Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

内なる文化の衝突と融合(森田紗緒里)

森田紗緒里

早稲田大学国際教養学部2年

ICC学生スタッフリーダー在職期間
2010年6月~2011年8月

 

内なる文化の衝突と融合

アメリカに住んでいたころ、自分が日本人であることを恥だと思っていたことを覚えている。3歳から家族と共にアメリカに引っ越した私は日本のことをほとんど知らず、自分自身が日本人である自覚が全くなかった。外見を見られただけで、日本語も日本文化に関しても問題ないと判断されることにいら立ちを覚えたことさえあった。私はその後、だんだん自分が「日本人」であることをなるべく隠すようになり、日本人としての自分からなるべく距離を置くようにしていた。当時は深く考えたことはなかったが、自分が「中途半端」になるのを恐れていたと今は思う。日本人でもなくアメリカ人でもない自分を無理やりどちらかのアイデンティティに当てはめようとしていたのだ。

 

日本に戻り初めて気が付いたのが、混ぜても良い、ということだった。日本で初めて聞いた「異文化交流」という言葉は、もちろん様々なバックグラウンドから来た人たちと一緒に交流するという意味を持っているが、私自身には少し違った意味を持っていた。日本での異文化交流が日本のためにもなるというのと同様、今まで衝突していた私の中の2つのアイデンティティも一つを選ばなくても良いと思えるようになった。そこから日本での異文化交流にだんだん興味を持ち始め、大学に入学した後、国際コミュニティセンター(ICC)で学生スタッフ(SSL)として応募することを決めた。

 

最近のICCでは早稲田での「異文化交流」から徐々に「多文化共生」とテーマに移行しているように見えた。私もこれらを説明しろと言われても上手くできる自信はないけれど、勝手にその概念に親近感を覚えていた。一方、自分の中で2つの文化を融合するのがこんなにも難しいのにどうやったらたくさんの文化を持つ人たちが上手く共生できるようになるのか、といつも思っていた。そしてもし多文化共生を達成できたとしても、それに何の意味があるのか。答えはまだ誰にもわからないだろうし、多分わかることはないだろう。しかし、大切なのはそれに意味がきっとある、ということを思うことであると思う。多文化共生には形もなく、お手本がある訳ではないと思う。けれどそのわかっていないものを追い続けることが何よりも大事なのかなと私は思っている。少なくとも、私自身は今もそうしている。

 

ICCはICCとして多文化共生を追っている。手段は主にイベントとしての形を取っていて、イベントの形態も様々である。世界中の国々の文化を紹介するカントリー・フェスタから、気楽に集まり他の学生とおしゃべりができるカフェイベントまでたくさんの種類がある。もちろんICCは異文化と触れる機会を学生に与える場所であるけれど、イベントに足を運んでくれる学生には「異文化交流しに行く!」というより、ただ単に新しい経験を求めて来てほしいと思う。なぜなら、異文化交流を求めてしまうと、せっかく「異文化」に触れる機会があっても、その「異文化」を自分とは全く別のものであると思ってしまい、感心して終わってしまうことが多い。でも、新しい経験をし、「文化」という概念をなくしてしまえば、その「異文化」も自分と照らし合わせやすく、より身近なものとしてとらえることができると思うからである。結局やることは同じであるとしても、考え方ひとつで変わることはたくさんある。

 

ハードとしてのイベント施設やラウンジに加え、ソフトとしてICCにはフルタイムスタッフと学生スタッフ(SSL)がいる。私はICCでSSLとして働くのが初めてのアルバイトの経験であり、かなり衝撃的であった。今までは友達が心配するぐらい自分のことすら整理できていなかった私が、どうやってICCでの仕事を上手くこなせるかということは今でもよく考えることである。外から見えるSSLの仕事は「イベント企画」というイメージだと思うが、実際はそれ以外にオフィスワークやポスター貼り、会場設営など様々な仕事をやっている。時間を有効に、ひとつひとつの行動をちゃんと考えながら動かなければいけない。そんな大量の仕事を教えてくれたのが他のICCスタッフであった。ICCで働いている人全員が尊敬できる人であり、そんな人たちと一年間を過ごせたことがとても貴重な体験であったことを日々感じている。

 

ICCで過ごした一年間で自分自身を見つめなおすことができた上に、自分がどうしたら他の人、またはICCの役に立てるかを考えた時間がとても多かった。この一年で一番大きく感じたことは、自分のために何かをやることと、他人のために何かをやることの違いであった。例えば、ICCで働き、イベントの手伝いなどをするのは自分にとってとても良い経験になる。今までしたことがない経験を積み重ねていくうちに見えてくる自分が情けなくあり、でもその分成長できたと感じることができた。私がICCで学んだもう一つのことは、できるだけ自信を持って、何事もとりあえず試してみる、ということである。私はそれを今になって気づき、この一年間をもっと積極的に過ごせばよかったと感じている。

 

これから一年間のイタリア留学に旅立つが、留学先でもICCで積んだ経験を活かしてさらに成長し、還元できる何かを携えて戻ってこられたらと思う。

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