企画者レポート
コーヒーと始める異文化交流
ICC学生スタッフリーダー(SSL)わかば
はじめに
2023年7月6日にイベント「コーヒーと旅するヨーロッパ」を開催しました。
今回のイベントは学内カフェのROASTERY COFFEEを会場に、ヨーロッパのカフェ文化を研究されている飯田美樹氏と共にフランス、イタリア、オーストリアのカフェについて理解を深めるイベントを企画しました。
学生スタッフを務めて1年半になりますが、本イベントが私にとってはじめて自分の企画を実施できたものでした。多くの方々に支えていただきながら、無事に開催できたことをとても嬉しく思っています。
企画背景
元々カフェ巡りが趣味で、コーヒー関連のイベントにも訪れるほどコーヒーが好きだったこともあり、コーヒーやカフェに焦点を当てたイベントを実施したいという思いがありました。私自身、海外に在住していた際、カフェに助けられた経験があります。まだ新しい文化に馴染めなかったころ、コーヒーを飲みながら交流を重ね、徐々に現地の生活にも打ち解けられるようになりました。コーヒーは世界で親しまれている飲み物のひとつなんだ、と共通文化への嬉しさを感じると同時に、1 杯のコーヒーに凝縮されている世界各国の独自の文化や習慣について学んでみたいと考えるようになりました。
この実体験から、コーヒーブレイクを皮切りに、「コーヒー」という世界の文化を軸に異文化交流を促進するイベントを実施したいと強く思うようになりました。学年やバックグラウンドを超えて誰でも気軽に参加できるよう、豆の選び方や上手な入れ方といったコーヒーの専門的な知識の紹介ではなく、だれでもコーヒーについて楽しく交流できる雰囲気を目指しました。
また、イベントを通してまるで各地のカフェを訪れたような体験ができるような空間を目指し、今回のイベントではじめて学内カフェのROASTERY COFFEEで開催しました。25号館3階から大隈庭園が見渡せる開放的なカフェで2種類のコーヒーを楽しむという五感で異文化交流を実現することができました。
余談:ROASTERY COFFEEはイベント企画前よりよく利用しており、アットホームな雰囲気を自分だけのお気に入りのカフェとして利用していたかったですが、徐々に多くの人に魅力を知ってほしいという気持ちが強まりました。その結果、自分のイベント会場として利用できて大変嬉しかったです。早大生のみなさん、あんなにも美味しいコーヒーがあの値段で味わえるのはここだけです!ぜひ、在学中に一度は訪れてみてくださいね。
イベントの様子
講演は、早稲田大学卒業生の飯田美樹氏をお呼びしました。学生時代の交換留学先のパリをきっかけに社会変革の役割を担うカフェに興味を持たれ、帰国後、大学院で研究をすすめ、『カフェから時代は創られる』を出版されています。
講演では、飯田氏が実際に現地で撮影された写真を中心に各国のカフェについてご紹介いただきました。 日本ではブラックコーヒーが主流ですが、ヨーロッパではエスプレッソが基本であること。 ただし、フランスでは開放的なテラスでエスプレッソを味わい、イタリアではカウンターでサクッと飲み、 オーストリアではエスプレッソ以外にも色々なコーヒーを楽しむことができること。 店内BGMなどはなく、カフェ内の雑音が自然のBGMとなったり、テラス席では生演奏を聴くことができる醍醐味があること。
日本と文化が異なる事は承知の上でしたが、これまでのカフェに対する意識を覆すようなヨーロッパのしきたりに改めて驚きを隠せませんでした。普段カフェを利用する際は、友人とお喋りの場として利用したり、読書や大学の課題に集中していることが多く、心落ち着くような個人の空間がカフェの美徳だとばかり思っていました。一方、ヨーロッパのカフェは物理的にも精神的にもオープンスペースとしての役割を果たしている場合が多いとのこと。欧州の有名な画家がこぞってカフェでインスピレーションを受けた理由が少しわかったような気がしました。
講演を聞いて少しでもヨーロッパのカフェについてもっと知りたいと思った方は、『カフェから時代は創られる』を読んでみてください。きっと新たな視点からカフェの文化を楽しめるはずです。
コーヒーブレイクの様子
後半の参加者同士のディスカッションタイムでは、イベントの感想やコーヒー/カフェに対する思いをグループごとに自由に語っていただきました。
今回はエスプレッソを楽しみながら交流に参加してもらいました。文字通りコーヒーブレイクを実施したい思いを実現でき、感動しました。さすがコーヒーやカフェ好きがたくさん集まったイベント。みなさん思い思いに情熱的に語っていました。国際色豊かなグループでは自国のコーヒー文化を紹介していたり、趣味嗜好を語り合ったり、早稲田周辺のおすすめのカフェを紹介しているグループには思わず私も参加してしまいました。
イベントを終えて
約半年間、このイベント実施に向けて企画と準備を続けてきました。イベント自体はあっという間でしたが、理想的なイベントを実現することができ、苦労した時期も報われたと感じています。このイベントを通して学んだ経験はICCの次の企画にも活かしていきたいと思います。
今回のイベントを通して、生活に身近なコーヒーから異文化交流の楽しさを感じていただけていたら幸いです。もし、ヨーロッパを訪れた際には、飯田氏の講演や交流での会話を思い出しながら今までとは違うコーヒー文化に触れてみてください。
最後に、改めてご協力いただいた飯田美樹氏、ROASTERY COFFEEをはじめ、イベントにご参加くださった方々、準備や広報に協力いただいた全ICCスタッフに感謝申し上げます。
改めて、ご協力いただいたアクセプト・インターナショナル、シャプラニール=市民による海外協力の会、パルシック、かものはしプロジェクトに心から感謝申し上げます。また、私を全力でサポートしてくれたスタッフの皆さん、ご参加いただいた参加者の方、本当にありがとうございました。
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参加者レポート
カフェでおいしいコーヒーを片手に異文化交流
アジア太平洋研究科 バシューツカヤ エレーナ
気軽な異文化体験をモットーにイベントの企画運営に励んでいるICCの今回のイベントは、ヨーロッパのカフェ文化を研究されているゲストスピーカー飯田美樹氏の話と小人数グループでの交流会の二本仕立て。毎回のように企画運営のクオリティの高さに驚かされるのだが、今回のイベントでも短いながらも楽しい時間を過ごすことができた。
イベントの前半は淹れたての珈琲を片手に講演会を傍聴。飯田氏が撮影したフランス、イタリア、オーストリアの老舗珈琲店の素敵な写真を見ながらヨーロッパのカフェ文化に関する話を楽しんだ。どの写真も綺麗に撮影されており、写真から伝わる内装の豪華さや広々とした解放感、淹れたての珈琲の湯気にはぜひ訪れてみたいと思わせる魅力が存分に詰まっていた。
- 景色の良い大通りに面した大きなテラスの下で珈琲を片手にゆっくりと時間が過ぎるのを楽しむフランスのカフェ
- 椅子のないカウンターで味の濃いエスプレッソを味わうイタリアのカフェ
- 多様な種類のオリジナル珈琲を飲み比べる珈琲発祥の地オーストリアのカフェ
それぞれのカフェの魅力を堪能しつつ、日本のカフェと大きく違うことを発見し驚かされることが多かった。ICC企画者の佐藤さんが留学先のカフェでの異文化体験に衝撃を受けたことから今回のイベントのアイデアを得たという話を想起させるほどに、カフェが持つ言葉の意味が地域によって全く異なることにも気づかされた。長い歴史の中で地域の人の生活に合わせて発展した店ごとの個性に興味が湧いたのは言うまでもない。
飯田氏のカフェ紹介のあとは各テーブルで少人数グループでの交流タイム。
食堂の3階にあるロースタリーコーヒーの、さわやかな珈琲の香りに包まれた店内は活気に溢れる談論風発の場と化した。私のテーブルには珈琲が好きでこのイベントに足を運んだ人が多く、珈琲談義で盛り上がった。特に記憶に残っているのが、エスプレッソの美味しい飲み方の話。エスプレッソとは抽出方法のひとつで、沸騰したお湯を加圧状態でコーヒー豆に注ぎ抽出したもの。コーヒー豆の成分が凝縮されてうまみが高くなっており、通常のコーヒーの味や香りを楽しむことができるようだ。そのため、淹れたてを一息で飲むのが一番おいしい味わい方なんだとか。珈琲研究会に属するメンバーが力説する珈琲雑学を背景に、コーヒー文化の奥深さを感じたひとときとなった。
また、カフェという場所自体の独特さの話にも興味が湧いた。こだわりの内装をウリにしたり、オリジナリティあふれるメニューを提供していたりと色々な種類のカフェが存在する。友達との会話を楽しむ場所、勉強に集中するなど自分と向き合う場所、美味しい食事で食欲を満たす場所などその用途も多種多様。そのような多様性空間を象徴するカフェでの文化比較、淹れたてのコーヒーを片手に気軽に話せる座談会はICCの良さを詰め込んだ身近な異文化体験の場所としての機能を完璧に果たしたのではないかと感じる。