政治経済学部 国際政治経済学科
大多和 祐介
在職期間: 2013年10月~2016年3月
はじめに
僕はどうしてもICCにいることが誇れなかった。恥ずかしさまでは覚えないものの、ICCの学生スタッフであることを打ち明けるには多少の抵抗があった。おそらくそれは、ICCは本当に意味があるのか、という疑念を払拭できなかったからである。
理念の上では、ICCは異文化交流/異文化理解の促進を目的とした早稲田大学のセンターとして名を掲げている。若者の内向き志向が問題視され、積極的に異文化の世界へ飛び込んでいける能力や姿勢が世間で大切にされていることはわかっていたし、僕自身もそのために何か貢献したいと思っていた。SSLになった当初は本当にそうだと信じていた。
しかし、SSLとしてこういった言葉と向き合い考えていくなかで、僕は何を目指しているのかが分からなくなった。なぜなら、とりあえず社会によって重要なものとして掲げられる【異文化交流/異文化理解】というレッテルを知ってはいたものの、それが結局何を意味するのかを考えたことがなかったからである。
このように考え始めると止まらなかった。ICCは、なぜ重要なのかもよくわからない【異文化交流/異文化理解】というレッテルにとりあえず関係していそうなイベントを運営しているに過ぎない、としか思えなくなった。要するに、「それっぽいことをそれっぽくやってるだけじゃん」と思ったのである。
みなさんは今、ICCに対してどのような印象を抱いているだろうか。良い印象を持っているだろうか。悪い印象を持っているだろうか。そもそも聞いたことすらなかった、という方もかなり多くいることだろう。ICCを卒業するにあたって、現在の僕は、少しICCに誇りを持つことができる気がする。このSSL体験記では、このICCの捉え方の変化を主軸に話を進めようと思う。これを読んで、みなさんのICCへのイメージが良くも悪くも変わるきっかけとなれば幸いである。
ICCってかっこいい!!
ICCに入ってみると、尊敬できる先輩ばかりであった。英語が話せるだけでなく、コミュニケーション能力も高い、しかも誰もが知る著名人や有名な企業の方をお招きした企画を実現させるなど、華々しい限りであった。さらには、こうした華々しさを演出するための、地味で地道なオフィス業務もすばやくこなしていくのである。本当に僕もこんな風になれるのか、大きな不安を抱きながらも、そんな背中を見ながらとにかく頑張ってみたのである。そんな憧れと期待の入り混じった空気を、当初の僕は感じていたのだ。
ICCってかっこいい??
確かに先輩たちはかっこいい。プレゼンや司会もかっこよくこなすし、日ごろの業務にも抜かりはない。社会人として企業で実際に勤め始めても遜色ない力を持っていたのだろう。しかし、ICCに入り、学生スタッフとして働いていくなかで、徐々に疑問が湧いてきたのだ。
それは、【本来のICCの目的は果たされているのだろうか】という疑問である。ICCは異文化交流/異文化理解を推進する大学のセンターである。【その目的に対して意味のあるイベントだったのか】【著名人を呼んでインパクトのあるイベントをしたかっただけではないのか】【大きなイベントを実施したという満足感のほうが重要になってしまっているのではないか】というさまざまな疑問と、違和感を覚え始めた。
どんなに意味のあることをしても知名度がないことには始まらない。だからまずは多くの人に目に留まるイベントを開催し、多くの人にICCをまず知ってもらうことも1つの戦略である。そうした意義があることもわかっていた。しかし、それでも本来の意味をあまりに見失っている(ように見える)点には、どうしても納得がいかなかった。
ICCってなぜかっこいい??
僕は、ICCで働く中でどのようにかっこよくなればいいかわからなくなった。著名人を呼んだデカいイベントで数百人もの参加者を集めたからかっこいい、となりたかったわけではない。自分の興味をイベントという形で実現したかっこいい自分に憧れたわけでもない。
それでは、どうかっこよくなりたいのか。長い間、長すぎる間考えた結果、辿り着いた先は、【異文化交流/異文化理解の推進の一端を担っているからかっこいい】である。考えてみれば、当たり前である。ICCはこの目的のために存在する。だから、目的を意識して企画し、それにわずかであっても意味のあるイベントとなったのであれば、かっこいいと呼べるのではないだろうか。
しかし、このために考えなければならない問題が1つあった。それは、【異文化交流/異文化理解とは何か】、という問題である。これらを目的とする以上、曖昧なままでは意味がなくなってしまう。それこそ、「それっぽいことをそれっぽくやる」にすぎなくなってしまう。そこで、この問題に着手した。
ICCってどうかっこいい??
ICCのかっこよさを考えるべく、基本に立ち返ることにした。それは、【異文化交流/異文化理解とは何か】という問いに向き合うことである。この問いについて学生スタッフで議論をする企画を行った。要するに、イベントの企画をするための企画をICC内部に向けて行ったのである。かっこよさの源を考え直すきっかけになったと信じている。
達成できなかったかっこいい自分
さて、ここまでの段階でようやく、【どうしたらかっこよくなれるのか】という当初の疑問の答えに辿り着いたのだ。これから、この答えをもとにして、実際にイベントを企画していく段である。しかし、ここで僕は卒業を迎えることとなってしまった。間違いなく遅すぎた。留学や就職活動を間に挟んでいたとはいえ、約2年もかけてたったこれかと言われれば、まったくその通りである。【かっこよくない自分】で終わることには、不甲斐なさを感じている。
しかし、これからの誇れるかっこいいICCを形作るためのささやかなきっかけは創ることができたと思っている。これがせめてもの救いである。なので、みなさんにもこれからのICCを見守ってほしいと思う。そして、もし共感していただけたなら、ICCのイベントに参加したり、学生スタッフに応募したりして、一緒にこれからのかっこいいICCを創り上げていってほしい。