Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

憧れの姿を追い求めて

商学部
棚橋 研人
在職期間: 2012年6月~2016年3月

2012年5月。それは僕にとって大学1年生の春だった。早大生らしくそれなりにサークルも巡り、新歓にも行った。しかし、どこもなんだか違う。なんとも言いがたい迷いを抱えたまま、後味の悪さばかりが残って新歓期も終わりが近づいた。当時を思い返してみると色んな人にこんな事を言っていたように思う。「4年間終わって振り返ったときに何か誇れるものを残したい。」

そんな時に巡りあったのが学生スタッフ(SSL)としての仕事だった。募集説明会では輝かしいオーラを放つSSLのプレゼンに虜になり、ここであれば自分のスキルを伸ばせる、成長できると確信できた。異文化理解の促進の重要性には共感できたものの、それは二の次。今思ってみればとても自分本位な考え方で活動を始めてしまったのだ。

承認欲求が最大のモチベーション!?

SSLに期待される役割のひとつには異文化理解と交流を促進するための企画立案がある。これが言わばSSLにとって一番華やかな仕事で、アイデアのブレインストーミングから内部での検討、コンテンツ決め、外部との調整、当日の実施まで全てのパートを担当できる。

その過程で最初にぶち当たる関門がアイデアの検討会だ。1年生だからといって容赦なかった。当時僕が提案したのはオリジナル和菓子作りのイベントや米軍基地の訪問であった。「なんで棚橋くんはそのイベントがやりたいの?」「なぜICCでそれをやる必要があるんだっけ?」厳しい指摘が入る。とにかく、なぜ?なぜ?が続いた。そして、しまいには「本当に興味あるの?」とまで。たじたじになって答えられず、「何となく…」としか言えなかった。当然、それらの企画は通らず。

イベントのアイデア自体が悪かったのではない。問題は、すぐさま何かを達成したいという実現可能性にばかり重点を置いてしまったことで、さほど興味ない企画の提案をして無理やり自分の想いを寄せようとしていたことだった。そして何より異文化理解や交流の促進ありきで考えるという本質を見失っていた。それが見事に見透かされてしまったのだ。

自身の企画を通すというところで振るわなかったものの、ICCの仕事はそれ以外にも沢山ある。外部の組織やゲスト宛てに送るビジネスメールではいち早く職員の方にメールを事前にチェックして頂くという作業から卒業。半年後には新しいSSLを迎え入れ、早くもメンターとしての仕事も任せてもらえた。外部の来訪者向けに行うICC紹介のための重要なプレゼンテーションにも任命。「すごいね!棚橋くん」と褒められ、認められたいがために僕は頑張るようになっていた。そして認められてこそ自分の価値を実感できていたように思う。

しかし、いくら色々な仕事を任せてもらえるようになり承認欲求が満たされたとしても、異文化理解や交流に対する想い無くして、あの1年生の春に説明会で見たSSLのカッコ良さに自分は近づけていないことに気づいた。

何のために僕はICCで働くのか?

最初の学期で自分が考えた企画案が実現されないまま、悔しさと悶々とした気持ちで迎えた次の学期。本当にICCで成し遂げたいことが見つかったのはこの頃だった。僕は商学部に在籍していたこともあり、授業で得た断片的な知識を深掘りする方法としてのイベント企画を考えた。授業で扱った内容には、日本の外食産業の中国進出で苦戦を強いられる企業が多いなか、CoCo壱番屋がストラテジーを変えて成功しているという情報があった。「なぜだろう…?」自分の探究心がくすぐられ、疑問に対する答えを探したいと思う気持ちが芽生えた。しかし答えを出すにも僕はその道のプロではない。僕ができることは、その疑問の種を発展させてプロに繋ぐことで価値を創造することだ。そしてそれを独り占めするのではなく、多くの人に知ってもらえるように仕掛ける。そんなところに僕は自分のパッションを込められ、異文化理解を進めていく原動力があることが分かった。結果的にこれは2013年の春に「日本のカレーライスが中国で大ブレイク!! ~CoCo壱番屋が中国進出に成功した理由~」というトーク・セッションとして実施することができた。

さらに、その後も自分独自の切り口で疑問の種を拾い、多くの人に知ってもらい、考えてもらうチャンスを作れるイベントの企画を目指した。僕の出身地である岐阜県ではごく普通に街中で見かける日系ブラジル人だが、関わりを持つことは少ない。東京に住んでいるとその存在すらほとんど意識することがない。彼らの多くが何に悩み、どのような生活を送っているのか現状を知ってもらいたい。その想いから生まれたのが映画鑑賞会と監督トーク・セッション『孤独なツバメたち』。

また、ICCで働きながらも日々感じる、国籍の多様性がもたらすアイデアの幅や数々の新しい刺激。ダイバーシティ&インクルージョンによって一人ひとりが前向きな力を発揮でき、組織としても大きな力となる。そのようなことがビジネスの現場でどのように考えられていて、施策として進められているか。そして企業にどのようなベネフィットをもたらしているか。ここでも、やはりこのアイデアを発展させて学びに繋げるために、僕ができることはその道のプロである多国籍企業と連携することでイベントを作り上げることだった。

改めて感じるICCの良さ

仕事は趣味じゃない。現実として、必ずしも自分が好きなことをいつもできるとは限らない。しかし、そんな仕事という枠組みの中でもICCでは異文化理解や交流の促進という目標の中でいかに自分の想いを込められるかが重要であり、SSL一人ひとりの経験と個性が大切にされている。

僕が1年生の春に憧れた募集説明会で見たSSLの輝かしい姿。今になって振り返ると、それは単にプレゼンが上手いからではなく、一人ひとりが何かしらの想いを持ち続けて仕事をしているひたむきな姿があったからだ。では、結局僕は4年間終わって振り返ったときに何か誇れるものを残せたのだろうか?認められたい、成長したいという初期のモチベーションから、自分が抱く世の中の「なぜだろう?」という疑問を解決するためにイベントを企画して影響力を与えられることにやりがいを感じられるようになった。そこで抱いた想いを一人でも多くの早大生にイベントを通じて感じてもらい、考えてもらうきっかけになるものを作り上げられたのであれば、それは誇りに思えることだ。

一つひとつのICCのイベントにはそれを企画するSSL一人ひとりの想いが詰まっている。何年経ってもICCではそれは変わらないだろう。もしこれを読んでいるみなさんが今後ICCのイベントに足を運んでいただく機会があれば、そんな想いを少しでも感じとってもらえればと思う。

そして最後に、途中留学で一年間離れてもなお、戻れる環境を用意してくださり、二年半に渡り、一人のSSL以上に一人の個人として僕のことを支えてくださったICCの職員の方々やSSLの仲間に感謝したい。

おかげさまで幸せな大学生活を過ごすことができました。ありがとうございました。

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