Intercultural Communication Center(ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

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ICC企画者レポート:『ICCトークセッションUnlimited Mirai』企画者×参加者スペシャル対談

早稲田大学ICC(異文化交流センター)
執筆者 田邉理恵(ICC学生スタッフリーダー)
インタビュー実施日:2019年11月7日

去る10月29日、当センターはクリプトン・フューチャー・メディア株式会社から代表取締役の伊藤博之氏をお招きして講演会『Unlimited Mirai』を開催しました。同氏は、バーチャル・シンガー・ソフトウェアとして世界中で人気を博す「初音ミク」の生みの親としても知られており、講演では「初音ミク」が誕生した背景やブレイクのきっかけとなった要因の考察、地元北海道への貢献や今後の展望等についてお話しいただきました。
そこで、講演会の振り返りを兼ねて『Unlimited Mirai』企画者であるICCの学生スタッフと当日の参加者による対談を実施しました。

企画者であり、ICCの学生スタッフを務める政治経済学部4年の田邉理恵(写真右方)の声掛けで、対談に快く応じて下さったのは政治経済学部1年の吉岡宏祐さん(写真左方)。講演会参加前から初音ミクの楽曲に興味があったと語ります。

 

対談序章

田邉「講演に参加したきっかけを教えて下さい」

吉岡さん「元々ボーカロイドの歌が好きだったということもありますが、早稲田にその会社の社長さんがいらっしゃるということだったので、実際にお話を聞いてみたいと思ったことがきっかけでした」

田邉「初音ミク含めボーカロイドが前から好きだったということですが、具体的にはいつから興味を持ち始めたのですか?」

吉岡さん「えっと、3年くらい前ですかね」

田邉「なるほど!割かし新規のファンなのですね!私の場合は中学校時代がボカロファン黎明期だったので・・・筋金入りの、8年くらい前からです(笑)」

吉岡さん「おー、そうなると『千本桜』(ボーカロイド楽曲名)とかが最盛期でした?」

田邉「そう、あとその少し前の『ローリンガール』(ボーカロイド楽曲名)とか」

初音ミクとの接点を振り返る

田邉「それでは、ボーカロイドを聞き始めたのは周りの友人にもファンが多かったからだったのですか?」

吉岡さん「いや、実は先に弟がはまって、そこから影響されました」

田邉「そうなんですね(笑)ボーカロイドに色々種類がある中で、今回の講演会の主役でもあった初音ミクは他のボーカロイドとどのように違うのでしょうか」

吉岡さん「一番大きいのは、初音ミクが最初に有名になり、一般の方の間でもキャラとして認知されるに至った先駆的な存在であることではないのでしょうかね・・・関連グッズも多く製作され、ボーカロイドの代名詞にもなっていると感じます。そういった部分でキャラクターとして突出しているのでは、と思います」

田邉「そうですね・・・私もしばしば、周囲の人たちに『初音ミクって名前は知ってるけど何なの?アニメ?』と説明を求められます。ファンではない一般の人にもその性質や内容はともあれ、存在自体は認知されているが故に生じる質問、というか疑問なのだと思いますが。そんなことを聞かれた経験はありませんか?」

吉岡さん「僕自身はあまり、そういった話を(ファン層以外の)一般の方とすることはないですね。そもそも、あまりボーカロイド好きを最初から名刺代わりに主張したり自分から話題を持ち出したりということはありません。大体そうなんじゃないですか?相手と話しながら少しずつ趣味を探って、『あっ、この人も同じ層かも』というアンテナが反応したらそこで初めてボーカロイドの話が始まる(笑)カラオケとかでも、お互い最初は隠していて相手がボーカロイドの楽曲を歌い始めたら『えーっ!仲間だ』ってなります」

田邉「私もカラオケに関してはそういった経験があります(笑)何故、お互い隠す・・・というか積極的にボーカロイドの話題を持ち出さない空気感が生まれているのだと思います?」

吉岡さん「やっぱり、2次元のキャラクターだからじゃないですか・・・?」

田邉「多かれ少なかれ、2次元へのバイアスによる障壁は存在するということでしょうか」

吉岡さん「初期にボーカロイド界を盛り上げたのがニコニコ動画や2ちゃんねるのユーザーだったから、どうしても『ボカロ=ニコ動の層』というイメージを定着させている人はいたと思います。そのイメージに合わない、或いは歩調を合わせたくない人達はボーカロイドファンを公言することに抵抗があったと考えます」

田邉「2次元に全く興味がない層の考え方の中には『ボーカロイドの曲を聴いている、つまりオタクかな?』という方程式はありますよね」

吉岡さん「ありますね。(講演の中では)伊藤さんはそういったイメージをなくしていきたい、というお話はされていましたけど。」

「初音ミクBEYOND2次元」に向けて

田邉「ではでは、今までお話してきたような初音ミク=オタク、2次元という枠を超えていくためにはどうすれば良いと思いますか。難しい質問なのですけれど。」

吉岡さん「うーん・・・・(笑)やっぱりそうなってくると2.5次元というかコスプレイヤーや、一般の方に受けが良い実在の人物とのコラボレーションを行って『2次元のキャラクターを3次元に持ってくる』というスタイルで認知度を高めることも有効だと思いますね。それこそつい最近、国民的女優・アイドルである橋本環奈さんが出演映画作品の中で初音ミクのコスプレをしていたじゃないですか。ああいった形で初音ミクというキャラクターが周知されると、今まで興味がなかった人達にも受け入れられ易いのかなと思います。」

田邉「確かに。『有名人の○○が初音ミクの恰好してる!・・・じゃあ私にとっても他人事じゃないかも。2次元好きじゃなくてももう少し知ってみても良いのかも!』という心理を生み出すにはもってこいな策ですよね」

吉岡さん「あとは、今実用化が進んでいるVR等で、逆に3次元の空間に生きる人間が2次元に接近するという現象も折角可能になってきているので、そこで初音ミクを活かして親近感を湧かせることが出来るかもしれませんね。2次元と3次元、両者が相互に接近する未来・・・みたいな」

田邉「面白いですね。確か今政府もSociety 5.0の構想を積極的に進め、サイバー空間と現実空間の実用的な融合に向けて事業を誘導していますし。」

クリプトン・フューチャー・メディアは日本列島の益!?

田邉「とても抽象的というか壮大な質問になってしまいますが、クリプトン・フューチャー・メディアが日本に与えたものや生み出した価値はズバリ何であると考えますか?」

吉岡さん「新たな楽器・・・という概念も超越して『表現の手法』を提供してくれたことじゃないでしょうか。ピアノが発明された、という訳ではありませんが、一つの楽器が作られるという個別的な意味の次元ではなく、新時代の表現方法が誕生した、ということに最も価値があると思います。」

田邉「そうですね、ボーカロイドが登場し、初音ミクを通して有名になる前は『プロは目指していないけれど趣味程度で音楽を作っている』という人が、なかなかそれらの作品を世に出せないという状況でした。創作物の発信に適した手法=バーチャル・シンガーというユビキタスな楽器や、社会的環境が整っているとは言い難い部分もありましたよね。まさに初音ミクが多くの人々の創作意欲を刺激したり、発信するハードルを下げたりした救世主なのかな、と思います(笑)今シンガーソングライターとしてブレイクしている米津玄師さんもそうして構築された環境の恩恵を少なからず受けた人間の一人なのではないでしょうか」

吉岡さん「音楽だけではなくて、映像だったりイラストだったりも全て初音ミクからつながっていって大きな連鎖を生み出したのかなと、感じています。今回の講演会ではその大本を作ったご本人というか、初音ミクの実親のような方に直接お会いできたので良かったですね」

講演会内容チラ見せ

田邉「では、そんな講演会の中で特に印象に残った部分や学びにつながった部分を共有していただけませんか」

吉岡さん「普段初音ミクの楽曲を視聴している一人間としては中々考えを発展させることのない開発過程の想いや戦略、今後『初音ミク』でどうしていきたいかというビジョンに触れることが出来た点で非常に新しい体験になりましたし、視野を拡大する機会にもなりました。意外だったのが、開発陣はかなり『引いている』な、と感じたことでした。自分が作ったソフトウェア=キャラクターをあくまで道具として提供するに留まり、そこから世界中のユーザーがその道具を使って何をするか、どのようなものを生み出していくかという部分には干渉しないというスタンスをとっていることに感心しました」

田邉「つまり、自分が自分で作った可愛い『初音ミク』をこうしたい!という動機で事業を進めているのではなく、それを皆に可能な限り自由自在に使ってもらうためにどのような土台を作っていけば良いかという部分にフォーカスしていることですよね。私は、良い意味で冷淡な態度だと思いました。ポリシーを固めすぎないことも時には必要な戦略だったりしますし」

吉岡さん「そうですね。だからこそ色々な姿の初音ミクを見ることが出来た、というのはあります。キャラクター提供者によるイメージへの介入や制限がないからこそ、各自想像力を阻害されずに自分色の初音ミクを発信することが出来て、世界中の人々に受け入れられたのだと思います」

田邉「大体ものづくりをする人ってこだわりが強いイメージがあるんですよ。もちろんそのこだわりがモノをより魅力的にしていくこともあるけれど、初音ミクの場合はその逆のロジックが功を奏したのかと。自分が開発したモノからこだわりを捨て去る、ということを簡単に出来ない人間も多いと思うので、単純に凄いと感じました」

新しい価値を生み出すために

吉岡さん「あと印象に残ったのは、伊藤さんの批判を恐れない姿勢でした。やっぱり新しいものを世に送り出す時って、どうしても批判を免れないものだと思うのです・・・例えば、ボーカロイドを歌舞伎やクラシックの世界に融合させるなんてあり得ない!といった様な。そういった批判をどう受け止めるのか、という質問が講演会(後半の質疑応答時間)でありましたが、批判を気にするよりも新しいものを作っていくモチベーションの方が大きいと回答する伊藤さんに感銘を受けました」

田邉「そうですね。そのスタンスは、ボーカロイドという事業に留まらず様々なビジネスやクリエーションに応用出来ると思います。今後多くのイノベーションや新しい価値観が隆起する社会の中で、物事の可能性を広げられそうです。何においても批判する人は必ず一定数いますし、批判を非難する側もいますからね(笑)」

吉岡さん「こういうのは批判されそうだからやめておこうかな・・・・と小さくなっていては何も出来ないし、何も生み出せないじゃないですか。それだったら、どんどん新しい可能性に挑戦してみよう!って、熱くなれる方が良いと思うのです。この講演会を通してそのような熱量を分けてもらったので、自分も今後見習っていこうと思いました」

田邉「同じくです!アートという分野を超えたより大きな次元の『創造の連鎖』に、一人ひとりが意欲的に加担出来る社会になっていくと良いですね。吉岡さん、本日は有難うございました」

Dates
  • 1029

    TUE
    2019

Place

14号館201教室

Tags
Posted

Mon, 11 Nov 2019

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