え、クオリティの高い準備を行うことは、参加者の満足度のみならず、協働する仲間や講演会講師などの関係者からの信頼といった面に確実に繋がっていく。強い信頼感で結ばれたチームを作ること、学外から大学に対する信頼度をアップすることも、組織へのひとつの大きな貢献だと感じた。 深く考えることが苦手な私は、自らの問題意識に根差した大きな発信型プロジェクトを作り上げるという偉大なSSLの先輩方が成し遂げてきたようなことはできなかったが、その分誰よりも丁寧で抜かりない準備プロセスを踏んで、上記の成果に繋げてきたと自負している。
また、プロセス全体を意識した業務の進め方は、ひいては自分のキャパシティを広げるということにも気づかされた。時間に余裕をもてるとその分クリエイティブにもなれ、周囲への「気づき」の余裕が増える。そして、ちょっとした時間の余裕は心の余裕にもつながり、いつのまにか、いくつかのイベントを同時進行させることを楽しめるようになっていた 一つひとつのタスク(作業)を無数の「点」でしか捉えることができず、いっぱいいっぱいになっていた最初の頃と比べ、それぞれの点をしっかりと結び、さらにその先まで「線」で捉えることができるようになっていた。
大学3年次は、サークルも幹部学年で、学業においてはゼミも始まり、かつまだ授業もそこそこあるという多忙な時期であるのにも関わらず、一番多くのイベントを担当することができたのも、自分が少し成長した証であったのだと思う。
一生もののネットワーク
広く浅く色んなことに足をつっこんできた飽きっぽい私が、学生時代の半分以上の期間、時間にしたら授業時間以上といっても過言でもないほどの時をICCで費やすことができたのは、イベントを実施していく楽しさややりがいだけでなく、そこで出会える「人」にも大きな魅力を感じたからだ。 自分に成長の機会を与えてくれ、認めてくれる学生スタッフの仲間と、支えてくれる職員がいるオフィスはいつでも、「行きたい」ではなく「帰りたくなる」ような場所であった。
学生スタッフはもちろんのこと、一緒にイベントを作り上げることができたサポーター、他団体、時には企業の方々との出会いは毎回勉強になり、多くのものを得ることができ、かけがえのない宝物であった。
幸い、今の便利な時代、ICCで出会った人とはこれからもいろんな形で繋がっていくことができる。 今後もこの一生もののネットワークを大切にしたい。そして早稲田のより多くの学生がICCで更なる出会いとネットワークを築き、自分のものとしていってくれることを願っている。