Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

企画脳(二瓶篤)

二瓶 篤

早稲田大学政治経済学部5年

ICC学生スタッフリーダー在職期間

2010年6月~2012年2月

 

企画脳

約1年半の間、ICCで学生スタッフリーダー(SSL)として活動した。在職中は、日常生活のあらゆる事象をイベント企画やポスターデザイン、ブログテーマに結びつけて考えていた。私がICCの業務を遂行するにあたって、最も必要だと考える能力がこの「企画脳」だ。ICCには、それらの案を形にする環境が整っている。そして形となった案は、完結までの過程で様々な課題をSSLに与えてくれる。本レポートでは、2011年度後期ICC中期リサーチ・プロジェクト「グローバルに活躍する人材とは何か」の担当SSLとしての経験を中心に書き記すこととする。

 

  • アイデアが形になる空間

2011年5月、就職活動を終えてICCに復帰した私に、中長期プロジェクト運営の話が持ちかけられた。ICCには毎学期、通常の単発イベントとは異なり、半期にわたって活動し、よりテーマ性の強い「看板プロジェクト」と呼ばれる企画が存在する。残りの学生生活でこの企画を運営することが、私に課されたミッションであった。

しかし、ここで勘違いしないでほしいのだが、ICCでは自分が動かずに得られる仕事はまず存在しない、と言っていい。私の場合、フルタイム・スタッフの方々に文章作成が得意と認識されていた。そこから、あるテーマに基づいたレポートを冊子形式にまとめてみては、と打診されたわけだ。そして私は、就職活動中に自らが回答に窮した質問である「なぜ海外で働きたいのですか?」について、下級生に向けてアドバイスを贈る冊子を作成する企画案を提案した。

案が形になるまで、どんな企画でもここが最も厳しいパートであろう。どのような形式の冊子なのか、どのような内容の記事を作成するのか、そもそも海外で働きたいと考える早大生は多いのか、昨今物議を醸す若者の内向き志向は取り扱うのか、冊子はどこで配布するのか、早大生に対してアンケートを実施する必要があるのではないか、実際に海外で働くことが可能な会社に就職した先輩に話を聞いてはどうか、WEBを活用できないか、ゼミ形式で議論してはどうか、早稲田の人脈を利用できないか、誰が読むのか・・・。週に一度フルタイム・スタッフの方々と打ち合わせ、企画案の再提出、という日々が続いた。

そして形となった最終案が、(1)校友(早稲田大学OB・OG)へのインタビューを通して下級生に対して海外で活躍することの意味を提言する、(2)学内アンケートを実施することで早大生の海外志向性を調査する、(3)半期間ともに活動するメンバーを4~5名募集し、上記(1)(2)をICCホームページ上の特設サイトに掲載する、というものであった。

 

  • 学内の莫大なリソース

メンバーを募集する際に、完成形を事前に提示することで、応募者に対して企画の最終地点を明確に伝えることができる。本企画の場合も、まずは私自身がグローバルに活躍している方にインタビューを実施してみることになった。本学副総長、留学センター所長・・・学内を見渡すだけでも、無数の候補者の名前を挙げることができた。国際機関に勤務した経験を持ち、国際会議に出席し、海外で研究経験を持つ、早稲田大学は輝かしい経歴を持つ教授陣の宝庫なのである。

さらに、学内でグローバルに活躍しているのは教員だけではないことを知る。メンバー募集後に、インタビュー本番に向けて経験を積むために、本学職員の方々に模擬インタビューできることになった。民間企業で海外赴任を経験した、青年海外協力隊に参加した、本学職員として海外駐在を経験した、学内で常に外国人と接し日常的に英語を使用している、早稲田大学は職員の方々も常にグローバルに活躍しているのだ。

そして、企画はさらなる飛躍を遂げる。学内の莫大なリソースから、さらにグローバル人材を紹介してもらい、OB・OGを問わず、インタビューを実施することが可能になった。企画書を送付しアポイントを取り付ける。その過程における高水準の成功率を支えていたのも、早稲田大学というバックボーンであったことは否定できない。

以上のように、ICCでは形となった企画案を軌道に乗せ、最終形に着地するまで多大なるサポートを受けることが可能である。それが前述した、日常生活の何事をも企画案に結び付ける意欲が湧く理由でもある。

 

  • 4年間の1/8を費やす中期プロジェクト

4年制大学に通う学生は通常、卒業までに8つの学期だけしか経験できない。本企画のような中期プロジェクトに応募する学生は、その貴重な1/8をICCの企画にコミットすることを決意してくれた、ということである。したがって、彼らが時間を費やした結果、高い満足度を得る企画であることが当然望ましい。しかし、志さえあれば不可能なことは何もない「大学生」という社会的に類稀な存在である彼らを半期間惹きつけることは、想像をはるかに超えて難しいことである。そこで重要になるのが、企画の最終形と飛躍である。

本企画の場合は、最終形として学内の下級生に対して将来海外で働くことについてのアドバイスを贈ることを目的としていた。それに加えて、校友のみでなくグローバルで活躍する全ての人にインタビューを実施することが事実上可能になったことで、メンバーは早稲田大学の名の下に著名な人物とでも個別に対話が出来る可能性を得る、という飛躍を見せた。

結果的に、自ら国際的なセミナーに出席し、人脈を広げ、次々にインタビューを成功させたメンバーが現れたことは、本企画の特筆すべき成功点である。我々が提示したシナリオから魅力を感じ取り、学生生活の1/8を能動的に活動してくれたことは喜ばしい。全員がそうであったかと問われれば疑問を感じざるを得ないが、それもまた仕方のないことである。何でもできる上に、やらなければならないこと(卒業や就職など)も次々と発生する学生生活の中で、常にICC企画にフルコミットして欲しいというのは、もともと無理な相談なのかもしれない。私がここで述べたいのは、ICC中期プロジェクトを運営し、ともに活動してくれるメンバーを募るということは、彼らの貴重な1/8を良くも悪くも費やすことになるので、相応の企画を練る責任がSSLにあるのではないか、ということである。

 

  • 「企画脳」

「企画脳」とは、作詞家や放送作家として知られ、AKB48の生みの親でもある秋元康氏の著書のタイトルである。数年前に読んだ本であるため正直うろ覚えであるが、日常を変わった視点から注意深く眺めることが企画立案と成功につながる、と記されていた記憶がある。例として、秋元氏がニューヨークを訪れた際の逸話が掲載されていた。

秋元氏がニューヨークを散策中に遭遇した工事現場、その壁には丸い穴が開けられていたという。日本でもよく目にする工事現場だが、大抵の場合は巨大な壁に覆われていて中で行われていることを窺い知ることは不可能であろう。普通の人であれば通り過ぎてしまう些細な事柄であるが、秋元氏はこの点に注目した。彼は工事現場の人間に、なぜ壁に穴が開いているかを尋ねたのである。すると答えは、何事にも興味津々なニューヨーカーは壁に覆われていて中に何があるかわからない、そんな事象に遭遇すると高い確率で内部の人間に何が起こっているかを尋ねてくる、引っ切り無しに説明させられる現場では作業が捗らない、そのためにあらかじめ穴を開けてある、というものだった。とても興味深い。秋元氏によると、このように何事にも興味を持つことが企画につながるそうだ。実際に彼は、この経験を自身のエッセイ本に掲載することで、「仕事」に昇華させている。

私がSSL在職中に自ら企画した単発イベントは正直そう多くはない。しかし、私は本屋に行けば雑誌の装丁から次のイベントのポスター案を考え、就職活動中は企業のCSR活動をイベント化することを考えていた。そして実際にどちらも実現した。こうした視点をICCで獲得できたことは、私の今後の人生で大いに役立つことであろう。SSLの中には、自身の出生や幼少期の環境、生後20年程度の経験から、強烈な想いを抱きイベント化する者も多い。私の場合は、自慢ではないが普通に日本で産まれ、普通に日本で育った。だからこそ、上述のような何事も企画案につなげる姿勢が重要だと思うし、今後SSLに応募したいと考える学生にもこうした姿勢を大切にしてほしいと考える。

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