Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

SSLにならなければ、今の僕はいない (陳 昊林)

pic130612-1大学院経済学研究科修士2年
陳 昊林
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2011年6月〜2012年11月

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一年半前のある深夜、SSLの採用面接に備えて準備するために、辞書を見ながら必死で過去のSSL体験記を読む自分がいた。今、SSL卒業を控え、自分自身のレポートを書くために、同じように過去のSSL体験記を見返していて、あの時は理解できなかった内容がほとんど理解できるようになっているし、難しかった日本語も易しく感じるようになっている。そう、無意識のうちに、僕のSSL生活もそろそろ終点にたどりつく。もし自分のSSL経験をまとめなければならないとすれば「SSLにならなければ、今の僕はいない」という一言より適切な言葉は存在しない。

僕のSSL経歴

pic130612-2欧米と違い、アジアの大学教育の共通点は「入学が難しいが卒業が簡単」ということだ。従って、上海で過ごした学部生時代には、大学の授業よりも何よりも僕を成長させたのは四年生の時のフルタイムのインターンシップだった。自信満々だった僕だが、実際の仕事ではみごとに挫折をして、本当に有能な人と比べて自分はどんな未熟なものかと気づかされた。それからは毎日謙虚に小さな仕事から一生懸命働いて、少しずつ経験を積み重ねて、徐々に周囲の先輩に近づいていった。インターンの経験は僕の成長の中で大きな存在感を示した。従って、早稲田で大学院に入ってSSL募集要項を見た瞬間、直感で「このインターンに近いこの仕事は、必ず僕を大きく成長させてくれる」と思った。大学院の研究は忙しかったけれど、躊躇なくすぐにSSLに応募することに決めた。当時英語も日本語も流暢ではなかった僕にあったのは情熱だけで、この貴重なチャンスをもらえたのは本当に不思議だと思うが、リスクを背負って僕を採用していただいたICCの職員の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいだ。

えんじの紐の名札ホルダー(職員専用名札)を着用し、表向きは華やかだが、実際、入って間もないころはSSL業務は少々苦しかった。コピーとり、カウンター業務、ポスター作成などのいわゆるオフィスワーク以外に、SSLの中核的な仕事はイベント企画である。半年後に実施するイベントのために、ICC内で何度もミーティングを開いて、細かいところまで繰り返し推敲して、斬新なアイディアを提案することが求められる。限られた日本語能力ということもあり、当時の僕は何でも他の人より2倍の時間がかかってしまった。いいアイディアがあってもなかなかうまく伝えられないし、他の人のアイディアを理解するにも数回説明してもらわなければならなかった。今当時を振り返ってみると、確かに難しいことはたくさんあったが、その困難を乗り越えたからこそ今の自分になれたのだと思う。

pic130612-3徐々に経験を積み重ね、ついに僕も自分の初大型イベント「日中ホンネ交流キャンプ」を企画し始めた。共通の中国古代の韜晦文化の影響もあるかもしれないが、日中の人は一般的に相対的に含蓄的かつ控えめである。中国でも日本でも「空気を読む」ことは人と人の付き合いの中で暗黙の裡に求められる。従って、中国に興味を持つ日本人学生も、日本にいる中国人学生も、お互いの関係を崩さないように、ほとんどの人はどんなに不思議だと思ってもデリケートな疑問や問題をいつも心の奥に隠していると思った。こんな考え方は中国人と日本人の奥ゆかしくてある意味チャーミングなところと言えるかもしれないが、それは同時に、お互いの理解を深めるには大きな障害となっていることも事実だった。従って普段メディアには伝えられない相手の生の声を聴いて、素直に自分の意見を表現し、日中の若者の理解と交流を促進するために「ホンネキャンプ」というアイディアを出した。案を形にしていく準備期間中はとても不安だったが、ゼロから組み立てたイベントが成功の階段を上り始めた時の満足感は言葉では表せない。言語能力や文化背景の違いを背負った留学生として、他のSSLよりもより努力を積み重ねなければならなかったが、その分「日々自分は成長している」という実感をより顕著に楽しめたことも事実だ。

成長の収穫

語学力:
一年半前には辞書を引きながらテレビを見ていた。しかし、一か月ほど前、ICCからの紹介で日本語のテレビ討論番組に出演した。ICCに入った時、日本語が下手だった自分はつい昨日のことのようなのに、その自分がテレビの中で日本語を話している姿を見てちょっと不思議な感じがした。ICCは非常にグローバルな組織だが、内部のミーティング、メールや電話などの中で使う第一言語はもちろん日本語だ。日本の組織で業務を経験しながら、無意識のうちに自分の日本語力は飛躍的に成長した。今も表現のミスを時々犯すが、意思疎通の上だと基本的に問題がなさそうだ。

pic130612-4人間関係:
大学院での勉強が忙しく、SSLになる前は日々大学と家を往復する生活だった。もっと友達を作りたかったが、院生留学生の人間関係は狭く、またそれを広げるチャンスもなかった。SSLになってからこの悩みはすぐに解消した。まずSSL同士の人間関係がとてもよかった。この一年半の中で、難しい問題を一緒に考えて、チームを組んでイベントを作って、実際の仕事に取り組む過程で深い友情が育まれた。さらに、自分が担当するイベントを通じてもたくさんの参加者と出会った。気の合う友達ができて、より充実した生活をたのしめるようになった。

自己発見:
SSLの中にも様々な背景の学生がいるが、概してSSLはとても優秀な人が揃っていると思ったし、個性も豊かである。他のSSLと切磋琢磨しながら、時に自分と比べることで、自分自身の長所と短所を認識することもできた。例えば、「大勢の前で堂々と振るまうことができる」ということは僕の長所だと思っていたが、他の優秀なSSLと比べると特に強みだとは思われなかった。逆に、元々自分はクリエイティブな人間ではないと思っていたが、意外と時々斬新なアイディアを出せることもわかった。自分の強みを発見すると同時に、「細かい作業が苦手」「楽観すぎる考え」などの弱みも明らかに見えて、今それらの改善に意識して取り組んでいるところだ。

終わりに

子供の頃から、学生時代に一番大事なことは勉強だと教えられてきた。先生と親は、成績さえ良ければ、他に多少欠点があっても構わないと思っていると思っていた。だが、立派な人間になるために必要なのは勉強力だけではなく、コミュニケーション力、リーダーシップ、努力、思いやりなども含まれる総合力だ。過酷な受験戦争を勝ち抜いた早大生は間違いなく勉強力を持っている人だ。イコール自分の総合力も優秀だと思ってしまう人も少なくないと思う。しかし、事実はそうとは限らないし、どんな人でも自分の弱みを持っており、勉強力が優秀だから総合力も傑出しているとはいえない。おそらくその誤解が、大勢の「優等生」が社会人になってから最初につまづく原因の一つかもしれない。従って、大学卒業前に、実際に自分の短所を認識できるような体験を積み、意識してそれらのポイントを改善することはとても大事である。インターンのチャンスが少ない日本で、SSLの仕事は非常に貴重なチャンスだと思う。SSLの仕事と勉強で忙しく、時間に追われることも多かったが、この仕事から得られた経験は一生の宝物になると確信している。

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