Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

真面目×交流物語 (谷澤 慧)

pic130613-1政治経済学部4年
谷澤 慧
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2010年6月~2013年2月

日中ホンネ交流キャンプとの出会い

日中ホンネ交流キャンプ
目的:日本人学生・中国人学生が普段の交流の中で言えないことを本音で話し合うことで、 お互いの考えを深く理解する

pic130613-2SSLになって3年目に突入したある日、同僚である中国出身のSSLがこんな企画案を出した。この企画案をひとめ見た時から強く惹かれていた。それは僕自身、高校から中国語を勉強し、大学のゼミでは中国研究、ゼミ活動で北京大学を訪問して現地学生と意見交換・・・等、とにかく中国と関わる機会が多く、一番身近な外国だったから。ただ、一方で中国人学生と実際に交流する中で自分の本音を言えず、モヤモヤしたことが何度もあった。日本人と中国人はお互いもっと素直に本音で話せば、さまざまな誤解も解け、もっとお互い理解ができるはず、という発案者SSLの想いに強く共感し、一緒にこのチャレンジングな企画に取り組み、ぜひ成功させたいと思った。

ちょうどその頃は領土問題に絡む反中・反日報道が盛んな時期。そんなデリケートな問題をはらんだなか、本当に日本と中国の学生が、前向きに、平和的に、建設的に、ホンネで話し合うことができるのだろうか? 不安を抱えつつ、細心の注意を払ってキャンプのプログラム構成を考え、組み立てていく。「2泊3日という短い時間の中でどうやったらホンネで話せるか? 参加者同士気まずくならないか? ケンカになってしまわないか?」 キャンプは、まずお互いに警戒心を解き、信頼関係を構築させるためのアイスブレイクやレクレーション的な要素と、がっつり話し合うディスカッション、この2つのコンポーネントから成るが、僕はそのディスカッションパートのファシリテーションを担当することになった。テーマ・キャンプの仕切りは僕自身初めて、しかも今回扱うのは、ともすれば国のプライドや意地がぶつかり合いかねない難しいトピック。相当難度の高いタスクと思われたが、これまでのSSL勤務の総決算のつもりでしっかり仕切りたい、そんな決意と想いを密かに抱いていた。

ただ同時に葛藤もあった。それは僕自身が交流イベントをあまり得意とするSSLではなかったということ。「谷澤慧の性格を一言で言えば?」と知り合い10人に聞けば、ほぼ10人全員「真面目だよね」と答えるくらい、自他ともに認める真面目な性格。飲み会では我を忘れて全力でワーッと騒ぐタイプでは決してなく、一歩退いた立場で自制してしまうタイプ。実際、それまでに企画したイベントは、映画鑑賞会やトーク・セッションなどのアカデミックなものが多かった。もちろん交流イベントに意味がないとは思わない。ただ、ICCには常に10名以上のSSLがいて、自分のほかに交流イベントに熱心かつ向いている仲間がたくさんいる中、自分があえてそこに乗り出す必要もないだろうと思っていた。

pic130613-3ファシリテーターとしてキャンプを成功させたいと願う自分、一方で交流イベントへの苦手意識を持つ自分、二つの自分に悩みながらも、必死にキャンプの準備を進めていった。

そして迎えたキャンプ本番。ファシリテーターとして求められた役割は概ね果たし、多少のハプニングはありながらも無事3日間を終えることができた。詳しくは、参加者の体験レポートを読んでいただきたいが、溢れる笑顔、ディスカッションに集中する真剣な表情、深まる参加者同士の絆・・・を目の当たりにして胸が熱くなり、”交流の場を演出する”意義に、ようやく実感を伴って気づくことができた。その時浮かんできたのは、2年前のフィールドトリップでの自分自身の姿だった。

交流の壁

2011年2月、初めて泊まりがけのフィールドトリップに同行することとなった。行き先は菅平、ICC初のスキー&スノーボード企画である。企画案を詰めていく過程で、上司である職員から幾度となく、「せっかくのフィールドトリップなのに、スキーだけじゃなくて何か交流企画をやらないの?」「夜の時間は完全にフリータイム?」と何度もパスを出されたにも関わらず、僕はガンとして首を横に振り続けた。

「スキーとスノーボードが目的なんだし、それでいいのでは?」
「大学生なんだから、放っておいても勝手に交流するでしょ」
あえて言葉にしてみれば、こんなことを思っていたのだと思う。

それもこれも、この時はまだ交流の場を演出することの意義や意味を感じとれていなかったからだ。もちろん放っておいても参加者は交流する。しかしそれは、たまたま部屋が同じだった者同士とか、同じ国の出身者とか、同じ学年同士とか、話しやすい仲間内に留まりがち。さらに言えば、壁を作らず自分からどんどん積極的に働きかけられる人はたやすく交流できるが、その一歩がなかなか踏み出せない人にとっては、言うほどたやすくはないはずなのだ。

僕自身もSSLになる前は、「色々な国の友達を作りたい!」という思いから様々なICCのイベントに参加していたが、実際にイベントに参加すると、「初対面だしどんな話をしたらいいんだろう」とか「こんなこと言ったら気を悪くするかな」などあれこれ考え、一歩踏み込んで交流することに尻込みしてしまっていた。

しかしICCという大学機関がわざわざ公式行事として場を設けているのだから、一歩踏み込んだ交流の場作りに少し踏み込む意義は十分にある。そしてそれは、誰かと誰かの手を無理矢理つながせるようなおせっかいなものではなく、参加者が自然と交流できるような、打ち解けられるような、ホンネで話せるような「仕掛け」を作り、場の空気を演出すること。参加者の気持ちを想像するのに、飲み会でワーッと騒げない自分の性格も少しは役に立ったかもしれない。

新たに開いた交流の扉

pic130613-4今になってみるともったいないと思うが、SSLになって最初の2年近くは、自分の苦手意識を言い訳に、この「交流の場を演出する」ことに向き合いすらせず、自ら意識して距離を置いてしまっていた。それがこの日中キャンプという企画と出会い、一心不乱に取り組むうちに、いつしか新たな自分を発見することができた。もちろん、真面目な性格がなくなったわけではない(笑) ただ、真面目は真面目なりに、真剣に「交流」と向き合い、自分にもできることがあると発見できたのだ。SSL最後の1年でこの新しい扉を開けたこと、ともに開いてくれた仲間のSSLや職員、日中キャンプ参加者には心から感謝している。

SSLとして働き始めて気付けば早3年。大学4年間のうち、3/4をここICCで過ごしたという意味で、僕にとってICCは大学生活を語る上で欠かせない存在であり、自分にとっての大切な“居場所”であった。ここで働いていく中で、ICCはさまざまな面で僕の気づきと成長を促してくれた。3年近くお世話になった職員のみなさん、先輩・同期・後輩のSSL、ICCのイベントに関わってくれた全ての方々に感謝の気持ちを伝えたい。そしてこのスタッフ体験記が、特に真面目な(!)早大生のみなさんの参考になれば幸いである。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/icc/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる