新しい視点について
商学部 張 泰成
私は幼いころは韓国で暮らしており、今年になってようやく韓国と日本間の居住歴年数が一対一となった。日本に住みながら、韓国語を忘れないように韓国のテレビ番組を主に見たり、書籍を選ぶ際や、携帯電話で話す時でも韓国語を選び使うようにしていた。ニュースなども韓国のものを見ており、韓国人の友人とも世間話をしていたものだったので、並の韓国人より韓国事情に詳しいという自信も沸くほどだった。
しかし、実際に韓国人と日本でしゃべったことは片手で数えられるほどしかなく、韓国人とじっくり顔を合わせて話してみたいという願望が心の奥隅に常に存在していた。そうして大学進学後、国際交流関係に関しても興味があったので、ICCからのメールニュースを見ている中、日中韓交流キャンプの募集要項を見かけた。明らかに政治的摩擦が存在する3国間の参加者同士がどのような話をするかも気になったし、韓国人と会って話してみたかったこともあり、すぐに参加を申請した。以下は参加して感じたこと、気づいたことや参加前と変わったことなどについてである。
一つ目に述べることは、凝っている企画の設定に感心したことについてである。どのようにしてホンネを語り合える環境にするのか、参加者同士の言い争いが起きずに済むことはできるのだろうかと心配と疑問が多かった。しかし実際に参加してみると、カードゲームで言語の重要性に気づいたりとアクティビティを通して互いの心の障壁を崩して話すことができ、アクティビティの重要性を実感することができた。また、希望する話題別にテーブルを分ける「アイランドトーク」を通し、領土問題といった敏感な話題については話したい人のみが意見を交わすことなどもでき、参加者内で傷つけ合わない会話の場ができ、不快な思いをせずホンネを話し合うことができた。

(Photo by ICC)
二つ目に述べることは、気づいた点についてである。両岸問題について、実際台湾の人は自身のことを台湾人と言ったり、中国内で地域ごとに国が違うと感じられるほど文化、言語が違うことを知ることができた。ニュースやインターネット上では、どうも否定的で、社会の表面のみを扱ったことしか知らなかったが、中国南部出身の人や北部出身の人に自分たちの地域について詳しい話を聞くことができて視野を広げることができた。特に、中国のご飯を残す文化について、政府から控えるように指示が出ていることや南部ではあまりご飯を残さないということを知り、インターネットで表面的に知ることができる情報にはやはり限界があることを知ることができた。
最後に述べることがキャンプを通して変わった点である。先述した通り、私はニュースやインターネットをよく使っており、人一倍の情報量を持っていて、キャンプでも考え方を変えることはできないだろうと思っていた。だが、やはり実際に会って話すということは新鮮で、より謙遜な人間になれたと思う。短い期間ではあったが、他ではめったにできない経験をすることができ、記憶に残る体験をできたと思う。

(Photo by ICC)
「ホンネ」で見えてきた日中韓と私たちのこれから
文学部 佐藤 花乃
私は中学生の頃から日韓関係に興味があり、第二外国語として朝鮮語を勉強していることもあって本イベントへの参加を決めました。文化などの交流イベントはよく目にしますが、本イベントのように政治や歴史が絡んだ深い話ができる機会はあまりないので非常に魅力的だと思いました。
当日は、バスに乗って宿泊先まで向かいました。その道中では隣の席になった新しい友達と色々な話をしてすごく和やかな雰囲気だったので、いつの間にか皆の緊張もほぐれているように感じました。目的地に到着したら4、5人のグループに分かれて自己紹介を含めたアクティビティを行いました。各国の遊び道具も用意されていたので、お互いに教え合うことで自然と仲も深まりました。夜には、今後議論をしていく上でのルールをグループ内で話し合い、全体に共有しました。初日にしっかりとコミュニケーションをとる機会があったことで、その後の活動がしやすくなったと思います。

(Photo by ICC)
二日目は日中韓各国に対するイメージや偏見のようなものを伝えあったり、そこで出た意見に対して気になったことを率直に聞いたりなど、デリケートな話題を多く取り扱いました。そしてこの日の午後、このキャンプのメインイベントとも言えるアイランドトークを行いました。アイランドトークとは、「歴史問題」や「文化交流」、「各国の恋愛観」など皆から出た意見をもとにしていくつかテーブル別に島を作り、その島ごとで意見交換を行うアクティビティのことです。
私は昔から興味があった歴史問題の島に行きました。そこでは主に日韓の歴史認識のずれについて話し合い、その認識のずれを引き起こしていると考えられる歴史教育の違いについても議論をしました。韓国人の友達に私が高校生の時使用していた日本史の教科書を見せると、日韓が関係する歴史問題に対する記述の違いにすごく驚いていました。私も韓国の歴史教育の話を聞き、同様に驚いたと同時に非常に良い学びだと感じました。初めは「言い合いになったらどうしよう」と不安を感じていましたが、初日に設定したルールのおかげで安心して意見を伝え合える環境が整っていたことがすごく心強かったです。
沢山考えて沢山伝え合ったこの日の夜ご飯はBBQでした。本音で話し合ったことで、まだ出会って二日目とは思えないくらいに打ち解けていたので心の底から楽しい時間を過ごすことができました。みんなと食べたお肉は本当に美味しかった!

(Photo by ICC)
本イベントに参加して、自分が無意識に抱いていた偏見に気が付きました。また、国籍が違うというだけで無意識に線引きしていた自分にも気が付きました。実際に本音で関わってみることで、メディアなどを通して形成されたイメージが必ずしも正しいものではないという、当たり前のようで難しいことにも気が付くことができたのです。
二泊三日という短い時間ですが、このイベントは大切なことを沢山教えてくれます。出発前は三日間上手くやれるだろうかと不安な気持ちでいっぱいでしたが、そんな心配は杞憂に終わりました。このキャンプでできた他国出身の仲間たちとは今も連絡を取っています。様々なルーツや価値観を持つ友達の顔を見るたびに、「あの時勇気を出して参加してよかった」と心から思うのです。