文学研究科
清水 悠佑

(Photo by Author)
2013 年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、最近では国立科学博物館で和食に焦点を絞った特別展が開催されました。さらに、国外からの旅行客が増加する昨今において、日本の食文化の注目度はますます高まっていると言えるでしょう。和食を語るにあたり、「うま味」は欠かせない要素の一つであることは言うまでもないと思いますが、いったい何なのかと問われると、いまいち把握ができていませんでした。
そこで、当イベント「うま味の真髄に迫る 世界の食を科学する ICC トークセッション」は、体験や交流を通して「うま味」への識見を得る良い機会だと思い、参加させていただきました。
「うま味」は基本五味の中で唯一、これが「うま味」である、と具体的に表し難いでしょう。イベント内のお話でも、表現が難しい味と述べられていました。そのため、うま味というものは味わいと変わりないのではないか、と思うに至りましたが、「うま味(Umami)」と「旨味(Deliciousness)」は、明確に区別されており、味わいは完全に後者に含まれることを知りました。これは一見当たり前にも思えますが、この基本的な区分の存在こそ、「うま味」が基本味の一つとして世界から認められている確固たる証左でしょう。
また、日本食における出汁の特質に関するお話も、非常に興味深いものでした。確かに、世界の食文化を眺めると、「うま味」の活用は決して日本食の専売特許でないことは明らかで、それ故になぜ、「うま味」は日本食の顔足り得るのか、という疑問を抱かざるを得ません。明らかにされたことは、出汁に含有されるアミノ酸の差異こそ、「うま味」を「Umami」足らしめる所以だったということです。というのも、プレゼンテーション内で、野菜スープと昆布出汁に含有されるアミノ酸の比較が行われ、前者は、多様なアミノ酸の中でグルタミン酸が比較的多く含まれていた一方、後者は、グルタミン酸の含有量が圧倒的であることが示されました。つまり、日本で主として活用される出汁は、「うま味」の純度が高いわけで、これを活用する日本が「うま味」大国となることも頷けます。

講演者の二宮先生 (ICC photo)
イベント後半のディスカッションでは、異なる出自を持つ方々と会話する中で、「うま味」は国境によって隔てられることなく、各食文化に根差すものであることも知ることができました。さらに、現在は世界中のシェフが「うま味」を学び、独自のアレンジをしていることに驚かされました。
乾燥、発酵、塩漬けなど食品の保存やおいしく食べるための工夫は、いずれもグルタミン酸を保存、凝縮、そして増やす技術でもあった。うま味はヒトが有史以来追い求めてきた味である。
当イベントの最後に、イタリア食科学大学の G・モリーニ氏による以上の言葉が引用されましたが、言語や思想は違えど、僕たちは「うま味」に根差した食文化を共有しているのだ、と実感をしました。本イベントでの学び/体験を通して、知っているようで知らない「うま味」の一端を知ることができました。これからも知見を深めつつ、多種多様な形で生活に寄り添っている「うま味」を楽しんで味わっていこうと改めて思える機会をいただけ、参加してよかったと思います。

(ICC photo)