今回、本学広報課が、ICC学生スタッフリーダーの一人である法学部3年生の冨山真祐子にインタビューをしました。現在彼女は、日本で難民認定された6人のシリア出身者のお一人、ヤセル・ジャマール・アル・ディーン氏を招いた講演会(5月19日開催)を企画しています。
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なぜICCの学生スタッフリーダーになったのですか?
早稲田大学には5,400人以上という大勢の留学生がいる中で、ICCの学生スタッフリーダーは留学生と日本人学生との交流を促進することができる点に魅力を感じました。
また、私は大勢の人に何かを訴えること、また多くの人にその思いを共感してもらうことに魅力を感じるため、そのようなイベントを企画し、実行することができるICCの学生スタッフリーダーになりたいと思い、応募しました。私が今回開催するイベントのテーマであるシリア紛争、難民問題は国際問題でもあり、一人でも多くの人に知っていただければと思います。
今回の講演はどのような経緯で企画されたのですか?
難民問題についてメディア等で知っていても、遠い国の出来事としか捉えていない日本人が多いのではないかと考えたからです。私も実際、難民や紛争地域の現況をテレビ番組で見て知るまでは、表面的な結果を見聞きする程度でしかありませんでした。確かに日本から遠く離れた地域の出来事は、日常生活と深い関わりがあるとは言えず、真摯に考えることはとても難しいことです。しかし、それでは難民問題や紛争について無頓着であるといっても過言ではないと思います。
難民問題に関心を持った理由を教えてください。
偶然テレビで「オーストラリア 難民“絶望”収容所」というドキュメンタリー番組を見て難民問題に関心を持ちました。この番組は、オーストラリア政府が難民申請を待つまでの間という名目で自国から逃れてきた人々をフェンスで囲まれた“収容所”に収監し、劣悪な環境で生活を強いている、という難民政策の暗部を赤裸々に暴いた内容でした。今までニュースなどで紛争や難民問題について見聞きすることはあっても、彼らの生活の現状について無知だった私にとっては衝撃的な内容でした。
今回講演されるジャマール氏はどのようにして知ったのですか?
あるシリア紛争の映画上映会・講演会に参加した時、ジャマールさんがゲストスピーカーとして登壇されていました。そこで彼はシリアでの生活や、日本で難民認定が下りるまでの生活など、当事者ならではの話を語っておられ私はその内容に引き込まれました。早稲田でもぜひ講演してほしいと思い、その場で連絡先をいただきました。快く引き受けてくださり、ジャマールさんには大変感謝しております。
この講演を企画する上で大変なことはありましたか?
講演会を実施するにあたりこだわった点として、ジャマールさんは英語で講演してくださるので、日本語で通訳する必要がありました。その際、彼の言葉や思いを参加者に正確に伝えることが何よりも重要と感じましたので、学生による通訳ではなく、数多くの国際シンポジウムで通訳をされたプロの通訳者の方にお願いすることになりました。
この講演を通して、どのようなことを期待していますか?
実際にシリアで暮らし日本に逃れてきた方が持つ言葉の力によって、参加者には、難民となり自国を逃れている方や、戦地で爆撃におびえながら暮らしている方の悲痛な叫びに思いを馳せてほしいと思っています。私が去年の12月に参加した講演会で、当時アレッポで暮らしていた男性はテレビ電話で次のように話してくださいました。「今欲しいのは“もの”ではない。どうか、シリアについて、私のことについて、忘れないでほしい」 ― シリア紛争が起きてから丸6年。シリア紛争に慣れてしまってはいけません。
最近、シリアの“空爆“のニュースが報道されています。しかし“空爆”という言葉はあくまで客観的に見た場合であって、シリアで暮らす人にとっては“空襲”なのです。それらの報道裏にある、彼らの悲痛な叫びをより多くの人に伝えるため、今回の講演会を開く意義があると思います。参加者の皆様にシリア問題・難民問題について真剣に考えていただきたいと切に願っています。